小規模事務所の採用戦略(後編)
- 斉藤永幸
- 10月25日
- 読了時間: 6分
更新日:11月24日

手間をかけて採用活動を行うには
お金をかけずに採用を、というとハローワークが真っ先に思いつくと思います。
ただ、ハローワークは利用には注意が必要であり、それについては先日別に書きましたので、こちらから参照してください。
ではそれ以外にお金をかけずに採用はできるのか、というと手段はあります。
それがリファラル採用です。
リファラル採用とは、自社の社員や知人から、入社してもらえそうな人を紹介してもらう採用手法のことです。
わかりやすい言い方ですと『縁故採用』ですね。
既存のスタッフからの紹介でしたらインセンティブが、紹介してもらった人には御礼などが必要となり、まったく無料というわけにはいかないでしょう。
ただ、WEBなどの採用媒体での求人に比べれば、かなり安く上がります。
また、リファラル採用には他の採用手法にはないメリットもあります。
リファラル採用のメリットと注意点
リファラル採用は単に採用コストの削減だけがメリットではありません。
既存のスタッフからの紹介では、マッチング精度が非常に高いことが特徴として挙げられます。
自分たちの仕事の内容をよく知っているスタッフが友人を紹介するのですから、仕事内容はもちろん、事務所の雰囲気や所長の方針、などでのミスマッチが起きにくいのです。
そのためリファラル採用された人材は、定着率が非常に高いですね。
同時に、有人・知人を紹介するスタッフも、自分の事務所を紹介するのですからより事務所についての理解、意識が高まります。
このように書くと、リファラル採用は良いことばかりじゃないか、と思うかもしれません。
しかし他の採用手法にメリット・デメリットががあったのと同じように、リファラル採用にも注意すべき点があります。
紹介するスタッフには当然のように負担がかかります。
そのため紹介者と会う時には業務の調整などをして、環境を整えてあげる必要があります。
また、紹介を受けた後、不採用にしにくい、という問題があります。
場合によっては紹介をしたスタッフと紹介された人の関係が壊れてしまうことも。
それにより、事務所とスタッフの関係にひびが入ってしまうこともありえますね。
さらに友人を紹介、ということで入社後に所内の雰囲気が職場ではなく、「お友達」感覚になってしまうこともあります。
小規模な事務所の場合、一人ひとりが事務所の雰囲気に与える影響が大きいため、いわゆる慣れ合いになってしまいがちなので特に注意が必要です。
この延長線上で、リファラル採用で特定スタッフと気が合う人ばかり入社した結果、派閥のようなものができてしまうことも。
そうした場合、一人が辞めると他の人も一斉に辞めることもあるので、特定の人ばかりに頼った採用には注意が必要です。
普段から意識してネットワークを構築
こうしたリファラル採用は、税理士資格取得のためにTACや大原などの学校に通われているスタッフが在籍していると、かなり効果的です。
普段から学校で、友人などを作っておくよう言っておけば、いざという時に声をかけてもらいやすいでしょう。
ただ、これはスタッフだけに限った話ではありません。
事務所の代表、自らが人脈を生かしてリファラル採用を目指す、という姿勢が必要です。
独立・開業したての方であれば、以前の職場の後輩や税理士資格取得の際に通っていた学校の仲間、また会計系の学部に通っていた方は大学時代の友人たちに声をかけてみるのも良いでしょう。
まずは代表・所長が手間をかけ、動いている姿を見れば、スタッフや周りの仲間も協力してくれるのではないでしょうか。
特にスタッフ数0~3名くらいまでは、WEB等の公募では人が集まらないので、リファラル採用が中心です。
近い将来独立を目指している人であれば、普段から意識してネットワークを作り、いざという時にどれだけ広く声をかけられるか、で最初のスタートダッシュが決まるといっても過言ではないでしょう。
まずは正社員以外という選択肢も
小規模税理士事務所で正社員の募集をする際には、まずは「人数」が重要です。
そもそも採用が難しいのに、人数がいないから採用できないってどういうことだ、と言われそうですが…。
そこで裏技ではないのですが、手っ取り早く人数を確保する方法として、パート・アルバイトから採用する、というのも一つの手です。
正社員とパート・アルバイトでは、勤め先に求める優先順位が異なります。
正社員では、仕事内容や、雇用条件、給与、そして事務所の規模などが重要になってきます。
しかしパート・アルバイトは、自宅から通いやすいか、職場の雰囲気、楽しく働けるか、時間の融通が利くか、などが重視されます。
しっかり時給がもらえ、勤務しやすい環境であれば、事務所の規模などはあまり関係ない、という人も大勢います。
お客様を担当してもらえる正社員が欲しい、という場合でも少し募集を先延ばししてパート・アルバイトの採用を優先。
ある程度事務所の体裁が整ってから、正社員の募集を行ってもよいかもしれません。
小規模事務所の採用戦略(まとめ)
ここまで見てきたように、5名以下の小規模税理士事務所では、採用において大きなハンデがあります。
WEBでは大手・中堅税理士事務所との競合は避けたいところですし、リファラル採用やパート・アルバイトでステップを踏む、というやり方では、正社員採用まで時間がかかります。
新規でお客様を獲得できたから、すぐに人材が欲しい。
そんな状況に対応するのが難しいのです。
新しい人材を採用しようと思ったら、WEBでもリファラルでも、時間がかかる。
その状況を変えるのが難しいのですから、早めから動くべきでしょう。
将来に向け事務所を大きくしていきたい、という方でしたらまずはこれくらいまでにこれくらいの案件・お客様を確保する。
だから人材はこれくらいの時期までに入社してもらって…。
というように『人材』を主軸として初期段階の業務計画・経営計画を立てていった方が効率的です。
案件が取れたから人を採用する、のではなく新しい人材を採用できたから業務を拡大する。
このほうが事務所経営に無理がかからず、結果としてスムーズな事務所運営ができるようです。
事務所立ち上げから初期段階の人材採用については、なかなか難しいのですが、お問い合わせ等いただけましたらサポートいたしますので、こちらからまずはお問い合わせください。



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