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- 「まだ大丈夫」は危険。税理士事務所がAI導入で分断される時代が

AI導入を急いでいるイメージのイラスト
税理士事務所はAIの導入を急げば急いだ分、大きなアドバンテージが生まれます

前日、税理士事務所の業界紙にこんな記事が載っていました。

「クラウド徹底活用」


近年、企業の多くはクラウドの活用は当たり前となっています。

税理士事務所でも多くがクラウドを導入することは当たり前となっている一方で、今でもスタンドアローン状態のPCで作業をしている事務所もあります。freeeやMFだけが突出していた状態から、主要会計ソフトの多くがクラウド対応となり、クラウド会計の導入が一通り落ち着いた、と考えていましたが私の認識はまだ甘かったようです。


一般的に多くの業界では、一つのリーディングカンパニーが最新のシステムを導入すると、それに遅れまいと多くの企業が追随。一気にITツールなどが進化します。

しかし税務会計業界は、こうした動きが非常に弱く、最新のITでどんどん成長している事務所がある一方で、十年以上前のITリテラシーの事務所が残っていることもあるのです。


しかし世の中の流れは待ってはくれません。

クラウド会計は導入が少々遅れても、そこまで大きな差はつきませんでした。しかし現在起きているAIは、導入時期によって大きな”格差”が生じます。早く導入した事務所と、遅れてしまった事務所では、その差は簡単に覆すことができないのです。


AI導入はできるだけ急ぐべき、ただししっかりとした順番で。

それが私の結論です。

そこで今回は、AI導入は急いで進めた方が良い理由とその対策について考えていきたいと思います。



1.いま、税理士業界で何が起きているのか


実は2~3年前なら、ここまでAIについて勧めませんでした。 しかし、昨年から今年にかけて、AI技術が大きく進歩。そしてその影響が税務会計業界にも押し寄せているのです。

実際、税理士事務所の現場では、徐々に空気が変わり始めました。AIの進化が”便利なツールが増えた”というレベルを超え、”業務フローそのものを再設計しなければ追いつかない段階”に入ったからです。


かつては「AIを導入するかどうか」が議論の中心でした。

しかし今は、そんな悠長な選択肢はありません。すでに”どのレベルで使いこなすか”が事務所の競争力を決定づけるフェーズに突入しています。

実際、同じ規模・同じ業務量の事務所でも、AIを前提に業務を組みなおしている事務所と、従来のやり方を続けている事務所では、生産性に2倍以上の差が生まれ始めています。


これは誇張ではなく、現場で様々な事務所を見ていると”静かに、しかし確実に”広がっている格差です。


そしてこの変化は、決して特別な事務所だけの話ではありません。

むしろ”どの事務所にも等しく訪れる”構造変化です。


『うちはまだ大丈夫』

『うちは規模が小さいから関係ない』

そんな言葉が、気づいたときには取り返しのつかない遅れにつながりかねません。



2.税理士事務所がAI導入を急ぐべき6つの理由


では具体的に、どのような理由があって、AI導入を急ぐべきなのでしょうか。

それはAIが多くの税理士事務所が抱えている構造的な課題を、広く解決することができるからです。その課題とAIがどのような変化をもたらすのか、について一つひとつ見ていきましょう。


①業務の40〜60%がAIの得意領域に直撃している


税理士事務所の主要業務の多くは、AIが最も得意とする「大量処理」「パターン認識」「文章生成」に分類されます。具体的には、

  • 記帳・仕訳案の作成

  • チェック作業

  • 資料整理・分類

  • メール文・説明文の下書き

  • 顧客対応の一次返答


こうした領域は、まさにAIの強みと重なります。

これらを従来の“人が前提”の業務フローのまま続けると、後からAIを組み込む際に大規模な手戻りが発生します。逆に、今の段階でAI前提の業務設計に切り替えておけば、後の効率化がスムーズに進みます。



②採用難が限界に達している


税理士業界は、慢性的な人材不足が続いています。

「人が採れない → 既存メンバーの負荷が増える → 離職 → さらに採れない」

という悪循環に陥っている事務所も少なくありません。

AIは“人の代わり”ではなく、「人がやるべき仕事に集中できるようにする増幅装置」です。

単純作業をAIに任せることで、職員は判断業務・顧客対応・提案業務に時間を使えるようになり、離職防止にもつながります。



③顧客の期待値が変わり始めている


顧客側もAIの恩恵を受け始めており、

  • レスポンスの速さ

  • 説明のわかりやすさ

  • 資料の整い方

が“当たり前の基準”として上がっています。


AIを活用している事務所は、

  • 回答スピードが速い

  • 文書の質が高い

  • 情報提供が丁寧

といった形で顧客満足度が自然に向上します。

一方、AIを使わない事務所は、顧客の期待値に追いつけず評価が下がるリスクが高まっています。



④競合事務所が静かに導入を進めている


AI導入を公言する事務所は多くありませんが、裏側では

  • 月次業務の一部をAIに置き換えている

  • マニュアル作成や顧客説明文をAIで効率化している

  • チェック工程にAIを組み込んでいる

といった動きが着実に広がっています。


実際、私のところにもAI導入についての相談が増えており、今年の確定申告が明けたら一部だけでも導入したい、という話になっているところもあります。

恐ろしいのは、差がついたことに気づくのが遅れること。「気づいたら競合が2倍のスピードで仕事を回していた」という状況はすぐそこの現実になりつつあるのです。



⑤早く始めた事務所ほど“学習コスト”が低い


AIは“慣れ”がすべてです。ツールの理解、プロンプトの工夫、業務への組み込み方など、習熟にはどうしても時間が必要です。

だからこそ、早く始めた事務所ほど、圧倒的な差をつけることができます


事務所全体でAIを使いこなすには、

  • 職員の学習期間

  • 業務フローの調整

  • ルール整備

など、段階的な取り組みが不可欠です。

今動き出すことで、未来の“当たり前”にスムーズに適応できます。



⑥補助金活用が前提


AIに限らずITツールを導入する際は、小さく始めるのがセオリーです。いきなり全面導入しても使いこなせず、思ったような効果がない、として使わなくなってしまうからです。

もちろんAIも最初はスモールスタートをお勧めしています。ただし、システム的には自分たちの事務所に適切なものより一段階上のものをお勧めしています。


その理由は補助金です。

2026年のデジタル化・AI導入補助金はかなりの予算が確保されています。

小規模なシステムを導入するたびに補助金を申請するわけにはいきません。ある程度の価格のシステムを導入したほうが効率的かつコスト面でも有利なのです。

つまり、AIの導入は補助金の活用が前提となるのです。


しかし、2025年度は申請件数が大幅に増え、審査が厳格化したことで、採択率も低下しています。

回次

発表日

申請数

採択数

採択率

第1回

2025年6月18日

2,979件

1,511件

50.7%

第2回

2025年7月24日

3,516件

1,447件

41.1%

第3回

2025年9月2日

3,856件

1,174件

30.4%


実際、申請件数は2024年で6,823件だったのに対し、2025年は10,351件、そして2026年はさらなる増加が見込まれています。

つまり後になれば後になるだけ、不利な状況が生まれてしまうのです。



まとめ:税理士事務所にとってAI導入は急務。遅れれば遅れた分、不利な状況に追い込まれてしまいます。



3.焦るのと急ぐのは違う


AI導入は急いだほうが有利ですが、焦って何でもいいからAI導入、というのはやはり問題があります。これは実際に昨年、ある事務所で起きた悲劇(喜劇?)です。

AI導入の失敗例として参考になる部分もあるので、紹介させていただきます。


1.最初は所長の問題意識から始まった

この事務所は東京都下、10名の小規模から中規模に差し掛かったくらいの事務所です。

最初は所長が「AIを使わないと時代に取り残されるらしい」と取引先から聞いたことが始まりだったといいます。そこでまずは「ChatGPT?とりあえず契約しとこう」となったのです。

つまり、目的よりも”導入”が優先されてしまったのです。


2.勧められるまま高額なツールのフルセットを導入

AI導入をしたことで気を良くした所長は、それをHPで喧伝し、アピールしたところあるITコンサルに出会ってしまいます。そして勧められるまま、kintone、Salesforce、RPA、AI-OCRなどを“フルセット”で導入してしまいました。

ちなみに総額は数百万円にもなったそうです。

しかし設定・運用が追い付かず、スタッフの作業は結局Excelと紙ベースに戻っていきました。


3.現場スタッフは置いてけぼりに

ここで立ち止まれたらまだ傷も浅かったのですが、所長の「AIで効率化するぞ!」という熱意は変わりませんでした。しかしスタッフは当然、それを冷めた目で見ていたそうです。

研修もマニュアルもないまま、現場は混乱状態になってしまいました。


そして大きな問題だったのが、既存の業務フローの見直しをせずにAIを載せようとしたことです。

非効率なままの業務にAIを無理やり当てはめた結果、導入前より手間が増加。それが徐々に業務の遅れにもつながっていきました。


4.相談相手のないまま独断で進める

半年後、何百万円もした高額ツールは、ほぼ使われていません。それをなんとか挽回しようと所長は新たなツール探しに奔走。当然のように高額ツールを勧めたITコンサルとは連絡が取れなくなってしまっていました。


ここの段階になって、はじめて私に声がかかったのです。

そこからは大変でした。

状況の把握だけで1か月以上かかり切りになり、まずはAIや高額ツールの使用をいったん打ち切りました。そこから業務内容の棚卸をして、AIが使える部分と使えない部分の切り分けを行い、マニュアルの整備、スタッフの研修・フォローなどを行い、結局は数か月にもおよぶプロジェクトになってしまったのです。


幸いなことにスタッフは相当ストレスがかかっていましたが、離職などは起きておらず、表面上は何も問題などなかったかのようですが、かなり危ないところでした。

ただ、数百万円の損失だけが残ったのです。


なぜこうなってしまったのでしょうか。


原因:所長の誤解から始まっている

こうなった一番の原因は、所長が「AIでなんでも自動化できる」と誤解していたからです。

そこの事務所は所長が独断で結論を出すタイプの運営を行っており、所長一人で情報収集し、判断し、導入を決めました。

導入を決めたまでは良かったのですが、実装フェーズで詰まってしまいました。ベンダーの説明が難しくて理解できません。その結果、曖昧な認識のまま、傷口を広げてしまったのです。


AIは何でもできる魔法の杖ではありません。

実際は”業務整理+小さな自動化の積み重ね”があってはじめて機能するもの。税理士事務所の業務に対する知識のないコンサルタントやベンダーでは、ここがボトルネックになってしまうのです。

導入スピードを優先してしまった結果、設計不足が起き、機能不全に陥ってしまったのです。



4.AI導入は何から始めるべきか(実務ロードマップ)


AIに限らず、ITツールを導入する際は、設計が重要です。

個人で趣味として使うのであればまだしも、税理士事務所で業務で役立てようと思ったら「とりあえず使ってみる」ではうまくいきません。

特に税理士事務所は、業務の構造が複雑で、属人化も多いため、順番を間違えると逆に混乱が生まれます。


ここでは、どの事務所でも再現できる現実的なロードマップを紹介します。



ステップ1:業務棚卸し(AIが効く領域の可視化)


まずは、事務所の業務を見える化することが出発点です。

  • 月次業務

  • 年次業務

  • スポット業務(相談、届出、調査対応など)


これらを一覧化し、「AIが効く部分」と「AIが効かない部分」を分類します。

AIが効く領域の典型例は、

  • 定型処理

  • 文書作成

  • チェック作業

  • 情報整理

など。

逆に、判断が必要な部分や顧客との対話はAIが“補助”に回る領域です。

この棚卸しを行うだけで、「どこからAIを入れるべきか」が自然と見えてきます。



ステップ2:小さく試す(まずは“文章系”から)


AI導入の最初の一歩は、文章系業務が最も成功しやすいです。

  • チャットAIでの下書き作成

  • 顧客説明文の改善

  • マニュアル作成の効率化


これらはリスクが低く、成果が見えやすい領域です。特に、説明文やメール文の改善は、職員の負担軽減と顧客満足度向上の両方に効くため、導入効果が大きいです。

「まずは文章から」これはほぼすべての事務所で共通する成功パターンです。



ステップ3:事務所の成熟度に応じたツール選定


AI導入で失敗する典型例が、いきなりすべての領域にAIを使おうとすることです。

事務所のITリテラシーや業務の成熟度に応じて、段階的に選ぶ必要があります。


  • ITが苦手な職員が多い → まずはチャットAIから

  • 文章系が回り始めた → AI搭載の会計ソフトやチェックツールへ

  • 標準化が進んでいる → ワークフロー全体の自動化へ


“背伸びしない業務での活用”が、導入成功の鍵です。



ステップ4:ルール整備と教育


AIを使い始めると、必ず必要になるのがルール整備です。

  • 誤回答への対策(必ず人が最終チェックする)

  • セキュリティルール(顧客情報の扱い)

  • プロンプトの標準化(事務所内で使い方を揃える)


特に重要なのは、「AIは正しい前提で使うものではない」という認識を全員で共有すること。

教育は一度で終わりません。小さく学び、小さく改善し続ける仕組みが必要です。



ステップ5:AI前提の業務フロー再設計


ここまで来て初めて、業務フローそのものをAI前提に作り替える段階に入ります。

  • 月次業務の標準化

  • チェック工程の再構築

  • AIを“点”ではなく“線”で使う


例えば、「資料整理 → 仕訳案作成 → チェック → 顧客説明」この一連の流れの中で、AIをどこに組み込むかを再設計します。

AIを単発で使うのではなく、業務全体の流れに組み込むことで、初めて本当の生産性向上が実現します。



5.結論:AI導入は“未来への投資”であり、事務所の生存戦略


AIは、税理士事務所にとって脅威ではありません。むしろ、事務所の価値を底上げし、職員の力を最大化するための“武器”です。


単純作業をAIに任せることで、職員はより高度な判断業務や顧客対応に集中できるようになります。その結果、サービス品質が上がり、顧客満足度も向上します。つまり、AIは“人を減らすためのもの”ではなく、人の価値を引き上げるためのものです。

そして、AI導入の効果は“早く始めた事務所ほど大きい”という特徴があります。AIは慣れがすべてであり、職員が日常的に使いこなすまでには一定の時間が必要です。だからこそ、導入が早いほど、職員の成長スピードも加速する。これは、後から追いつこうとしてもなかなか埋められない差になります。


結局のところ、「今動くかどうか」で、3年後の競争力が決まる。これは大げさではなく、現場で起きている現実です。

AIを前提に業務を再設計し、事務所全体で使いこなせる体制を整えた事務所は、

・生産性

・採用力

・顧客満足度

・職員の働きやすさ

すべての面で優位に立ちます。

AI導入は、単なる効率化ではなく、事務所の未来をつくる“戦略的な投資”です。今この瞬間の一歩が、数年後の大きな差につながります。


ただ、どの事務所も状況や課題はまったく違います。

・人が足りない

・属人化が進んでいる

・ITが苦手な職員が多い

・どこから手を付ければいいのかわからない

・そもそもAIで何ができるのかイメージができない


こうした悩みは、実際に話を聞いてみないと整理が難しいものです。


もしこの記事を読んで、

「うちの事務所はどう進めればいいのか知りたい」

「まずは現状を一緒に棚卸ししてほしい」

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