カジュアル面談は”設計が9割”|候補者の本音を引き出し、魅力を伝えるための実践ガイド
- 斉藤永幸
- 2月2日
- 読了時間: 15分

カジュアル面談を成功させるには、実は“設計が9割”です。
先日、ある税理士事務所の所長から突然こんな相談を受けました。
「最近、企業でカジュアル面談って流行っているよね。うちでもやってみたいんだけど、どう進めればいいの?」
すでに日程だけは決まっていて、準備に使えるのはわずか5日。そこから急いで、その事務所に合ったカジュアル面談の設計を組み立てました。
幸い、その事務所とは長い付き合いがあり、内情も把握していたため対応できましたが、カジュアル面談の設計は通常の面接よりもはるかに難易度が高いのが実情です。通常であれば、設計に最低2週間、導入に3〜4日は欲しいところです。
なぜそこまで時間が必要なのか。理由はシンプルで、カジュアル面談は「選考ではない」という建前とは裏腹に、しっかり選考プロセスに組み込まれているからです。
事務所側は求職者の本音を引き出しつつ、事務所の魅力も伝えなければならない。そのためには、事前に「何を、どの順番で、どれくらい深く話すか」を丁寧に設計しておかないと、ほぼ確実に失敗します。
一方で、採用難が続く中、最初のハードルを下げるためにカジュアル面談を導入する事務所は増えています。だからこそ、“ただ気軽に話す場”として実施すると、逆に採用機会を逃してしまうことも珍しくありません。
そこで今回は、カジュアル面談を導入する際に、どこに気を付ければいいのか。そのポイントを整理していきたいと思います。
1. カジュアル面談とは何か(誤解されがちなポイント)
「選考ではない」という建前と、実際は選考に影響する現実
カジュアル面談は「気軽に話す場」「選考ではありません」と案内されることが多いですが、実態としては候補者の志向・価値観・コミュニケーションスタイルを見極める“前哨戦”になっています。
事務所側は無意識に「一緒に働くイメージ」を持てるかを判断している
求職者も「この会社は自分に合うか」を強く観察している
その場の印象が、後続選考の温度感に直結する
つまり、建前は「選考ではない」でも、実際は“選考に影響する場”であることは避けられません。だからこそ、雑談で終わらせず、事務所側・求職者、双方にとって価値のある時間にする必要があります。
事務所側・求職者側の目的の違い
カジュアル面談が噛み合わない最大の理由は、目的がそもそも違うことです。
●事務所側の目的
自社に興味を持ってもらう
応募意欲を高める
候補者の価値観・志向を理解する
ミスマッチを防ぐための情報収集
●求職者側の目的
会社の雰囲気や働き方を知りたい
自分が活躍できる環境か確かめたい
ネガティブ情報(残業、評価制度、人間関係)を探りたい
応募する価値があるか判断したい
この“目的のズレ”を理解していないと、「企業説明ばかりで終わる」「候補者の本音が出ない」「温度感が上がらない」といった問題が起きます。
カジュアル面談が採用成功率に与える影響
実は、カジュアル面談の質は採用成功率に大きく影響します。
求職者の志望度が上がると、内定承諾率が大幅に上がる
早期離脱(辞退)が減る
ミスマッチによる早期退職を防げる
“この会社は誠実だ”という印象が口コミやSNSで広がる
特に士業事務所や中小企業では、ブランド力や知名度で勝負しづらいため、カジュアル面談こそが大きな差別化ポイントになります。
候補者は「この事務所は話しやすい」「自分を理解してくれた」と感じると、大手で内定をもらったとしても、中小税理士事務所を選ぶケースは珍しくありません。
2. カジュアル面談がうまくいかない理由
カジュアル面談は“気軽な場”というイメージが先行しがちですが、実際には多くの事務所でうまく機能していません。その背景には、いくつか共通する落とし穴があります。その要因となっているものは大きく4つあります。

① 面談者が“雑談”で終わらせてしまう
「カジュアル=雑談でOK」と誤解してしまうと、面談の価値が一気に下がります。
目的が曖昧なまま話し始める
相手の志向や価値観を深掘りしない
なんとなく雰囲気だけで終わる
これでは、求職者の本音も引き出せず、事務所の魅力も伝わりません。
雑談のように自然な空気を保ちつつ、聞くべきことはしっかり聞く“設計された雑談”が必要です。
② 事務所の説明に偏り、求職者の理解が深まらない
多くの面談で起きがちなのが、事務所側が話しすぎる問題です。
事務所の歴史や理念を長々と説明
業務内容を細かく説明しすぎる
求職者の話を聞く時間がほとんどない
これでは、求職者は「結局、自分がどう関われるのか」が見えません。カジュアル面談は“企業プレゼンの場”ではなく、双方向で理解を深める場です。
③ 求職者の不安・疑問を拾いきれない
求職者は、求人票やHPでは分からない“リアル”を知りたがっています。
残業はどれくらいか
評価はどうされるのか
人間関係はどうか
入社後の成長イメージはあるか
こうした不安を解消できないと、志望度は上がりません。むしろ「聞きづらい雰囲気だった」と感じさせてしまうと、逆効果です。
安心して質問できる空気づくりが、カジュアル面談の成否を大きく左右します。
④ 面談後のフォローが弱い
面談が良くても、フォローが弱いと求職者の温度感は一気に下がります。
お礼メールが形式的
次のステップが曖昧
社内共有が不十分で、次の面接官が内容を把握していない
特に税理士事務所では、採用担当が専任ではないことも多く、フォローが後回しになりがちです。しかし、面談後のスピードと丁寧さは、求職者の志望度に直結します。
では具体的に、どのようにすればカジュアル面談を成功させることができるのでしょうか。
3. 面談前の準備が9割:成功するための事前設計
カジュアル面談は、当日の話し方よりも「事前の設計」でほぼ決まります。準備が甘いと、雑談で終わったり、候補者の温度感が上がらなかったり、逆に不信感を与えてしまうこともあります。
ここでは、面談前に必ず押さえておきたい5つの準備ポイントを紹介します。
① 求職者の経歴・志向の事前リサーチ
まずは、候補者の情報をしっかり把握することが基本です。
経歴・職歴・資格・スキル
転職理由や志望動機(応募前でも、類推は可能)
SNSやnote、ブログなどの発信内容
過去の面談・応募履歴(あれば)
このリサーチがあるだけで、「この人に合わせた話ができる」という印象を与えられます。逆に、何も調べずに臨むと「誰にでも同じ話をしているな」と思われてしまいます。
② 面談の目的を明確化(動機形成?情報提供?見極め?)
カジュアル面談といっても、目的はケースによって異なります。
応募前の動機形成(興味を持ってもらう)
応募後の情報提供(不安を解消する)
書類選考前の見極め(価値観や志向を確認する)
目的が違えば、話す内容も順番も変わります。「この面談は何のためにやるのか」を明確にしておくことが、設計の第一歩です。
③ 話す順番・深掘りポイントの設計
面談は“流れ”が命です。話す順番や、どこで深掘りするかを事前に決めておくと、自然な会話の中で必要な情報が引き出せます。
例:
軽いアイスブレイク(共通点・雑談)
候補者の志向や価値観を聞く
事務所の魅力を伝える(候補者の関心に合わせて)
不安や疑問を聞き出す
次のステップの案内
“雑談っぽく見えるけど、実は設計されている”という状態が理想です。
④ 伝えるべき「魅力」と「弱点」の整理
事務所の魅力はもちろんですが、弱点も正直に伝えることが信頼につながります。
魅力:働き方、成長環境、チームの雰囲気、所長の考え方
弱点:忙しい時期、評価制度の未整備、IT化の途中段階など
「弱点を隠すと、入社後のギャップで辞退される」「弱点を正直に伝えると、誠実な印象を持たれる」この差は、面談後の志望度に大きく影響します。
以下に目的別の話す順番の例と深堀ポイントを載せておきます。
面談目的別|話す順番の設計例
面談の目的 | 話す順番 | 深掘りポイント | 伝えるべき情報 |
① 応募前の動機形成 (興味を持ってもらう) | 1. アイスブレイク(共通点・雑談) 2. 候補者の志向・価値観を聞く 3. 事務所の魅力を伝える 4. 不安・疑問を聞く 5. 次のステップを案内 | ・転職理由 ・仕事観・価値観 ・今後のキャリアイメージ | ・働き方の柔軟性 ・成長環境 ・チームの雰囲気 ・所長の考え方 |
② 応募後の情報提供 (不安を解消する) | 1. 面談の目的を共有 2. 候補者の不安・疑問を聞く 3. 事務所の実態を説明 4. 入社後のイメージを共有 5. 次の選考ステップを案内 | ・残業や繁忙期 ・評価制度 ・人間関係 ・入社後のフォロー体制 | ・実際の働き方 ・制度の整備状況 ・入社後の研修 ・育成体制 |
③ 選考前の見極め (価値観や志向を確認) | 1. 面談の目的を共有 2. 候補者の経歴・志向を深掘り 3. 事務所の考え方・働き方を説明 4. 相互理解のための質疑応答 5. 社内共有のためのまとめ | ・転職理由の背景 ・職務経験の具体性 ・価値観の一致度 | ・事務所のカルチャー ・求める人物像 ・今後の組織方針 |
⑤ 求職者が聞きたいであろう質問の予測
候補者が本当に知りたいことは、求人票には書かれていないことです。
実際の残業時間は?
どんな人が評価される?
入社後のキャリアパスは?
所長はどんなタイプ?
チームの雰囲気は?
こうした質問を先回りして答えられると、安心感と信頼感が一気に高まります。また、求職者が質問しやすい空気を作ることも大切です。
4. 当日の進め方:自然体なのに“伝わる”話し方
カジュアル面談は、形式ばった面接とは違い、自然な会話の中で相互理解を深める場です。しかし「自然体で話す=準備しない」ではありません。“自然に見えるけれど、実はしっかり設計されている”という状態が理想です。
ここでは、当日の進め方のポイントを5つに分けて解説します。
① 最初の5分で安心感を作るコツ
カジュアル面談の成否は、最初の5分でほぼ決まります。求職者は緊張しており、最初の空気が「話しやすいかどうか」を判断する材料になります。
安心感を作るポイント
共通点を見つけて軽く触れる(出身地、趣味、資格など)
面談の目的を最初に共有する
例:「今日は選考というより、お互いを知る時間にできればと思っています」
例:「前半はお話を伺って、後半に事務所のことをお伝えしますね」
これだけで、求職者は一気に話しやすくなります。
② 「事務所説明 → 求職者理解 → 双方向の深掘り」の黄金パターン
カジュアル面談の流れは、次の3ステップが最も安定します。
STEP1:事務所説明(短め)
事務所の概要
どんな人が働いているか
どんな価値観を大切にしているか
※ここは“短く、わかりやすく”が鉄則です。
STEP2:求職者理解(しっかり)
転職理由
仕事観・価値観
今後のキャリアイメージ
※ここが面談の中心。聞く姿勢を大切に。
STEP3:双方向の深掘り(本音が出る)
候補者の価値観に合わせて魅力を伝える
不安や疑問を丁寧に拾う
入社後のイメージを一緒に描く
この流れにすることで、一方的な企業説明にもならず、雑談だけで終わることも防げます。
③ 求職者の本音を引き出す質問例
本音を引き出すには、いきなり深い質問をするのではなく、段階を踏むことが大切です。
● 価値観を知る質問
「どんな働き方ができると、長く続けられそうですか」
「これまでの職場で、特にやりがいを感じた瞬間はどんな時でしたか」
● 転職理由の背景を探る質問
「転職を考え始めたきっかけは何でしたか」
「前職で変えたいと思った部分はありますか」
● 不安を引き出す質問
「事務所選びで、気になっている点はありますか」
「入社後に不安に感じそうなことはありますか」
質問の目的は“詰問”ではなく、相手の価値観を理解することです。
④ 企業の魅力を押しつけず、相手の価値観に合わせて伝える方法
魅力を伝えるときにやってはいけないのは、「うちはこんなに良いんです!」と一方的に語ることです。
大切なのは、候補者の価値観に合わせて伝えること。
例:
候補者が「成長したい」と言っていた場合
→「うちは月次の担当を早めに持てるので、実務経験が積みやすいですよ」
候補者が「ワークライフバランス」を重視している場合
→「繁忙期以外は残業が少なく、家庭と両立しているスタッフも多いです」
同じ魅力でも、相手の価値観に合わせて“翻訳”して伝えることで、刺さり方が変わります。
⑤ 話しすぎ問題を防ぐためのバランス感覚
士業事務所の面談で特に多いのが、「所長が話しすぎてしまう」問題です。
話しすぎを防ぐコツは3つ。
話す:聞く = 3:7 を意識する
長く話した後は「ここまででどうですか?」と区切る
候補者の表情や相づちを見て、理解度を確認する
カジュアル面談は“企業プレゼン”ではなく、相互理解の場です。聞く姿勢があるだけで、候補者の安心感は大きく変わります。
5. カジュアル面談で絶対にやってはいけないNG行動
カジュアル面談は「気軽に話す場」とはいえ、採用の入口として非常に重要です。
ここでの失敗は、求職者の志望度低下や辞退につながりやすく、後工程にも大きな影響を与えます。
特に、以下の5つは“やってしまいがち”かつ“致命的になりやすい”NG行動です。
① ネガティブな情報を隠す
「残業が多い時期がある」「評価制度がまだ整っていない」など、弱点を隠すのは逆効果です。
入社後のギャップにつながる
信頼を失い、辞退されやすくなる
SNSや口コミで悪い印象が広がる可能性もある
弱点は隠すのではなく、“どう改善しているか”とセットで伝えるのが正解です。
② 一方的な事務所プレゼン
税理士事務所のカジュアル面談で特に多いのが、所長が熱く語りすぎてしまうパターン。
事務所の歴史を長々と話す
業務内容を細かく説明しすぎる
候補者の話を聞く時間がほとんどない
これでは、求職者は「自分の話を聞いてくれない」と感じ、志望度が下がります。カジュアル面談は双方向のコミュニケーションが基本です。
③ 候補者の価値観を否定する
これは意図せずやってしまうケースが多いのですが、かなりダメージの大きいNG行動です。
「その働き方は甘いよ」
「うちではそんな考え方は通用しない」
「前職のやり方は違うから」
こうした言葉は、候補者の心を一気に閉ざします。価値観が違うと感じた場合も、否定ではなく“すり合わせ”が大切です。
④ 選考のような圧迫感を出す
カジュアル面談なのに、面接のような空気を出してしまうと逆効果。通常の面接とは異なるカジュアル面談を設定した意義そのものを壊してしまいます。
質問攻め
表情が硬い
メモを取りすぎる
無言の時間が長い
求職者は「本当にカジュアルなの?」と不信感を抱きます。リラックスした空気づくりが、カジュアル面談の価値を最大化します。
⑤ その場で評価を匂わせる
これも無意識にやってしまいがちなNG。
「いい感じですね」
「うちに合っていると思いますよ」
「採用はほぼ大丈夫だと思います」
こうした言葉は、後の選考で落とした場合にトラブルの元になります。また、求職者の期待値を不必要に上げてしまうため、辞退や不信感につながることも。
評価は持ち帰り、その場では“相互理解を深める場”であることを徹底するのが安全です。
6.面談後のフォローで”熱量”を維持する
カジュアル面談は、当日で終わりではありません。むしろ、面談後のフォローこそが、候補者の志望度を決定づけると言っても過言ではありません。
フォローが弱いと、どれだけ良い面談をしても温度感は下がります。逆に、丁寧なフォローがあるだけで「この事務所は誠実だ」と感じてもらえ、選考の歩留まりが大きく改善します。
少なくても次のポイントは抑えておきたいですね。
・サンクスメールを送る
→面談の御礼、面談中に印象に残った内容(相手に合わせた一文)などを載せ、次のステップの案内を送ります
・サンクスメールや次の連絡は面談後24時間以内
スピードは信頼につながります
・次のステップを明確に提示
書類選考に入るのか、すぐに一次面接に入るのか、それとも事務所見学などを挟むのか。
何をすればいいか明確だと、求職者が動きやすくなります。
・所内での情報共有
面談後の社内共有が曖昧だと、次の面接官が情報を把握できず、候補者に同じ質問をしてしまうなど印象を悪くする原因となります。
求職者の基本情報だけでなく、志向・価値観、気になった点、などを共有し次のステップで確認すべきことを決めていきましょう。
※ここはテンプレート化しておくと、誰が面談しても一定の質を保つことができます
7. まとめ:カジュアル面談は“採用の最初の勝負どころ”
カジュアル面談は、ただの雑談の場ではありません。採用の成否を左右する“最初の勝負どころ”です。
面談の質が採用成功率を大きく左右する
「誠実さ」「透明性」「双方向性」が信頼を生む
小さな改善でも、候補者の印象は驚くほど変わる
特に士業事務所や中小企業では、ブランド力よりも“人”が決め手になります。だからこそ、カジュアル面談の質を高めることは、採用力そのものを底上げする最短ルートです。
今回紹介した内容は、どれも明日から実践できるものばかりです。
しかし、実際に自社(自事務所)に合わせて設計しようとすると、
どこまで話すべきか
どこを深掘りすべきか
どんな順番で進めるべきか
どの魅力をどう伝えるべきか
といった“個別の悩み”が必ず出てきます。
もし、
「うちの事務所に合ったカジュアル面談の設計を知りたい」
「実際に使える台本や質問リストを作ってほしい」
「面談の流れを一緒に組み立ててほしい」
と感じたら、気軽にご相談ください。
これまで多くの事務所を見てきた経験をもとに、あなたの事務所に最適な“勝てるカジュアル面談”の形を一緒に作ります。
初回の相談は無料です。「まずは話を聞いてみたい」という段階でも大歓迎です。面談後の情報共有用に使えるテンプレートなどもお渡しすることが可能です。
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