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税理士事務所の採用トレンド2025|経験者争奪戦から“選ばれる事務所”へ

採用トレンドを解説しているセミナーのイラスト
税理士事務所の人材獲得競争は徐々に変化してきています

先日、ある求人媒体の企業からのご依頼で、税理士事務所での求人動向についてお話をさせていただきました。それまで税理士事務所の人材募集はあまり扱ってこなかったので、業界全体の話と、最近の動向について話をさせていただいたのですが、今年の税理士事務所の募集トレンドについては税理士事務所の所長の方々にも関心があるかと思い、記事としてまとめて見ました。

年末ということもありますので、2025年、税理士事務所の採用トレンドについての記事をお届けします。


2025年、税務会計業界の採用市場でどんな変化が起きたのか


2025年、税理士事務所の採用市場は目立った変化はないように思えますが、徐々にある傾向が強まってきています。これまで続いてきた“経験者の争奪戦”はますます激化し、求人を出せば応募が来る時代は完全に終わりました。いま求められているのは、応募者から「ここで働きたい」と選ばれる事務所づくりです。

働き方の価値観の変化、若手のキャリア志向、DX・AI活用の進展──。こうした環境変化に対応できる事務所だけが、優秀な人材を確保し、組織を持続的に成長させていけます。

本記事では、2025年の採用トレンドを踏まえながら、税理士事務所が“選ばれる存在”になるための具体的なポイントを解説します。


まず、今年起こった変化、傾向についてですが、重要なものとしては以下の3点が挙げられます。


・人手不足の構造的な深刻化

これはもう言うまでもありませんね。この業界だけに限らず、社会全体の人手不足感が深刻さを増しています。特に税務会計業界では、企業の経理と人材の奪い合いとなっています。

企業は経理のDX化などに伴い、経理スキルとともにITに対して知見のある人材は非常に高額な費用をつかって採用を行っています。そこに人材を採られてしまっているため、業界全体の人手不足は加速しています。


・若手不足、高齢化、業務量増加

第一に問題として挙げられるのが、長期的にみると税理士を目指す若い人が減少傾向にある、ということです。2025年の税理士試験受験者数は3万6000人とここ5年間では最大でしたが、2021年ごろまで長期的に減少を続けています。 特に深刻なのが業界全体の高齢化です。税理士の53.6%が「60歳以上」となっています。日本税理士会連合会の実態調査(令和6年時点)によると、60歳代25.7%、70歳代22.0%、80歳代5.9%となっており、税理士の半数以上がシニア層です。実はこれでも徐々に世代交代が進み、改善がされているのですが、その速度は遅く、高齢者が中心の業界という印象は依然根強いですね。

こうした若手不足と高齢化という状況に加え、状況をややこしくしているのが業務量の増加です。

freeeが税理士・会計士196名に行った調査では、インボイス制度によって80.6%が業務量が増えた、と回答しています。また2024年の電子帳簿保存法の義務化により、税理士事務所は常時対応が必要になったことから事務負担が増加しています。こうした法律や制度の改正に加え、副業・小規模事業者の増加で依頼が増加しているというが現状です。


業界を取り巻く変化のイラスト

本来であればDX やAI の活用により、業務の効率化で対応していかなければいけないところですが、高齢化と若手人材の不足により、対応が遅れているというのが実情です。業界全体が構造的な問題を抱えており、税理士事務所は「せめてうちの事務所だけでもなんとかしないと」という危機感から採用競争をさらに激化させています。


・求職者が”選ぶ側”になった市場

これは先ほどの若手人材の不足が大きく関係しているのですが、いわゆる「売り手市場」がさらに進んだ状態ということができます。Adeccoのレポートでも 「人手不足の深刻さは2024年から継続」と指摘されており、労働市場全体で人手不足が継続的に続いています。

特に税務会計業界ではこの傾向は非常に強く、税務会計業界は有効求人倍率がおよそ2.3倍前後と他業界より高い水準で人手不足が慢性化しています。これが採用コストや募集広告の年収もジワジワと押し上げ、税理士事務所の負担が増大していることを意味しています。


そのため「採用活動をがんばればなんとかなる」といった段階は終わり、「戦略的に選ばれる事務所」だけが人を確保できる局面に入っている、といえるでしょう。

顕著なのが実務経験者に対する争奪戦が特に激しくなっている点です。


実務経験者のニーズが増加していることを表すイラスト

業界全体が人手不足が深刻化し、経験者確保の難易度が非常に高くなっています。経験者採用がほとんどの業界だったという事情に加え、DX対応やAI 対応、さらにインボイスや電子帳簿保存法などの対応で業務量が増加。その結果、教育などに手間をかける余裕のない事務所が増え、即戦力で活躍してくれる経験者のニーズがかなり高まったのです。逆に、知識があることを担保する、税理士試験科目合格者はそこまでニーズは伸びていません。より「即戦力」としての対応力を重視する傾向が強まっているのです。

また、有効求人倍率が非常に高くとどまっているため、(経験者は特に)求職者側が”選べる側”になっているのです。


2025年に見られた動き

  • 「巡回経験者」「決算・申告まで一通りできる人」への需要が集中

  • 経験者の年収レンジがじわじわ上昇(想定年収500〜600万ラインが珍しくなくなる)

  • 科目合格より「実務経験」「コミュニケーション力」「IT対応力」に評価軸がシフトしつつある


これらのことから、経験者採用は<給料を上げれば採れる>というフェーズは終わり、<働き方・裁量・成長機会のセット>で魅力を伝えないと採用は難しい、という段階になってきています。



採用トレンドの変化で求められる対応


以前であれば募集をしたい税理士事務所に対し「〇〇万円くらいの給与を提示すれば採用できますよ」ということができました。しかし2025年になってからは、このような対応では採用に失敗する事務所が続出。単なる「条件での叩き合い」では対応しきれなくなっているのです。提示する給与を上げ続けるのは不可能ですので、別方面からのアプローチが必要となります。


求人・採用ページでよく見られるアピール:

  • 残業時間の明示(例:繁忙期◯時間/閑散期◯時間)

  • 完全週休2日・有給取得率

  • リモートワーク・時短勤務・フレックスなどの柔軟性

  • 育成方針・教育体制・キャリアパスの提示


このように、働き方・環境アピールが募集における”必須条件”になりつつあります。

逆に言えばこうしたアピールがない事務所は”普通以下”と受け止められます。ブラックでないのは最低ラインで、「この事務所では、どう快適に働くことができ、どう成長できるか」を言語化できる事務所が有利となるのです。



採用に強い事務所と弱い事務所が二極化


まず前提となるのが、業界全体がインボイス、電子帳簿保存法、クラウド会計、生成AI といった変化が集中している、という点です。多くの税理士事務所がその対応に追われていますが、この対応の成否が「伸びる事務所」と「疲弊する事務所」の分かれ目になりつつあります。

そのためこの対応を進めている「伸びる事務所」では、採用側が求めているスキルも変化してきています。


採用側が求め始めているスキル:

  • freee / マネフォなどクラウド会計の運用・導入支援経験

  • RPAやAIツールを使った業務効率化の提案

  • 単なる“入力・集計”ではなく、「業務フローを設計できる人」


採用メッセージなども、伸びる事務所では「クラウド会計・DXに前向きな人歓迎」や「AI を前提にした働き方にシフトする事務所です」など”今後のスタンス”を打ち出すと相性の良い人材が集まりやすいですね。


同時に傾向として挙げられるのが、ブランディング型事務所に人材が集中していることです。業界分析でも「今後は専門分野や業界に強みを持った事務所が差別化を進めていく」という見立てが強くなっています。

特に、DX・AI 対応を進めている事務所は、IT・スタートアップ支援特化のブランディングと相性がよく、これを打ち出している事務所は応募も集まりやすくなっています。他にも業界特化型、例えば、

・相続、事業承継特化

・医療、介護特化

・建設、不動産、輸出入などの業種特化

など他事務所と差別化を進めている事務所は、比較的応募が多いように感じます。


若手人材は”専門性を高めたい”というニーズが高く、キャリアイメージが描きやすい専門特化型の事務所に対しては比較的前向きに検討をしているようです。

逆に言えば「なんでもやります」という事務所は求職者に伝えるメッセージ性がどうしても弱くなり、キャリアパスが不明瞭になりやすくなります。具体的にどんな仕事に携われて、どんなキャリアを積めるのかを示すなど、求人募集を出す際は別の工夫が必要となってきます。同時に、自社の強みをもっとも発揮できるシーンなどを追加でアピールできるとさらに良いでしょう。


注目したいのは、DXやAI、専門特化やブランディングに加え、人的資本経営」「幹部育成」「教育・評価の仕組み作り」がキーワードとなるシーンが増えたことです。

これまでのように入社後の研修といえばOJT、というのでは求職者は魅力を感じません。人材育成・人的資本への投資がどうなっているのか、がより重要なテーマとなってきています。


・育成カリキュラム、研修制度の整備

・幹部候補、マネージャー層の育成(単なるベテラン担当者で終わらせない仕組みづくり)

・人事評価、給与規定の見直し(属人的評価からの脱却)


こういったポイントがしっかり押さえられているか、が重要となってきます。

こうした人材育成に力を入れる事務所が増えてきているため、「育てる前提で未経験者を採る事務所」と「育成せず経験者だけを取り合う事務所」では、数年後の組織力に大きな差が生じる、と考えられます。


評価軸

採用に強い事務所

採用に弱い事務所

DX・AI対応

クラウド会計・AI活用が進み、業務効率化が実現。求職者に「未来志向の事務所」と伝わる

紙・Excel中心でDXが遅れ、求職者から“古い事務所”と見られがち

働き方の透明性

残業時間・休日・柔軟な働き方を明確に提示。安心して応募できる

働き方が不透明で、応募前に不安を与える

教育・育成体制

研修制度・育成カリキュラム・キャリアパスが整備されている

OJT任せで、成長イメージが湧かない

ブランディング・専門性

相続・医療・ITなど、強みが明確で求職者に刺さる

「なんでもやります」で差別化できず、魅力が伝わらない

採用ページ・情報発信

採用ページ・FAQ・代表メッセージが連動し、働くイメージが湧く

HPが古い・情報が少ない・求人票だけで勝負している



2025年以降に”勝てる”税理士事務所の採用戦略


こうしたトレンドを踏まえ、”勝てる”事務所になるには何が必要なのでしょうか。必要なポイントをまとめて見ました。


1.採用を単発イベントではなく経営テーマにする

「とりあえず1人欲しい」採用からの卒業を目指すべきでしょう。

欠員募集が中心の事務所は、どうしても採用が”場当たり的”になってしまいます。その結果、組織はいびつになり、将来を見据えた組織づくりをすることができません。時間がたつにつれその歪みが他事務所との採用における競争力の差となり、5年も経てば覆すのが難しいほどのハンデを背負うことになります。

少なくても3~5年スパンで組織増を描き、どの層(未経験・中堅・幹部)をどのタイミングで取るかを設計する必要があります。


2.働き方・教育・キャリアパスを”見える化”する

採用は求人票を作ることからスタートします。そこでしっかり求職者に伝えるには言語化が必要。まずは所内の労働環境を総点検し、言語化していく必要があります。

そのうえで、採用ページや求人票に、

  • 1日の流れ

  • 残業実績

  • 研修・育成の仕組み

  • キャリアモデル

などを具体的に書いていくことが重要です。

そのためにも、残業が多いなら減らす取り組みを、研修や育成の仕組み構築、キャリアパスのモデルなども構築していくことが必要です。


3.DX・AI を負担ではなく「売り」に変える

DX対応で忙しい事務所、ではなくAI などを導入することで「負担を軽減し価値の高い仕事ができる事務所」としていくことが重要です。

※TaxOffice-SupportではAI 導入の支援もしておりますので、興味のある方はこちらの無料相談からお問い合わせください


4.HPを見直し、採用ページやFAQを一体設計する

求人サイトに募集を載せれば人が採用できる、という時代は終わりを迎えつつあります。求人サイトを導線に、事務所側でもHPを充実させることではじめて採用につながるという状況になりつつあります。

採用ページとFAQ、代表メッセージ、スタッフ紹介などを連動させ、ここで働くとどうなるか、を立体的に伝える、という仕組みが必要です。



まとめ


採用は、事務所の競争力そのものです。DX・AI・専門特化・人的資本──これらに本気で取り組む事務所だけが、次の5年を勝ち抜きます。“人が集まる事務所”は偶然ではなく、戦略と仕組みの結果です。2026年を、採用力を武器に変える一年にしていきましょう。

TaxOffice-Support では、そのためのサポートサービスを日々充実させています。

この記事を読み興味を持っていただけた方、そして自分たちの事務所に課題があると感じた方、そして自分たちの事務所の採用力がどの位置にあるのか知りたい方は、まずは無料相談より気軽にお問い合わせください。



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