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総合型ITツールは“経営インフラ”である|税理士事務所が導入で失敗しないための本質

総合型ツールを導入し、急成長する税理士事務所のイラスト
総合型ツールは、他の課題解決型のツールとは異なる考え方で導入を進めなければなりません

前回の記事で様々なツールを税理士事務所で導入する際、検討しなければいけないポイントなどを交え比較していきました。そこで取り上げたツールは機能も限られている一方で、事務所の課題に直接的に効果を発揮する、いわば課題解決型のツールと言えます。

ただ、そこで言及できなかったツールもあります。それがkintone、Salesforce、MyKomonといったものです。前に紹介したFLOW、ZoooUなどが課題解決型とするなら、こちらは様々な機能を持った、総合型ITツールと位置づけることができるでしょう。


つまり、様々なツールが一つひとつの課題に対し、ピンポイントで作用するのに対し、総合型ツールは単なる業務の一部に導入する「IT化」ではなく、事務所の成長ステージ、業務特性、人材構成に合わせて”経営インフラ”として整えることになるのです。

だからこそ導入の成否が”ツールの良し悪し”ではなく、『目的の明確さ』と『運用設計』にあるのです。そこを踏まえておかなければ、総合型ツールの導入はうまくいかないのです。



総合型ITツールの特徴


総合型ITツールを検討するためにも、まずは簡単にその特徴を見てみましょう。


→総合型ITツールとは

顧客管理・タスク管理・期限管理・書類管理を一元化し、属人化を減らす


様々な機能を持ち、うまく活用できれば事務所全体の最適化を行うことができます。一方で、うまく活用できなければコストだけがかさみ、使い勝手の悪いものになってしまいます。


税理士事務所で得られる主な効果

・新人教育の標準化

業務フローが可視化されるため、OJTの負担が軽減される。

・事務所の型を作れる

事務所独自の運用ルールをツールに落とし込み、再現性のある運営が可能になる。

・事務所の効率化と生産性の向上

多くのツールを効率的に連動させることで、生産性を大きく高めることができる。


このようにITツールの導入を検討する事務所にとっては、非常に魅力的なメリットばかりなのですが、やはり適性が問われます。特に事務所の規模は重要です。

MyKomonであれば、適性規模は5~30名程度、kintoneであれば15~100名規模、Salesforceであれば50名以上の税理士事務所でなければその真価を発揮できません。特にSalesforceは専任のシステム担当者がいないと、なかなか使いこなすのは難しいですね。


  • 小規模 → MyKomon

  • 中規模 → kintone

  • 大規模 → Salesforce


では次に、この3つの代表的な総合型ツールを比較してみましょう。



税理士事務所向け:kintone / MyKomon / Salesforce 比較


🔵 kintone(キントーン)

柔軟性が高く、業務標準化の基盤を作るツール。

特徴

  • 顧問先管理・業務管理・書類管理などを“アプリ”として自由に構築

  • 属人化の解消に強い

  • プラグインや外部連携で税務特化に進化

  • 小〜大規模まで対応可能

強み

  • カスタマイズ性が圧倒的

  • 顧問先カルテや月次・年次業務の見える化が作りやすい

  • 事務所の成長に合わせて拡張できる

弱み

  • 設計力が必要

  • 作り込みすぎると複雑化する

向いている事務所

  • 業務標準化を進めたい

  • 情報が散乱している

  • 自分たちの業務に合わせた仕組みを作りたい



MyKomon(マイコモン)

税理士事務所の“総合業務支援ツール”。

特徴

  • 顧問先管理・書類管理・申告管理・請求管理など“全部入り”

  • 研修・マニュアルなど教育コンテンツも豊富

  • 税理士事務所向けに最適化されたUI

強み

  • 導入が比較的簡単

  • 税務業務に必要な機能が揃っている

  • 顧問先ポータルとしても使える

弱み

  • カスタマイズ性は低い

  • 事務所の業務フローに完全フィットさせるのは難しい

向いている事務所

  • まずは“業務の型”を整えたい

  • ツールを使いこなす自信がない

  • 税務特化のパッケージを使いたい


 Salesforce(セールスフォース)

高度な顧客管理・業務自動化・分析までできる“エンタープライズ級”。

特徴

  • 顧客管理(CRM)として世界トップクラス

  • 顧問契約に紐づくタスク自動生成

  • freee/MF/弥生などとAPI連携可能

  • AI(Agentforce)で顧客分析・提案自動化も可能

強み

  • 顧客管理・契約管理・業務管理を統合できる

  • 大規模事務所でも耐えられる拡張性

  • データ分析・採算管理が強力

  • 契約管理、顧問料の自動計算、顧問先のステータス管理など管理が強い

弱み

  • 導入コストが高い

  • 設計・運用に専門知識が必要

  • 小規模事務所にはオーバースペック

向いている事務所

  • 中〜大規模で業務を完全にシステム化したい

  • 顧問契約・採算管理・進捗管理を統合したい

  • AI活用や高度な自動化を進めたい


 比較表(税理士事務所向け)


kintone

MyKomon

Salesforce

カスタマイズ性

◎◎

導入のしやすさ

税務特化度

○(作れば強い)

◎(最初から強い)

△(設計次第)

顧客管理

◎◎

業務管理

書類管理

採算管理

△(作れば可)

拡張性

△△

◎◎

コスト

低〜中

向いている規模

小〜大

小〜中

中〜大


特に、コストパフォーマンスという意味では大きな差が出ます。


kintone

月額費用(1ユーザー)

  • ライトコース:1,500円前後

  • スタンダード:1,800円前後

税理士事務所は「スタンダード」がほぼ必須

10名で利用する場合、月額1万8000円。ただ、導入を自分ちだけでやるのは難しく、外部のエンジニアなどに依頼すると30万円~150万円ほどかかってしまいます。実際、TaxOffice-Supportでkintoneの導入を依頼された際は、その制度設計だけで25万円ほどの料金を請求させていただき、その他に導入コストがかかったので、総額60~70万円はかかっていたと思います。

ただ”費用が最も読みやすい”ため、小規模~中規模の事務所でも、がんばれば導入できるツールといえるでしょう。


MyKomon

月額費用(1ユーザー)

  • 4,000〜7,000円前後

    (グループウェア+業務管理+ナレッジ+研修コンテンツ込み)

MyKomonは料金非公開のため、ヒアリングベースの相場観でお伝えするしかありません。

10名で利用する場合、月額4~7万円、年額だと48~84万円とkintoneに比べると高いと感じるかもしれません。しかし税務特化のパッケージ込みなので、コストとしては妥当性は高いと思います。


Salesforce

月額費用(1ユーザー)

  • Essentials:3,000円前後

  • Professional:9,000円前後

  • Enterprise:18,000円前後

税理士事務所で業務管理までやるなら Professional 以上が必須


3つのうち最も高額だが、昨日は圧倒的。10名で利用する場合、9~18万円だが、導入費用がかなり高くつきます。単純な顧客管理や契約管理といったマネジメントだけに機能を絞っても50万円が最低ラインでしょうか。ここに自動化やAPI連携、高度なCRMなども加えると、あっという間に数百万円は超えます。

一般的な事務所での導入事例を見てみると、初期構築費用で80~200万円、月額10~20万円、というのが一般的ですね。



総合型ツールのさらなる可能性


まず最初にお伝えしなければならないのが、中小税理士事務所ではSalesforceは宝の持ち腐れになりやすいです。さらに導入までのハードルも高いですね。

制度設計が非常に重要な意味を持つので、導入時の情報整理だけでかなりの時間とコストがかかります。また、Salesforce単体では会計データを扱えません。そのため、freeeとSalesforce、などAPI連携を使って請求・入金情報を同期させるなどの仕組みづくりが必要となります。

これを行うには、ある程度の規模を持つコンサルタント会社などが必須となります。実際、私のところにもSalesforceを導入したい、という相談が寄せられることがあります。その際は残念ですが、一般的な情報をお伝えするだけでサポートまで提供することはできません。


それに対し、kintoneMyKomonは、いくつかの注意点をしっかり踏まえておけば、中小税理士事務所でもかなり使い勝手の良いツールとなります。


kintone導入時は“作りすぎない”ことが最大のコツ

kintone で失敗する典型例はこれです

  • 最初から複雑なアプリを作る

  • フィールドを詰め込みすぎる

  • 運用ルールが曖昧

  • スタッフ教育が不足


成功するためには

  • 最初は「顧問先管理アプリ」だけ

  • 次に「月次業務アプリ」

  • 慣れてきたら「年次」「請求」「書類管理」へ拡張

→ 小さく始めて、確実に定着させる。



それに対し、MyKomon を導入するときの注意点「全部入り」ゆえに、最初から全機能を使おうとしないということ

MyKomonは以下のように機能が多いです。

  • 顧問先管理

  • 書類管理

  • 申告書管理

  • タスク管理

  • 請求管理

  • マニュアル・ナレッジ

  • 研修・教育コンテンツ

便利な反面、最初からフル活用しようとすると必ず失敗します。

対策としては、

  • 最初は「顧問先管理+書類管理」など2〜3機能に絞る

  • スタッフの習熟度に合わせて段階的に拡張する


このように見てみると、それぞれ特徴は違うものの、注意すべき点は一つです。

全ての機能を使おうとすると失敗する、ということということ。

自分たちの事務所の状況をしっかり把握し、順次機能を拡大させていくことが導入のポイントだということがわかります。


さらに言ってしまうと、実はkintone × MyKomonの併用が最適解になるケースも多いのです。

その理由は以下の通り。


役割がまったく違うから競合しない

  • MyKomon → 税務特化の“パッケージ”

  • kintone → 自由に作れる“業務基盤”

この2つは思想が違うので、「どっちかを選ばないといけない」という関係ではありません。


MyKomonは“型”が強い、kintoneは“現場に合わせられる”

MyKomonは税務業務に必要な機能が揃っている反面、事務所独自の業務フローや管理項目を反映しづらい

一方で kintone は顧問先カルテ、月次進捗、決算管理、請求管理などを自由に作れる

だからこそ、MyKomonでカバーできない“事務所独自の管理”をkintoneで補完するという使い方が非常に相性が良い。


段階的なIT導入がしやすい

  • まず MyKomon で“最低限の型”を整える

  • 次に kintone で“事務所独自の業務設計”を作る


それぞれの特徴を持った二重構造にすることで、

「標準化 → 見える化 → 自動化」

の流れを作りやすいのです。

イメージとしては以下のような感じでしょうか。


┌───────────────────────┐

kintone × MyKomon 役割分担図

└───────────────────────┘


【MyKomon:税務業務の“型”を提供する領域】

──────────────────────────────

■ 顧問先基本情報(標準項目)

■ 書類管理(引き渡し・保管)

■ 申告書管理(法人税・所得税・消費税)

■ 請求管理(顧問料・スポット)

■ 顧問先ポータル(資料授受)

■ 研修・ナレッジ(教育コンテンツ)

■ 標準化された税務フロー


→ 「税務業務の標準機能」はMyKomonに任せる

→ 事務所の“最低限の型”を整える役割



【kintone:事務所独自の“運用”を作る領域】

──────────────────────────────

■ 顧問先カルテ(独自項目・リスク情報)

■ 月次進捗管理(資料回収〜月次報告)

■ 決算進捗管理(工程管理・期限管理)

■ タスク管理(柔軟なワークフロー)

■ 工数管理(簡易版)

■ 社内DB(管理台帳・チェックリスト)

■ 情報の一元化(Excelの置き換え)


→ 「事務所独自の管理・運用」はkintoneで構築

→ 属人化の解消・見える化・標準化を実現


【併用のイメージ】

──────────────────────────────

MyKomon:税務の“標準業務”を支える基盤

kintone:事務所の“独自業務”を支える基盤


  ▼ 役割が重ならないので相性が良い

  ▼ MyKomonの弱い部分をkintoneが補完

  ▼ kintoneの作り込みすぎ問題をMyKomonが抑制


──────────────────────────────



まとめ:


総合型ツールは、事務所の成長ステージによって最適解が変わります。

  • 5〜30名:MyKomon(型を整える)

  • 15〜100名:kintone(標準化・見える化)

  • 50名以上:Salesforce(統合・自動化・分析)

つまり、「どのツールが優れているか」ではなく、「事務所がどのステージにいるか」で選ぶべきなのです。

総合型ツールは“経営インフラ”になるため、事務所の未来像に合った選択が必要になります。言うならば導入すれば勝手に事務所が変わるものではありません。

成功する事務所には共通点があります。


  • 目的が明確である

  • 業務フローが整理されている

  • 運用ルールが定義されている

  • ツールを使いこなす体制がある


逆に言えば、これらが整っていない状態で導入すると、どんな優れたツールでも“宝の持ち腐れ”になってしまいます。だからこそ、総合型ツールの導入は「ツール選び」ではなく「導入設計」こそが成功の鍵」なのです。


こうした課題の抽出、業務フローの整理、運用ルールの定着などは、総合型ツールの導入だけでなく様々な場面で事務所の発展の基礎となるもの。ここをしっかり整えることこそ、所長の役割といえるでしょう。

もちろん総合型ツールの導入についても相談に乗りますし、こうした事務所の基盤整理は私たち、TaxOffice-Supportの得意とする分野です。未来の事務所を作るため、一歩を踏み出したい、そんな方はまずは無料相談からお声をおかけください。



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