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採用の条件にコミュニケーション力は必要ですか?

更新日:11月24日

話下手と書かれたボードのイラスト
採用で人気のあるコミュニケーション力の高い人材。しかしそれって本当に必要ですか?

どこの事務所でも大人気


採用のお手伝いで税理士事務所の所長にお話を伺った際「欲しいのはどんな人材ですか?」の問いに対し、一番多いのが「コミュニケーション力の高い人」です。

そもそもこのコミュニケーション力の高い人材は、どの業界でも引っ張りだこ。


そのうえ、この業界は税理士試験があります。

大学を卒業後、さらに何年も学校に通い、勉強を続けなければなりません。

ただ、多くのコミュニケーション力の高い人材は、基本的にそのような進路は選ばないことが多いですね。

そうした人材は学生時代も充実し、さらに何年も下積みをする、などをしなくても活躍できる場はたくさんあるからです。

ただ、コミュニケーション力が高くても、税理士になって独立開業を目指したい、という目標が明確な人はこの業界を選びこともありますが…。

大前提として、コミュニケーション力の高い人材は、この業界では非常に貴重だといえます。


これがどういう状況かというと、貴重な人材を多くの事務所が取り合っている、非常に厳しい争奪戦が起きているということです。

中小規模の税理士事務所がこの争奪戦に参加する、というのはなかなか厳しいものがあります。

しかし税理士事務所での担当業務は、近年ではサービス業の意識が高まり、お客様とのコミュニケーションが重視されます。

ではどうすればよいのでしょうか?



コミュニケーション力は育てられる


応えは簡単です。

コミュニケーション力の高い人材を採用するのが難しいのであれば、育てればいいのです。


私がこの業界に携わるようになって感じたのが、教育が非常に偏っている、ということです。

中規模以上の税理士事務所では、研修体制が充実しているところも多くあります。

しかしその多くは『専門知識』がほとんどです。


専門職である以上、こうした知識は重要です。

しかし一般企業が多く取り入れているような、コミュニケーションに関する研修などは行われていません。


入社すると、ざっと業務の流れなどを説明した後は、仕分け入力などを行いながら税務の基本を学んで、あとはOJTで先輩がお客様とやり取りするのを見て学ぶ、というのがほとんどです。

そのあとは税法や会計ソフトに関する勉強会や研修などは行われますが、いわゆる『ビジネス研修』のようなものはほとんどやっていません。

新卒を募集するような事務所が、新入社員研修として名刺のやり取りや電話応対などを少し学ぶくらいでしょうか。

その後のフォローアップ研修やステップアップ研修のようなものを実施しているところが非常に少ないのです。


ビジネスシーンで求められるコミュニケーション力とは、学生時代やプライベートでのものとは異なります。

だからこそコミュニケーション力を重視する他の業界では、会社として新入社員研修などに力を入れ、その後も研修などを行いコミュニケーション力を伸ばすようにバックアップしています。

しかし入社した税理士事務所ではコミュニケーション力を伸ばすための研修などはなく徒弟制度のような「見て学べ式」が今でも主流です。

そのうえこの業界に入ってきた若手の人材は、まずは税理士資格取得を目指すためわざわざプライベートの時間を使ってコミュニケーションを学ぶことは少ないでしょう。

その結果が、コミュニケーション力が低い人材が主流を占める業界、の一つの要因ではないでしょうか。


ただ、これまで税理士事務所がコミュニケーションの研修などを実施してこれなかった事情も分かります。

まず圧倒的にコミュニケーション研修などの費用が高額であること。

コミュニケーション研修の費用は、公開講座の場合は3~5万円、社内に講師を招く場合は20~30万円くらいかかってしまいます。

特に地方では、費用を抑えるために公開講座を受けさせる場合でも、受講料の他に交通費や宿泊費もかかるため、さらに高額になります。

そのうえ、この業界は従来、定着率が低く2~3年での離職率が他の業界に比べると高いのです。

つまり高い費用をかけ教育をしても、すぐに辞めてしまうなどすればそれがそのまま損失となってしまいます。


そのうえ、こうしたコミュニケーション講座などは成果がわかりにくいというのもあります。

専門知識の研修などであれば、新たな業務などを任せることができ、どれくらいの費用でどのくらいの利益向上が見込める、などを計算することができます。

しかしコミュニケーション力は、受ければすぐに売り上げがアップする、というものではありません。


ただ、この状況も少しずつ変化してきています。

Webでビジネス研修を受けるサービスも出てきており、費用はぐっとリーズナブルになり、地方にいても研修を受ける環境が整いつつあります。

実際、私も一般企業ですが毎年新入社員の研修で講師を務めていますが、一般的なものに比べるとかなりリーズナブルに提供させていただいております。


こうしたサービスを利用すれば、中小規模の税理士事務所でも、コミュニケーション力を高める研修を実施することは可能なのです。



社内で教育、という選択肢も


それでも研修を受けさせるのはハードルが高い、というところもあるかもしれません。

その場合は、やはり社内での教育になります。


ある税理士法人でコミュニケーションの勉強会を見せていただいたことがあります。

ここはすごかったですね。

新入社員のうちは、毎日お客様のところに訪問する前に、勉強会を実施しているのです。

新入社員1人に対し、指導係の先輩が1人とお客様役の先輩1人がつき、お客様との会話などを想定してロールプレイングを繰り返すのです。


まずは答えをあらかじめ用意し、それに沿ってお客様(役)との会話を進めていきます。

それに慣れてきたら、徐々に想定外の質問などをぶつけ、そのたびに指導係がこの会話にはどういう意味があったのか、を解説していきます。


入社後、最初の一か月は所内で基本の業務を学び、二か月目からはこの研修を行い、入社後半年程度はみっちりと研修漬けといいます。

そのうえ、ここの税理士法人はお客様からの質問や問い合わせについてのノウハウを蓄積し、マニュアルが非常に整備しています。

ある程度一人立ちした後も、常にマニュアルを見直すことができるので、お客様対応で問題などは発生することはほとんどないそうです。


もちろんここまでのことはできないでしょう。

しかし、教育といえば単なる先輩同行ではなく、しっかり育てるための仕組みを整える。

そうした姿勢が必要ではないでしょうか。

そうすれば、まずは最低限のコミュニケーション力は身に着けることができます。

あとは徐々にそれを育てていけばいいのです。


最初からコミュニケーション力の高い人材は、確かに事務所としては使いやすいでしょう。

ただ、全員とは言いませんが、ほとんどの人はしっかりコミュニケーションに取り組めば、ある程度社会人としてやっていけるだけの能力を身に着けることができます。

そうして育った人材は、事務所へのロイヤリティも高く、離職率も低いので、結果として事務所の経営が安定する、ということも多いですね。


まずは自社でスタッフのコミュニケーション力を高めるために、何かもっとやれることはないか、と検討してみることが必要なのではないでしょうか。

それでもなかなか難しい、という場合は私もサポートを提供しますので、こちらよりお気軽にお問い合わせください。


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