給与はいくらなら応募が集まるのか
- 斉藤永幸
- 10月27日
- 読了時間: 6分
更新日:11月24日

給与にはいつも悩まされる
採用のサポートをしている際、最も多い質問が、給与をいくらに設定したらいいの?というものです。
WEBなどで募集をする際、給与はもっともわかりやすい指標です。
他の募集と比べて、高い・安い、がはっきりと出てしまうからです。
だからこそ給与の設定は、いくらにするか悩んでしまうのです。
高すぎると人件費率が高くなり、将来的に経営を圧迫するかもしれない。
でも安すぎると応募が集まらないんじゃないか。
そのせめぎ合い、バランスの中で給与が決まっていきます。
とは言っても、ある程度の『相場観』というものは存在します。
これくらいの経験・資格を持っている人だったら、これくらいの年収を提示しないと応募が来ないよね、というようなものです。
ただ、この相場を知るのは簡単です。
他でいくらくらいの給与で募集をしているのかを調べるだけです。
「なんだそりゃ」と思われるかもしれません。
しかし給与とは地域や時期によっても変動します。
ある金額の給与なら応募が集まるとしても、半年後にはずれている、それが相場なのです。
そして相場は市場で決まります。
つまり他との対比なのです。
そのため同じくらいのスキルを求めていて、同じくらいの労働条件だった場合、同じくらいの給与がある意味『相場の給与』ということになります。
どれくらい競争力を持たせるか
あとはどれくらい競争力を持たせるのか、ということです。
他のブログでも書きましたが、WEBでの求人は他社との比較が簡単です。
当然のように求職者も、他社の求人を見ており、同じ条件なら給与の高い事務所を優先させます。
だからこそ相場にプラスして、どこまで上積みできるのかが問題となるのです。
この判断は、事務所の規模や条件によっても異なってきます。
他の魅力でカバーできるようであれば、そこまで給与に対して上積みは必要ないでしょう。
例えば研修が充実しておりスキルを身につけられたり、ワークライフバランス重視で7時間勤務だったり、税理士試験の勉強応援のための支援が充実していたり、他では得られないキャリアを積むチャンスが多かったり、といった場合です。
そうした社内整備を進めている事務所であれば、他社より給与を高く設定しなくても、応募を集めることはできます。
問題はそうした魅力のない事務所です。
そうした事務所では、当然のように給与によるある種のたたき合いが発生してしまい、近年ではWEBでの募集で、相場がかなり上がってしまっています。
実際、他の手法での採用に比べると、WEBでの求人は給与が5000円から1万円ほど高いですね。
競争の激しい首都圏などでは、ここ2~3年で2万円以上相場があがってしまっています。
そもそも税務会計業界の給与相場は、他業界に比べると低めでした。
経理などが全業種の平均給与に比べ1~2万円ほど安く、仕事や資格などが共通する部分もあった業界なので、それに引っ張られる形で安かったのではないかと思われます。
実際、自分がこの業界での採用に携わるようになった時には、最低時給を下回るような給与で掲載してくれ、と言われたことが何度もありました。
給与が安くても働きたい、という人がそれだけ多かったことの現れでもあるでしょう。
しかし近年ではこれが逆転しており、人手不足だから業務を拡大できない、担当するスタッフが足りないのでお客様に顧問契約を待ってもらっている、といったところも増えてきました。
そうしたことも反映され、今では税務会計業界の給与レンジは全業界・業種の平均給与より若干高くなっています。
高い給与を出せばいい、というものでもない
給与は高く設定すると競争力は高まります。
それは確かですが、やはり適正かどうか、をしっかりと考えなければいけません。
まず適正給与より安い場合。
これは単純に人が集まらないでしょう。
今でもたまにあるのですが、最低時給を下回るような給与を設定している事務所もあります。
これは固定残業などが原因、ということが多いですね。
残業などについてはまた別のブログでも述べたいと思いますが、この固定残業を多く設定しているような事務所は要注意です。
所定労働日数は約20日、一日8時間勤務だと月の労働時間は160時間です。
これに固定残業が月40時間の場合、160+40=200時間で給与を割ることで、時給が産出されます。
東京都だと最低時給が1226円なので、最低時給から計算すると24万5200円になります。
仮に給与が24万円でも、固定残業代を含めると最低時給を下回り「違法」となってしまうのです。
また、最低時給とは関係ないのですが、特に求めるスペックが高い人材ほど、相場観には敏感です。
自分がこれまで培ってきたスキルやキャリアを安売りしない、という感覚ですね。
資格などに関係なく、担当件数や在籍年数などで給与が決定される事務所の場合、どうしてもスタート時の給与が低くなってしまうので、募集をする際は調整などが必要かもしれません。
では逆に、相場よりうんと給与を高く設定したら良いのか、というとそうではありません。
これは税務会計業界特有ですが、ガンガン稼ぎたい、となったら独立・開業の道を選ぶ人が多いのです。
そういう人は、社員として働いて高い給与をもらって、というよりは独立するためのノウハウが学べたり、独立後に必要なスキルを身に着けられる事務所を選択します。
それ以外の、ある程度働いて生活でき、余裕のある暮らしができればいい、くらいに考えている人は、あまりにも高い給与の設定では逆に疑ってかかります。
「もしかしたら難しいお客が多いんじゃないか」「所内の雰囲気が悪くすぐ辞めるから給与を高くしているんだろう」「一般的な税務会計の業務以外の仕事もやらされるのでは」。
高い給与の『理由』を考えてしまうのです。
また、給与だけに魅力を感じて入社するような人材には、注意が必要ということもあります。
お客様の金銭を扱うことも多い仕事だけに、不正や違法行為の誘惑もまたある業界です。
高い給与に釣られるのは、やはりお金に困っている人が多いです。
給与だけを餌に応募を集めようとするのは、リスクも高いのです。
実際、ある調査で「就職・転職する際に決め手となったものは何ですか?」という問いに対し、1位は「仕事内容・やりがい」と答えており、59.5%を占めました。
こうした調査は長年行われていて、1990年代から2010年くらいまでは、給与がずっと一位を占めていました。
しかし若者の価値観が変わってきています。
単純な給与の多寡だけで、求職者が集まるという時代は過ぎようとしているのです。
もちろん適性範囲内であることは求められますが、最終的には自分たちの事務所を魅力的なものにしていく、それが人材採用を有利に進めるために必要なのです。
そうした事務所作りのお手伝いや、魅力をどう伝えていくか、といったお悩みに関しても随時相談を承っております。
興味のある方はこちらからお気軽にご連絡ください。
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