税理士事務所で体育会系人材は大人気!?
- 斉藤永幸
- 11月8日
- 読了時間: 7分
更新日:11月24日

小規模税理士事務所で大人気の体育会系人材
採用サポートをしていて「どんな人材が欲しいですか?」の問いに対して、かなりの割合で返ってくる答えが「体育会系の人がいいね~」というもの。
この傾向は特に、小規模税理士事務所で多いですね。
実際、体育会系人材の特徴としては、根性があり、上の支持には従う、ストレス耐性があって、下積みなどでの努力をいとわない。
こうしたものが挙げられると思います。
さらにチーム競技出身者は、全体のために貢献する意識が強い傾向があり、こうした人材はその特性からずっと日本経済の表舞台で活躍してきました。
特に商社や金融では、有名大学の運動部出身者が採用では優遇される傾向が強かったですね。
そしてこの特性はそのまま税理士事務所での業務にフィットするのです。
税理士事務所の仕事では、時にお客様からの理不尽な要求などがあります。
そうしたストレスにも耐えつつ、元気で駆け回る。
事務所のために一つひとつ努力できる。
そんな人材は、小規模な税理士事務所からすれば、喉から手が出るほど欲しい人材でしょう。
所長の立場から見ると、非常に使い勝手の良い人材が体育会系人材なのです。
また税理士業界では、独立・開業した所長のうち、けっこうな割合で体育会系出身者がいます。
細かなデータを取ったわけではありませんので体感ですが…、
自らの力で独立開業した所長のうち、4割程度が体育会系気質、5割が文系気質、1割が理数系気質、といった感じでしょうか。
体育会系の気質をバックボーンに持つ所長は、やはり体育会系人材と価値観が合うのです。
それだけ人気で、実際に小規模~中規模の事務所では活躍しているシーンも多い体育会系人材ですが、これが一気に成長している税理士事務所や大規模な税理士事務所ではそこまで体育会系人気は高くありません。
なぜでしょうか?
体育会系人材は競争率が高い
ただ、営業職の強い税理士事務所などでは、事務所が大きくなっても体育会系人材を優先的に採用しています。
ただ、基本的に規模が大きくなればなるほど、体育会系人材はその存在感が失われていきます。
その理由としてまず挙げられるのが、体育会系人材を採用することが難しいからです。
私の体感での話居ですが、自分で独立・開業した所長のうち4割程度が体育会系気質を持っています。
しかしスタッフレベルになるとその割合は一気に低下します。
スタッフレベルだと、体育会系気質を持つ人は2割程度、文系気質のスタッフが7割程度、理数系気質のスタッフは1割程度でしょうか。
所長が4割に対し、スタッフだと2割と割合的に少ないのです。
元々少数だったスタッフレベルの体育会系人材ですが、この傾向は年々強まってきています。
以前は税理士事務所に勤めながら勉強し、独立開業して一国一城の主になる。
そうした人生設計をもってこの業界に入ってくる人が大勢いました。
このような独立志向の強いのが体育会系気質の人材だったのです。
しかし近年では独立開業のリスクが高くなり、学生にとっては税務と親和性の強かった経理の仕事が女性が多いイメージから、体育会系の人材にとって選択肢に入りにくくなりつつあります。
それよりは営業系の企業でバリバリ働き、出世を目指す、といったキャリアを選ぶ体育会系人材が増えているのです。
そのため体育会系人材は募集しても採用できる確率が低くなります。
一気に成長を目指す税理士事務所や、すでに規模の大きな税理士事務所は、常に一定の人材を確保しなければなりません。
そのため大きな採用コストをかけ、狭い範囲を狙うのではなく、より確率の高い人数の多い層をメインターゲットに据えるのです。
もう一つが体育会系人材の特性が、規模が大きくなると発揮しにくくなることです。
体育会系の特性は、小規模な税理士事務所だと非常に効果を発揮します。
その馬力は周りを引っ張り、自分の責任を果たしつつ、時には営業力なども発揮して新規のお客様を獲得する、といったことも多いでしょう。
しかし人数が多くなると、一人ひとりの能力より、組織としての力が重視されます。
そのため一人のスタッフとしては優秀だけど、その範囲が相対的に小さくなってしまうのです。
同時に、事務所の成長過程で体育会系が問題になることもあります。
以前、相談を受けた税理士事務所では、創業してすぐに体育会系人材を採用し、事務所の中核に据えたことで一気に大きくなりました。
そこでその人材をマネージャーに据え、事務所を組織化しようとしたのですが、そこで躓きました。
事務所を大きくするために、新たに人材を採用したのですが、その多くが文系の人材です。
体育会系のマネージャーと文系のスタッフがミスマッチを起こしたのです。
マネージャーからすると、これは事務所のためになる、スタッフの成長のためになる、といった業務をどんどんスタッフに任せていました。
マネージャーからすれば今は大変だろうけど、将来のためになると思えばそれくらい苦にならない、という価値観だったのです。
しかしスタッフからすると、それは重荷になってしまったのです。
そのため入社してもすぐに退職が相次ぎ、成長が一気に停滞してしまったのです。
体育会系人材こそ丁寧なマネジメントを
上記の例で何が問題だったのでしょうか。
それは所長のマネジメント不足でした。
マネージャーになった体育会系人材は、所長からすれば非常に使い勝手が良かった。
自分の考えを理解してくれるし、事務所のことを第一に優先してくれる頼れる人材だったのです。
だからこそマネージャーを任せたのですが、実際はそのマネージャーのマネジメントが足りていなかったのです。
小さな事務所では、皆が家族のように言葉にしなくても伝わる部分が大きいでしょう。
しかし組織が大きくなり、自分たちと違う資質を持った人材が多くなってきたとき、コミュニケーション不全に陥ってしまったのです。
言葉に出して一つひとつの業務の意味や、これをやれば将来どうなる、といったことの説明もなく「いいからやれ」「それが自分たちのためになるんだぞ」そんな一方的な状況が生まれてしまっていました。
マネージャーからすると、これで今まで自分たちはうまくやってきたのだから、それが成功体験となりスタッフの声に耳を傾けなかったのです。
本来であればこの前段階、マネージャーになる段階でしっかりと研修を受けるなり、所長と話し合うなりして、組織について学んだり、価値観を変化させなければいけなかったのです。
しかし所長は便利で優秀な人材だからと、まかせっきりにしてしまいました。
体育会系は事務所を成長させる大きな原動力になるのと同時に、組織化の過程でその資質をポジションに合わせて変化させていかなければなりません。
スタッフレベルでは、自分のことだからいくらでも無理ができても、チームを率いるとなればそれを部下に強要することはできません。
いかにサポートし、環境を整え、誘導して、目的を達成するようにしなければならなかったのです。
規模の小さな事務所では、体育会系はその特性がプラスに働きますが、事務所が拡大・成長するにつれマイナス面も出てきてしまう。
そのことをしっかりと留意しなければならないのです。
それをしっかりとサポートし、マネジメントできなければ、せっかくの体育会系人材を活躍の場を奪うどころか、無駄に消費してしまうことにもなりかねません。
このような入社後の人材をどのようにうまく活かしていくのか、についてのお悩みなどなどがございましたら、こちらからお気軽にご相談ください。
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