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税理士事務所の未来は”所長の情報収集力”で変わる~押さえるべき5つの情報領域とは~

情報収集をしている税理士のイラスト
税理士にとって情報収集は生命線です

税理士事務所の所長とお話しする機会は、仕事柄とても多くあります。皆さんそれぞれに豊富な知識をお持ちで、特に税務や顧客対応に関しては非常に高い見識を感じます。

ただ一方で、知識の“偏り”がある方も一定数いらっしゃるのが気になるところです。たとえば、税務には詳しくても、ITや業務改善の知識がほとんどない。スタッフ育成や採用についても「何から手をつければいいのか分からない」と悩まれている方も少なくありません。


その結果、こちらからの提案に対して「それが正しいのか判断できない」と戸惑われる場面もあります。こうした事務所では、どうしても対応が後手に回り、成長が頭打ちになりやすいのが実情です。


つまり、所長の情報収集力は、事務所の成長力に直結しているのです。だからこそ、税務以外の領域にもアンテナを張り、情報を集め、考えを整理し、経営判断につなげていく必要があります。

そこで今回は、「税理士事務所の所長がやるべき情報収集とは何か?」について、実際の現場経験をもとに整理してみたいと思います。



1.なぜ所長の情報収集が“事務所の未来”を左右するのか


20~30年前、税理士事務所は個人経営のところが多く、所長が一人いてあとアシスタントが1~2名、というパターンがほとんどでした。そうした事務所では、所長は何より『専門家』であり『先生』であることが要求されていました。

そのため所長に必要な情報収集と言えば、税務や税に関する法改正を追うだけでよかったのです。


しかし近年では、それだけでは足りない状況になってきました。

事務所は組織として運営する必要があります。その分、所長は様々な判断を下す必要が出てきました。そのためには税務についてはもちろん、スタッフの育成、採用、IT、顧客対応など様々な情報を集めたうえでなければ正しい判断を下せなくなってきているのです。

そのため情報収集が弱い所長ほど”場当たり対応”になってしまい、事務所を運営していて直面する課題が根本から解決されることはありません。それが積み重なり、何年もかけて一気に問題が噴出する、ということもよくありますね。


逆に、情報収集が強い所長は”判断の質”が安定します。

こうした事務所は問題が起きても的確な判断を下すことができるので、課題を将来に残しません。結果、安定的な経営を続けることができるのです。


税理士事務所の所長にとって、情報収集とはそれほど重要な”仕事”です。

しかし、日々忙しくしている所長は、なかなか情報収集にまで力を入れることができない、という方も多いでしょう。そこでまず必要なのは「情報収集は経営の仕事」という前提をしっかり認識することです。

そのうえで、所長はどのような情報を集めるべきか、考えていきましょう。



2.所長が集めるべき情報の“5つの領域”


情報収集といっても、ただニュースを眺めたり、SNSをチェックするだけでは意味がありません。税理士事務所の所長が本当に集めるべき情報は、5つの領域に分かれています。

この全体像を意識することで、偏りなく、事務所の成長に直結する情報を集められるようになります。


① 税務・法改正(専門領域)

これは言うまでもなく、所長としての基本領域です。ただし、ここで重要なのは「深さ」よりも「早さ」。法改正や制度変更は、顧問先への対応スピードが問われる場面が多く、“いち早くキャッチして、現場に落とす”ことが求められます。


② 業務改善・ITツール(効率化領域)

業務効率化やIT導入に関する情報は、事務所の生産性を左右します。ただし、ツールの良し悪しだけでなく、“事務所の成熟度やスタッフのITリテラシーに合わせて選ぶ”視点が必要です。

他事務所の事例や、実際に使ってみた感想など、一次情報が特に価値を持ちます。


③ 採用・人材育成(組織領域)

人材に関する情報は、今や税務以上に重要になりつつあります。若手の価値観は年々変化しており、求人市場の動向や教育のトレンドを知らないと、「人が採用できない」「育たない」問題に直面します。

他事務所の採用成功事例や、若手スタッフのリアルな声は、非常に参考になります。


④ 顧客ニーズ・業界動向(マーケット領域)

顧問先の業界がどう変化しているか、どんな課題を抱えているか。これを把握している所長は、サービスの質が圧倒的に高いです。

「顧問先との雑談」や「業界ニュース」は、実は最も価値のある情報源。ここを拾えるかどうかで、事務所の信頼度が変わります。


⑤ 経営・マネジメント(所長自身の成長領域)

最後に、所長自身の経営力・マネジメント力に関する情報。ここを軽視していると、事務所はどこかで止まります。

他業界の成功事例、経営者向けの書籍、士業の勉強会など、「税務以外の学び」こそが、事務所の未来をつくる土台になります。


所長が集めるべき情報の5つの領域

この5領域を意識して情報収集をすることで、「何を判断すべきか」「何を変えるべきか」が自然と見えてきます。

次のパートでは、こうした情報をどう集め、どう活かすかについて、さらに具体的に掘り下げていきます。



3.情報収集の”質”を上げる3つの原則


ただ、情報収集は大切だ、といっても闇雲に集めるだけでは意味がありません。

情報収集は「量」よりも「質」が重要です。集めるだけでしたら誰でもできますし、ただ眺めているだけでは事務所の経営には活かせません。ここでは、所長が押さえておくべき情報収集の質を高める3つの原則 を整理します。


原則1:一次情報を優先する

まず大切なのは、一次情報を最優先で取りにいく姿勢です。SNSやネット上の噂話は、どうしても情報が歪んでいたり、誰かの主観が混ざっていたりします。

それよりも価値が高いのは、

  • 国税庁や省庁などの公式情報

  • 実際にツールを使っている事務所の声

  • スタッフの現場感

  • そして何より 顧問先との会話

顧問先の悩みや変化は、最強の一次情報です。ここを拾える所長は、サービスの質が自然と高くなります。


原則2:情報を“比較”して判断する

次に重要なのは、必ず比較すること。1つの情報だけを見て判断すると、どうしても偏りが生まれます。

たとえばITツールなら、

  • 複数のツールを比較する

  • 他事務所の導入事例を知る

  • メーカーの説明だけで判断しない

採用や育成でも同じで、「誰かがこう言っていた」だけで飛びつくのは危険です。

比較することで、“自分の事務所に合うかどうか”という視点が持てるようになります。


原則3:情報を“意思決定”につなげる

最後に、情報収集の目的は意思決定に使うこと です。どれだけ良い情報を集めても、「へぇ、そうなんだ」で終わってしまえば価値はゼロ。

大切なのは、

  • この情報を踏まえて何を変えるのか

  • どの業務に活かすのか

  • どんな改善につなげるのか

ここまで落とし込んで初めて、情報は“経営の材料”になります。


この3つの原則を意識するだけで、情報収集は「ただのインプット」から「事務所を動かす力」へと変わります。



4.所長がやるべき具体的な情報収集ルート


情報収集の重要性がわかっても、「具体的にどこから集めればいいのか」がわからないと、行動につながりません。

そこで、ここでは税理士事務所の所長が押さえておくべき”実用的な情報源”を5つの領域ごとに整理していきましょう。


● 税務・法改正(専門領域)

税務の情報は、スピードと正確性が命です。特に以下のルートは、一次情報として信頼度が高く、実務に直結します。

  • 国税庁・財務省などの公式発表

  • 税理士会の研修・資料

  • 信頼できる専門家のメルマガや解説

  • 税務系出版社の速報

「深く読み込む」よりも、まずは“早く知る”ことが重要です。


● 業務改善・ITツール(効率化領域)

ITや業務改善の情報は、事務所の生産性を大きく左右します。ただし、メーカーの説明だけでは偏るため、複数の視点から集めることが大切です。

  • ITツールの比較サイト

  • システム会社のセミナー・ウェビナー

  • 実際に導入している事務所の声(一次情報)

  • 税務系コミュニティや勉強会

「誰が使っているか」「どんな規模の事務所に合うか」まで把握できると判断が早くなります。


● 採用・人材育成(組織領域)

採用難が続く今、ここを押さえている所長は強いです。若手の価値観や市場の変化を知ることで、採用・育成の失敗を防げます。

  • 求人媒体の動向(Indeed、エン転職など)

  • 若手スタッフのリアルな声

  • 他事務所の採用成功事例

  • 人材育成に関する書籍・研修

「今の若手は何を求めているのか」を理解するだけで、採用の質が大きく変わります。


● 顧客ニーズ・業界動向(マーケット領域)

顧問先の変化をつかむことは、サービス品質の向上に直結します。実は、ここが最も“現場でしか取れない情報”です。

  • 顧問先との雑談・定期面談

  • 顧客アンケート

  • 顧問先の業界ニュース(建設・飲食・医療など)

  • 商工会議所や業界団体の情報

「顧問先の変化に気づける所長」は、自然と信頼される存在になります。


● 経営・マネジメント(所長自身の成長領域)

最後に、所長自身の経営力を高めるための情報源です。ここを怠ると、事務所の成長がどこかで止まります。

  • 経営者向けの書籍

  • 士業・コンサルの勉強会

  • 他業界の成功事例

  • 経営者コミュニティ

税務以外の学びが、事務所の未来をつくる“土台”になります。


まとめ:情報源を広げるほど、判断の質が上がる

情報収集は「知識を増やすため」ではなく、事務所の経営判断を正しくするための材料集めです。

5つの領域を意識して情報を集めることで、「何を変えるべきか」「どこに投資すべきか」が自然と見えてきます。



5.情報収集を習慣化する仕組み


情報収集は「気が向いたときにやる」では続きません。特に税理士事務所の所長は日々の業務に追われやすく、意識して仕組み化しない限り、情報収集は後回しになってしまいます。

そこで、無理なく続けられる“習慣化の仕組み”をいくつか紹介します。


①1日10分の“固定枠”をつくる

まずは、情報収集の時間を”予定として入れる”ことが大切です。

私の知っている情報収集に強い税理士事務所の所長は、毎朝、他のスタッフより少し早く出社して、最初の10分をこの情報収集の時間に充てていますね。

短時間でも、毎日続けることで情報の鮮度が保たれます。「時間ができたらやる」ではなく、“時間を決めてやる”が習慣化の第一歩です。


②スタッフから情報を吸い上げる仕組みをつくる

所長がすべての情報を自分で集める必要はありません。むしろ、スタッフのほうが現場の変化に敏感なことも多いです。特に、若いスタッフは流行のトレンドなどにも敏感です。

週に1度、”気づきミーティング”を行ったり、チャットツールに”情報共有チャンネル”を作るなど、仕組み化することで、自然と情報が集まる仕組みを作るとさらに強くなります。


③顧問先との会話を“情報源”として扱う

顧問先との雑談は、最強の一次情報。

ここを拾える所長は、例外なく”強い”ですね。

業界の変化や経営者の悩み、新しい制度への反応、現場のリアルな課題……、こうしたものはネットでは絶対に拾えない一次情報です。

雑談=情報収集、と捉えるだけで日々の会話の質が変わります。


④情報を“メモ化”して蓄積する

せっかく集めた情報も、記録しなければすぐに流れてしまいます。

必要なのは”後で見返せる形にすること”です。

スマホのメモ機能やチャットツール上に自分用のメモチャンネルを作るなども良いでしょう。また、紙のノートや手帳でもかまいません。

蓄積されるほど、判断材料は増えていきます。


⑤毎月1回の“振り返りタイム”を設ける

情報収集は集めて終わりではありません。

月に1回でいいので、振り返りを行うと効果が倍増します。

メモ化した情報を見返しながら、今月得た情報で役に立ったものは何か、事務所の改善につながりそうな情報はどれか、などを振り返るだけで情報収集が”経営の武器”に変わります。


まとめ:仕組み化すれば、情報収集は負担ではなく“資産”になる

情報収集は、所長の判断力を支える最も重要な仕事の一つです。しかし、気合や根性で続けるものではありません。仕組み化することで、自然と続き、自然と成果につながるようになります。



6.情報収集が強い所長の“共通点”


情報収集に強い所長は、多くの場合以下のような特徴があります。

  • 判断が早い

  • ツール選定がうまい

  • スタッフの悩みに気づく

  • 顧問先の変化に敏感

  • 事務所の方向性がブレない


こうした所長たちには共通点があります。

それは特別な才能ではなく、日々の姿勢や習慣の積み重ねです。

ここでは、実際に多くの所長と接してきた経験から見えてきた“共通点”をまとめます。


● 1. アンテナが広く、偏りがない

税務だけでなく、

  • IT

  • 採用

  • 顧客ニーズ

  • 経営

といった複数の領域にアンテナを張っています。

「自分は税務の専門家だから」と領域を狭めず、事務所経営に必要な情報はすべて対象と考えているのが特徴です。


● 2. 一次情報を大切にする

情報収集が強い所長ほど、

  • 顧問先の声

  • スタッフの現場感

  • 実際に使っている事務所の事例

といった一次情報を重視します。

ネットの噂やSNSの意見より、“現場のリアル”を優先する姿勢が判断の質を高めています。


● 3. 情報を比較し、自分の事務所に合う形で判断する

「Aが良いらしい」「Bが流行っている」といった単発の情報に飛びつきません。

  • 複数のツールを比較する

  • 他事務所の規模や文化を踏まえて判断する

  • メーカーの説明を鵜呑みにしない

こうした“比較の視点”があるため、導入の失敗が少なく、改善の精度が高いのが特徴です。


● 4. 情報を“行動”につなげるのが早い

情報収集が強い所長は、「知ったらすぐ動く」傾向があります。

  • 小さく試す

  • スタッフに共有する

  • 顧問先に提案してみる

  • 業務フローに反映する

情報を“知識”で終わらせず、意思決定 → 行動 → 改善という流れに素早くつなげる力があります。


● 5. 情報収集を“仕組み”として持っている

強い所長は、情報収集を気合でやっていません。習慣化するための仕組みを持っています。

  • 毎日の固定時間

  • スタッフからの情報吸い上げ

  • 顧問先との雑談を情報源として扱う

  • メモやノートで蓄積する

こうした仕組みがあるからこそ、忙しくても情報が自然と集まる状態になっています。


まとめ:情報収集が強い所長は“判断がブレない”


情報収集が強い所長は、判断が早く、判断が正確で、判断がブレません

結果として、事務所の改善スピードが上がり、スタッフの安心感も高まり、顧問先からの信頼も厚くなります。

つまり、情報収集力は、所長の経営力そのものと言っても過言ではありません。




7.結論:情報収集は”所長の経営力”そのもの


税理士事務所の成長は、所長の判断によって大きく左右されます。そして、その判断の質を決めるのが 情報収集力 です。

税務の知識だけでは、これからの事務所経営は立ち行きません。IT、採用、顧客ニーズ、業界動向、そして経営そのもの。これらをバランスよく集め、比較し、一次情報を大切にしながら、「何を変えるか」まで落とし込むことができる所長 が、強い事務所をつくります。

情報収集は、特別な才能ではなく“習慣”です。1日10分でも続ければ、判断の材料は確実に増え、事務所の改善スピードも、スタッフの安心感も、顧問先からの信頼も変わっていきます。


今日からできる小さな一歩として、

  • 情報収集の時間を決める

  • 顧問先との会話を意識して聞く

  • スタッフからの声を拾う

このあたりから始めるだけでも、事務所の未来は確実に変わります。


情報を集め、整理し、行動につなげる。その積み重ねこそが、所長としての経営力を育て、事務所を次のステージへと導いていきます。


余談ですが、情報収集に強い所長の特徴として付け加えるなら、フットワークの軽さですね。何かちょっと気になることがあると、すぐに連絡をしてきて、私から情報を得ようとする人が多いです。

「これってどうなってるの?」

「この問題だけどどう思う?」

など第三者である私を徹底的に活用しようとします。

その貪欲さが情報力を高め、経営の質を高めているのかもしれません。


今後、この記事でも多くの所長に情報を提供していきたいと考えていますが、読者である皆さんにも有効に活用していただきたいと考えています。

ご意見やご質問はもちろん、情報収集という意味でもぜひご活用いただきたいですね。


もちろんこの記事を読んで、

「うちの事務所はどこから手をつければいいのか」「IT・採用・業務改善の情報が整理しきれない」「自分の判断が正しいのか不安になることがある」そんな思いが少しでもあれば、一度ご相談ください。


初回の相談は無料です。雑談レベルでも構いませんし、具体的な課題がなくても大丈夫です。「話してみたら頭が整理できた」と言っていただくことが多いです。

事務所の未来をつくるのは、所長の一つひとつの判断です。その判断の質を上げるお手伝いができれば嬉しいです。



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