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求人広告の基本(第四回:勤務時間)

更新日:11月24日

勤務時間は休憩時間や残業時間なども記載しよう
勤務時間は休憩時間や残業時間なども記載しよう

合わせてご覧ください。


残業時間は事務所によって大きな差が


求人広告においては、業務委託の募集などを除いては、必ず勤務時間を書かなければいけません。

今まで訪問したことのある税理士事務所などで、これは大きな問題になったことはほとんどありません。

8時間労働を上限として、しっかり休憩時間などが設定されているところがほとんどだと思います。


ただ、求人広告としてみた場合、この書き方だと損をしているな、と思う事務所はいくつもあります。

それが残業時間について、です。


実はこの残業時間については、事務所によって大きな差になっている部分です。

2010年代前半までは、税理士事務所は不夜城と呼ばれ、残業なんてあって当たり前、の業界でした。

ほとんどのところで、残業時間は30時間を超え、平常月で固定残業として設定可能な45時間ギリギリというところもありましたね。

ある高齢の税理士が所長を務める事務所で、以下のような話を聞いたことがあります。


「スタッフを8時間働かせるのは当たり前。そこからどれだけ嫌がらずに残業をさせることができるか、が税理士事務所の所長の腕だ」。


まだ規制もゆるく、ブラック労働などが少しずつ指摘され始めたころの話です。

この事務所では当然、残業代などは存在せず、給与に全部込み込み。

そのため税理士事務所は残業をさせればさせた分、利益となったのです。


もちろん現在ではこの考え方は通用しません。

それどころかこんなことを大っぴらに話したら、非難が殺到するでしょう。

ただ、そこからわずか10年ちょっとの間で、一気に人々の意識が変わりました。


残業するより効率的に働いて結果を出すという考え方が一般化し、ワークライフバランスを重視した働き方を選択する人が増えました。

しかし事務所を運営している側からみると、なかなかそれに対応しきれていない事務所も多いのが現状です。

そのため残業はゼロが当たり前という事務所から、なかなか残業を減らせず脱却できない事務所まで、差があります。


そして個人の税理士事務所や、小規模の税理士事務所は、複雑な税務処理を行うことも少ないため、残業がほとんど発生ていない事務所も多いのです。

それをしっかりアピールできていません。

単に、9:00~18:00(休憩1時間、実働8時間)、などと記載しているだけの事務所が多いですね。


では、ある程度残業がある事務所では、残業時間を書く必要はないのか、というとそうではありません。

入社してから残業が多いと、求職者とのミスマッチが起きてしまいます。

税務会計業界では、税理士試験の勉強のために転職する、という層が一定数います。

入社してから残業があると、こんなはずじゃなかった、と退職してしまうこともあるのです。


だからこそ残業時間が20~30時間程度の事務所であれば、残業時間についてしっかり記載しておいた方がいいでしょうね。

また、繁忙期などで残業が増える際は、どの時期にどれくらいになるのか、なども合わせて記載しておくと親切です。


ただ、残業時間が40時間を超えるような事務所については…。

こちらは世間一般からしても、また業界的にみても、現在では残業が過多になっている状態なので、残業時間の削減に取り組んでもらいたいと思います。

(残業時間削減についてのサポートも行っています、詳しくはこちらよりお問い合わせください)



一番難しいのは把握できていないこと


勤務時間について、問題になることはほとんどない、と先ほど述べましたが、小規模税理士事務所で例外的に問題となるのは「残業を把握できていない」ことです。

こちらが「残業はどれくらいありますか?」と聞くと「スタッフに任せてしまっているのでわからない」という回答が返ってくることがあるのです。


そうした事務所の多くが担当制をとっており、仕事の進め方などをスタッフにすべて任せてしまっている、というパターンです。

これは自由度の高い働き方として、求職者にも一定の人気がありますが、それと放任・放置は異なります。

これはリスクマネジメント上、非常に怖い状態です。

事務所としてガバメントが一切とれていません。

こうした仕事をしていると、スタッフがお客様先の経理担当者としめし合わせて不正行為を働いた、という話を聞くことがあります。

そうした事務所で詳しく話を聞くと、勤務実態などを事務所が把握できていない、ということも多いですね。


一度不法行為が発覚してしまうと、事務所のダメージは甚大です。

以前、自分が関わった事務所では、まさにこれが起きました。

20名弱だった事務所で、スタッフが相続の業務を行っている中、お客様の資金を横領してしまったのです。

これはスタッフ単独の犯行とみなされ、事務所自体は大きなペナルティはありませんでした。

しかしその事務所と契約していたお客様企業はほとんどが解約。

事務所は解散し、所長の税理士が一人で再出発することになってしまいました。


もう一つのリスクが、残業代トラブルに発展する危険性です。

これも以前、ちょっと関わっていた事務所で過去に合ったケースですが、その事務所は個人事務所でスタッフ3名程度の小規模なところでした。

業務量自体も多くなく、スタッフの負担も少ない事務所だったので、残業はほとんど発生しない状態だったのです。

だからこそ固定残業代などの制度はなく、残業をする・しないはスタッフそれぞれに任され、事務所のカギを預けて労務管理などは行っていませんでした。


それがあるとき、所長とスタッフの間で口論が発生してしまいます。

それ自体は些細な事だったのですが、スタッフにとってそれが遺恨となって残ってしまいました。

それから一年ほどたった後、急にそのスタッフは退職しました。

所長は退職を惜しんだものの、快く送り出したのですが、ある日ハローワークから一本の連絡が入ります。


「残業代が支払われていないとの訴えがありました」


実は退職する前、半年以上にわたって深夜まで残業をしていたのです。

残業というか、本来なら定時で帰れる状態なのを、事務所に残ってダラダラ作業を続けていました。

それを記録し、証拠としてPCのログや、深夜に事務所にいる写真などを証拠としてハローワークに提出したのです。

当然、事務所も反論しますが、実際に事務所に残ってPCで作業をしていることが認められ、事務所は残業代に加え利子なども加算した金額を払わなければならなかったのです。


後日、これもまとめて掲載したいと思いますが、求人広告を出すということは、事務所の状態を見直す、ということでもあります。

求人広告を出す際は、勤務時間について一度見直してみるのもいい機会かもしれません。


求人広告での勤務時間についての表記の仕方や、所内での体制見直しなどについては、随時相談を承っております。

こちらよりお気軽にアクセスしてください。



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