求人広告の基本(第三回:待遇・福利厚生)
- 斉藤永幸
- 10月31日
- 読了時間: 6分
更新日:11月24日

合わせてご覧ください。
給与の表記には内訳が必要
近年の求人広告で大きな変化の一つが、給与の表記です。
以前は非常にざっくりとしていて、月収と月給の表記が混在しており、実際に入社したら思っていただけの収入が得られなかった、ということもありました。
月収には手当などが含まれており、アバウトな数字だったのです。
これではいけないと、月給と月収の区別が明確化され、近年では基本的に月給〇〇万円、もしくは年俸制〇〇〇万円、という表記が定着しています(正社員募集の場合)。
しかし数年前からはさらにこの表記のルールが細かくなり、現在では給与としていくらもらえるのか、が明確に分かるようにしなければいけなくなっています。
つまり残業代込み、みたいなものはできなくなりました。
固定残業制であるなら、それが何時間で、いくらにあたるのか、というこまで記さなければいけなくなったのです。
例えば月給28万円で固定残業時間30時間の場合、賃金として23万300円、固定残業代が4万9700円である、ということが伝わらないといけないのです。
そのため以下のような書き方になります。
月給28万円(固定残業御代30時間分:4万9700円)
上記の固定残業時間を超えた場合、別途残業代として支給
このように固定残業時間を超えた分は、別途残業代として支払うことを明記しなければいけません。
これが多くの個人経営の税理士事務所に影響を与えました。
個人経営の税理士事務所では『残業代込み』で給与を決めていたのです。
「残業をするかしないかは、スタッフの仕事の進み方次第。残業が発生しても給与は一緒だよ、という考え方です」。
労働時間管理などは数名規模の個人経営の税理士事務所では負担が大きく、その結果このような考え方になっていったのでしょう。
しかしそれは通じなくなってしまいました。
今でもこうした表記を使っていれば、違法というだけでなく、この事務所はコンプライアンス意識が低い、と認識されてしまいます。
これは求人広告だけに限らず、自社HPなどで採用ページなどを作る際も、注意が必要です。
WEBでの求人広告は、自社のHPアドレスなどを載せることも可能ですし、多くの求職者は応募の前に事務所名などで検索をします。
その際に、残業などに対する意識が低い=ブラックな労働環境なのでは、と思われてしまうのです。
実は残業代込みとしている個人経営の税理士事務所は、そもそも残業などがほとんどないので残業の取り扱いを決めていない、というところも多いのです。
そうした事務所が、表記一つで信頼を失墜するのは非常にもったいないことです。
給与だけで誤解されないため
続いて考えたいのが、福利厚生です。
昇給や賞与については別枠を設けているところもありますが、ここでは福利厚生として一緒に見ていきます。
基本的に待遇・福利厚生の部分では、給与以外にどんな制度があるのかを列挙することになります。
昇給はどれくらいのペースであるのか、賞与は年何回か、それとも賞与なしか。
交通費は上限があるのか、それとも全額出るのか。
社保は完備なのか、それとも雇用・労災だけなのか。
まずはこれらが伝われば最低限の情報は押さえることができます。
ただ、これはあくまでも最低限。
そこから魅力となる部分をアピールしていきましょう。
税理士事務所の中には、毎月の給与の額が低く、賞与で還元する、といった方針の事務所も多いです。
そうした事務所では、単に給与の額と賞与年2回、とだけ書くと他の事務所より給与水準が低いのではないか、と誤解をされてしまいます。
そのため、少し追記をしてあげる必要があります。
月給25万円+年3回賞与(平均4か月分)
(想定年収400万円以上)
のようにすると、単に月給だけで判断されるのではなく、年収ベースで求職者に判断してもらうことができます。
求職者は給与の欄に意識が向くことが多いので、ここでマイナスの印象を持たれると、その先まで読まずに転職候補から外されてしまいます。
しっかりと情報を加えることで、マイナスイメージを払拭していく必要があります。
福利厚生の充実は重要
昇給・賞与、社会保険、交通費、などはほとんどの事務所で制度が整っています。
それ以外の制度などがあれば、しっかり記載するようにしましょう。
先ほど給与は重要と言いましたが、近年では職場環境が充実しているか、という点に注目する求職者が増えています。
こうした人は、福利厚生が充実しているかどうか、をしっかり見ています。
後日、求人に有利な福利厚生制度などについても述べていきたいと思いますが、ここでは割愛し、重要なポイントだけ見ていきます。
特に注目されるのが手当と研修制度ですね。
家族手当や住宅手当などの一般的な手当の他、この業界ならではのものとして資格手当があります。
これがあればその内容までしっかり書くことが大切です。
日商簿記2級3000円、税理士試験簿記論・財務諸表論5000円、税法科目1科目ごとに1万円
といった書き方になります。
こうした資格手当がある=税理士試験を応援している事務所なんだな、と伝わります。
逆に資格手当がない事務所は、資格の有無にかかわらず働きによって評価されるんだな、と求職者は考えるでしょう。
また、研修制度などについても、できればその内容までしっかり伝えていきたいところ。
大きく扱いたいなら、募集要項部分ではなく、事務所の魅力をアピールするスペースで扱いたいくらいです。
転職によりスキルアップを目指す求職者はもちろん、実務経験の浅い求職者や、出産・子育てで職場を離れブランクのある求職者などは、研修制度の注目度は高いですね。
そのため単に「研修制度あり」、などで終わらせるのではなく、
社内研修:週に1回グループごとに勉強会あり、月1回全体研修あり、新入社員研修、OJT
社外研修:社外研修を積極的に活用(費用事務所負担)、WEB研修なども自由に受講可
このように書くと、この事務所はスタッフの教育に熱心なんだ、と印象付けることができます。
こうした制度は、事務所の方針が色濃く出る部分でもあります。
そのため将来に渡って事務所を成長させ、募集を何度も行っていきたい、という事務所はこのような福利厚生の充実も多いなポイントの一つとなります。
将来に向け福利厚生を整えていきたい、求人に効果的な福利厚生を教えて欲しい、などのご要望がありましたら、こちらより気軽にご相談ください。
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