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紙文化の税理士事務所が最初に取り組むべきデジタル化はこれだけ

紙の記録をデジタルに移行しているイメージのイラスト
紙からデジタルへ、言葉にするのは簡単ですが、長年積み重ねてきた資料をデジタル化するのは至難です

最近では、独立・開業したばかりの税理士事務所の所長が、紙ではなくデジタルを前提に業務を組み立てるのが当たり前になってきました。一方で、歴史と実績のある事務所ほど、すぐにデジタルへ移行するのが難しく、現場で苦労しているケースも少なくありません。


以前訪問した埼玉県のある税理士事務所(職員15名規模)は、先代・先々代から受け継がれた事務所でした。業務記録はすべて紙で残されており、3階建ての自社ビルのうち、1階部分がほぼ書類で埋め尽くされていたのです。棚に収まりきらない書類は段ボールに詰められ、壁沿いに積み上げられていました。


「ここで地震が起きたらどうなるんだろう…」そんな不安すら覚える光景でした。


このような事務所で「紙からデジタルへ切り替えよう」とすると、想像以上に大変です。片っ端からスキャンして保存していくとなれば、10人以上で取り組んでも1ヶ月以上かかるでしょう。それだけの時間とコストをかけて一気にデジタル化を進めるのは、現実的には不可能に近いのです。


全国には、こうした“紙文化”の事務所が数多く存在しています。特に危機感を持っているのは、先代から事業承継したばかりの新所長の方々です。

「このままではまずい」「でも、どこから手をつければいいのかわからない」そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。


そこで今回は、紙文化の税理士事務所がデジタル化に着手する際、どこから始めるべきか、どういう順番で進めるべきかについて、多くの事務所を見てきた経験をもとに整理してみました。



1. 紙文化の事務所がデジタル化でつまずく理由


実は、意外に相談・依頼が多いのがこのデジタル化の着手問題です。

事業承継のタイミングや、新たなITツールを導入したことをきっかけに、所内をデジタル化しようと考えたけど、どこから手を付けていいのかわからない。ちょっとやってみたけど、とてもじゃないけど手に負えない。そんな状態の所長から相談を受けることが多いのです。


税理士事務所のデジタル化は、ツールや手法の問題ではなく“人と現場の構造”が原因で止まることが多い、というのが実情です。これまで多くの税理士事務所を見てきた中で、つまずき方には明確なパターンがあります。



失敗パターン①:全部デジタル化しようとして失敗する

紙文化が長く続いた事務所ほど、デジタル化を始める時「どうせやるなら全部デジタル化しよう」と考えがちです。

しかし、これはほぼ確実に失敗します。


いきなりすべてをデジタル化しようとすると、整えなければいけない制度・ルール・仕組みが数多くあります。例えば、


・スキャンのルールを決める

・フォルダの構成を考える

・過去資料をどうするか決める

・ツールの使い方を覚える

・紙とデジタルの混在をどう管理するか考える


これらを一気にやろうとすると、負荷が大きすぎて現場はパンクしてしまいます。

本来、デジタル化は”小さな成功体験の積み重ね”で進むもの。最初から”全部”を目指すと、負荷が大きすぎて続かなくなってしまうのです。



失敗パターン②:スタッフのITリテラシーの差が大きくて失敗する


紙文化の事務所では、スタッフのITスキルに大きな差があります。

Excelが得意な人や新しいツールに抵抗がない人もいます。反対にスマホすら苦手な人や、そもそもパソコン操作に不安がある人も。デジタルが前提となる以前から在籍していた人と、デジタルネイティブと呼ばれる世代のITリテラシーを比べること自体、大きな間違いです。

この差を無視して「全員で同じツールを使おう」とすると、「できる人だけが進み、できない人が置いて行かれる」状態になってしまいます。

結果として、


・あの人が使えないから進まない

・結局、紙の方が早い

・誰も使わなくなった


という状態になります。

デジタル化は”全員ができるレベル”から始めないと、組織として前に進まないのです。



失敗パターン③:紙の方が安心という心理的ハードルを乗り越えられない


私自身、書籍や雑誌の出版社で長く働いていたためわかるのですが、紙には安心感があります。そしてこれは紙文化を続けてきた事務所も同じ。紙が単なる媒体ではなく”安心の象徴”担っているのです。

そのため、


・手元にあると安心

・目で見えると安心

・触れられると安心

・紙のほうが「ちゃんとやっている感」がある


この心理的ハードルは、ツールの便利さでは簡単には崩れません。

特にベテランスタッフほど「紙=正しい」「デジタル=不安」という価値観が強くなります。

だからこそデジタル化は”便利さ”ではなく「安心を損なわない形で始める」ことが重要になります。



失敗パターン④:デジタル化の目的が曖昧で迷走する


紙文化の事務所は、デジタル化自体が目的になってしまうことが多い傾向にあります。しかし本来、デジタル化は何かを便利するためにやるもの。ここが曖昧になってしまうと、迷走してしまいます。


・効率化したいのか

・保管を楽にしたいのか

・共有をスムーズにしたいのか

・ミスを減らしたいのか


この目的が曖昧なままでは、何をデジタル化すればいいのかが決まりません。

その結果、スキャンだけが増えて忙しくなったり、フォルダが散らかって逆に不便になったり、紙とデジタルの二重管理になってしまったりと「誰も得をしないデジタル化」という最悪の事態になってしまいます。



まとめ:つまずく理由は“現場の構造”にある

紙文化の事務所がデジタル化でつまずくのは、ツールの問題ではなく、次の4つが重なるから。

  • 全部やろうとして負荷が大きすぎる

  • スタッフのITリテラシー差が大きい

  • 紙のほうが安心という心理的ハードル

  • デジタル化の目的が曖昧

だからこそ、最初の一歩は「小さく、簡単で、全員ができること」から始めるのが成功の鍵になります。



2.最初に取り組むべきデジタル化は“共有”のデジタル化


紙文化の事務所がデジタル化で成功するかどうかは、「最初の一歩をどこに置くか」でほぼ決まります。

結論から言うと、最初にやるべきは“保管”ではなく “共有” のデジタル化。多くの事務所は「スキャンして保管」から始めてしまうけれど、これは最も効果が出にくく、最も疲れやすいスタート地点です。一方で“共有”のデジタル化は、即効性があり、全員がメリットを感じやすいことが特徴です。



①なぜ”共有”のデジタル化が最初なのか


紙文化の事務所では、日常的にちょっとしたトラブルが起きています。


  • 回覧中の紙がどこにあるかわからない

  • 指示書が机の上で迷子になる

  • メモが付箋だらけで誰のものかわからない

  • 「あの資料、今誰が持ってる?」が頻発

  • 紙を渡すために席を立つ時間が多い


思い当たる人も多いのではないでしょうか。これらはすべて”共有”が問題となって起きていること。つまり”紙の共有”がボトルネックになってしまっているのです。

だからこそ共有をデジタル化すると、この問題が一気に解決し、探す時間・待つ時間・渡す時間を大幅に減らすことができ、効果を実感しやすいのです。

同時に、使用するツールも単純なものが多く、ITリテラシーが多少低くても、問題なく活用できるのも大きなポイントです。



② 最初に導入すべきツールはこの3つだけ


共有で使うツールは、クラウドストレージ、チャットツール、スマホカメラ+簡易スキャンアプリ、の3つだけです。

これだけなので導入コストも非常に低く抑えることができ、すぐに始めることができます。


1. クラウドストレージ(Dropbox / Google Drive / OneDrive)

目的:紙の回覧をなくす

  • 紙で回していた資料を、共有フォルダに置くだけ

  • 最初は「月次」「決算」など1フォルダだけでOK

  • 過去資料の移行は不要(やらないほうがいい)

→ “探す時間”が激減する。


2. チャットツール(Chatwork / Teams / Slack)

目的:紙の指示書・メモをなくす

  • 付箋・メモ・口頭指示が消える

  • 既読・未読がわかるだけでミスが減る

  • 「言った言わない」がなくなる

→ “伝達の抜け漏れ”が減る。


3. スマホカメラ+簡易スキャンアプリ

目的:紙の資料を“とりあえず共有”

  • 高度なスキャンは不要

  • とりあえず写真で共有すれば仕事が進む

  • スキャナの順番待ちがなくなる

→ “共有のスピード”が上がる。



③3つのツールを使うことで起きる変化


たった3つのツールですが、事務所としてこれらを使って共有をデジタル化するだけで、かなり大きな変化が起きます。


  • 紙の回覧が消える

  • 紙の指示書が消える

  • 紙のメモが消える

  • 紙の資料共有が一瞬で終わる

  • 探す時間が減る

  • 待つ時間がなくなる

  • ミスが減る

  • 仕事が止まらなくなる


つまり、紙文化の事務所のストレスの源泉がごっそり消えるのです。



④小さく始めるからこそ、全員がついてくる


紙文化の事務所で大事なのは、“全員ができるレベル”から始めること。


  • スマホで写真を撮る

  • チャットで送る

  • 共有フォルダに置く


これなら、ITが苦手なスタッフでも必ずできるでしょう。

小さな成功体験が積み重なると、「もっと便利にしたい」という声が自然に出てきます。そうなってから次の段階を検討していきます。これがデジタル化が続く事務所の共通点です。



まとめ:最初の一歩は“共有”のデジタル化だけでいい

紙文化の事務所が最初にやるべきことは、スキャンでも、ペーパーレスでも、業務システムでもないのです。

最初にやるべきは、紙の共有をデジタルに置き換えること。


これだけで、仕事のスピードが上がり、ミスが減り、ストレスが減ります。そして、次のデジタル化が自然に進むようになります。



3.成功するデジタル化の順番


多くの事務所を支援してきた経験から言うと、税理士事務所のデジタル化は「どんなツールを導入するか」よりも「どの順番で進めるか」が圧倒的に重要です。

特に、成功している事務所では次の4つのステップで導入を進めているところが多いですね。



①共有のデジタル化


ここまで述べてきたように、紙の共有をデジタル化することは最も効果が出やすいです。

紙で行っていたフローをそのままデジタルに置き換えることが可能で、ストレスになっていた部分を大きく減らすことができます。

最初の一歩としてお勧めしたいステップです。



②コミュニケーションのデジタル化


”共有”のデジタル化の次に取り組みたいのが、”コミュニケーション”のデジタル化です。

紙文化の事務所では、付箋やメモ、口頭指示、紙の指示書などを通して連絡・相談・指示が行われます。そして、これらが混在して、いわゆる”抜け漏れ”が発生してしまいがちです。


ここをチャットツールに置き換えると、

  • 既読・未読がわかる

  • 言った言わないが消える

  • 付箋迷子がなくなる

  • 連絡が一瞬で届く


共有とコミュニケーションがデジタル化されると、事務所全体の“流れ”がスムーズになるのです。



③保管のデジタル化


多くの事務所が最初にやりがちな「スキャンして保管」は、最後でいいのです。

時間がかかるため、次の業務フローのデジタル化と並行で行っても、十分間に合います。

理由はシンプルで、


・過去資料の移行は膨大な手間とコストがかかる

・ルール作りが難しい

・フォルダ構成でもめる

・スキャン作業がたいへん

・効果が出るまで時間がかかる


つまり、最初にやると疲れるだけで効果が出にくいのです。


共有とコミュニケーションがデジタル化されてから、自然と保管もデジタルの方がいいのでは、という声がスタッフから上がってきたら、そのタイミングでやるのが最もスムーズです。



④業務フローのデジタル化


最後に取り組むべきものが、業務フローそのもののデジタル化です。

ここまでくると、かなり様々な選択肢が出てきます。


・ワークフローシステム

・タスク管理ツール

・業務管理ツール

・kintone / Salesforce などの業務基盤


こうしたツールは便利ですが、共有・コミュニケーション・保管が整っていてはじめて機能するものが多いのです。

土台が紙のままなのに、上にシステムだけ載せても機能しません。


3段階目までできている事務所は、業務フローのデジタル化を”自然に”進めることができます。逆に共有やコミュニケーションのデジタル化ができていない事務所は、どんなシステムを入れても定着しません。


デジタル化に成功する事務所の導入順


まとめ:デジタル化は“順番”で決まる

成功する事務所は、共有→コミュニケーション→保管→業務フローの順番でデジタル化を進めることが多いです。この順番は、私が見てきた多くの事務所の中で”最も再現性が高い方法”といえるでしょう。

今は紙文化の事務所でも、この順番なら必ず前に進むことができます。



結論:紙文化の事務所は”最初の一歩”だけで劇的に変わる


税理士事務所のデジタル化は、“全部やらなくていい”。むしろ全部やらない方がいいくらいです。最初の一歩だけで十分に変化は起こすことができます。

その一歩とは、紙の共有をやめて、デジタルで渡すこと。

  • 紙の回覧をやめる

  • スマホで資料を共有する

  • チャットで指示を出す

これだけで、探す時間が減り、待つ時間がなくなり、ミスが減る。

そして、小さな成功体験が積み重なれば、次のステップ(コミュニケーション → 保管 → 業務フロー)も自然に進んでいきます。


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