税理士事務所でスタッフのモチベーションを高める”仕組みづくり”完全ガイド(簡易版)
- 斉藤永幸
- 1月20日
- 読了時間: 11分

先日、ある3つの税理士事務所からの依頼で小規模なセミナーを開きました。そこでのテーマは先日も記事にした『税理士事務所の生産性向上』について、です。
そのセミナーで話す内容を考えていくために、参考にといろいろな本やネットの記事を読みました。その中のある記事で、スタッフのモチベーションが重要と指摘しているものがあったのです。それ自体は正しいですし、反論するものではありません。しかしスタッフのモチベーションをどうやって上げるか、というところで精神論が大半を占めていたのです。
実際、中小企業の中には、今でも社長や部長などの管理職が社員を”ガツン”と締め、やる気を引き出している、といったところもあります。私が以前在籍していた人材系の企業では、営業成績が上がらない社員は部長などからきつく叱責される、いわゆる”ガン詰め”が当たり前でしたね。
ただ、そうしたやり方は今ではパワハラとなるリスクが非常に高く、短期的には効果はあっても長期間持続することはありません。それどころか、それをきっかけに退職となってしまえば、採用難のこの時代、ダメージを受けるのは企業であり事務所なのです。
だからこそ叱責などに頼らないモチベーションアップが必要なのです。
そこで今回は、事務所スタッフのモチベーションを引き出すにはどうしたらいいのか、ということについて考えてみたいと思います。
※今回の記事は、セミナーで話した内容を元にしていますが、そのまま記事にすると非常に長くなります。そのため今回はセミナーで話した内容の概略をお伝えします。詳細な情報をご希望の方は、無料相談からお問い合わせください。
1.税理士事務所はスタッフのモチベーションが下げる条件がそろっている
そもそもスタッフのモチベーション低下はなぜ起きるのでしょうか。その理由は大きく分けて8つに分けることができます。
1.評価制度の不明確さ
2.心理的安全性の欠如
3.業務の偏り・不公平感
4.成長実感の欠如
5.報酬・福利厚生の不満
6.職場環境の悪化
7.業務の目的が不明確
8.上司のマネジメント不足
一般企業では、上記のようなものが原因とされています。
税理士事務所では、業務の特徴・働き方からこれに当てはまる環境となっているところが多いのです。
例えば、確定申告期などの繁忙期と平常月の変動が激しいことは、業務偏りや職場環境の悪化を招きやすくします。また、属人化しやすく、これが評価制度の不明確さや不公平感を招き、報酬・福利厚生の不満へとつながります。
モチベーションを下げる原因となるものをざっとあげただけでも次のように複数の要因があります。
業務の季節変動が激しい
成果が見えにくい(数字で評価されにくい)
属人化しやすく、負荷が偏る
コミュニケーション不足が起きやすい
「やって当たり前」文化が残りやすい
だからこそ税理士事務所の所長は、常にスタッフのモチベーションについて敏感でなければならないのです。
2. モチベーションを上げるための前提:仕組みと環境が9割
問題は”どうすればモチベーションを上げることができるのか”です。
従来やられてきたような、叱咤激励では必ず限界を迎えます。短期的に意欲を引き出せたとしても、熱意などは長続きしません。それどころかスタッフを委縮させ、心理的安全性を下げ、離職につながってしまうこともあります。
だからこそやる気を出させるのではなく、”やる気が出る状態”の仕組み・環境”を作っていく必要があるのです。
Point:
個人のやる気に頼るのは限界
仕組み・情報共有・評価制度・ツール整備が整って初めてモチベーションが上がる
「やる気を出させる」ではなく「やる気が出る状態を作る」
3. 具体策①:業務の見える化でストレスを減らす
ここからは、モチベーションを上げる具体的な施策について話していきましょう。
税理士事務所でモチベーションを下げる最大の要因が”ストレス”です。
スタッフに過度なストレスがかかることで、大きくモチベーションが低下してしまう。そんな光景を数多く見てきました。
だからこそ、次のような施策で「そもそもストレスの少ない職場」を作っていく必要があります。
月次業務の流れを図解化
チェックリスト化で迷いをなくす
属人化を減らし、安心して仕事ができる環境を作る
ここ何本かの記事で触れてきましたが、ここでも”見える化”が大きなカギを握っています。
業務の棚卸を行いフローチャートを作成、チェックリスト化して業務を標準化。属人化を減らすことで、仕事へのストレスを大幅に減らすことができます。
4. 具体策②:コミュニケーションの質を上げる
業務そのものだけでなく、人間関係もストレスにつながりやすものの一つです。
特にコミュニケーションの不全は一気にモチベーションの低下を招きます。そのため以下のような施策でコミュニケーションの質を上げる必要があるのです。
毎日のミニ朝礼・週次ミーティングのポイントを見直す
「褒める」「感謝を伝える」を仕組みに組み込む
チャットツールの使い分け(Teams/Chatwork/Slack など)
相談しやすい雰囲気を作る方法
コミュニケーションは「気合い」でなんとかできるものではありません。
「設計」によってはじめて改善することができるのです。
5. 具体策③:成長実感を作る仕組み
税理士事務所の仕事は”できて当たり前”というものが多く、またルーティン業務が多いため、仕事を通して成長を実感できる場面が少ない環境です。この成長実感はモチベーションという炎にくべる薪のようなもの。燃料がなければ燃え続けることができないのです。
スキルマップで成長段階を可視化
研修計画を“個別最適化”する
小さな成功体験を積ませる
「できるようになった」を見える化する方法
6. 具体策④:評価制度とフィードバックの改善
小規模な税理士事務所は、評価制度をしっかりと定めていないところも多く、それが不公平感につながりやすい環境です。同じ成果を出している(と本人は思っている)のに、給与に違いが出てしまう、ということも良くあります。
そのため評価制度を作ることができれば、モチベーションの向上に結び付きやすいですね。
税理士事務所に合う評価軸の作り方
定量評価と定性評価のバランス
フィードバック面談の改善
「公平感」がモチベーションに直結
7. 具体策⑤:働きやすさの改善(IT・業務効率化)
この業界では、繁忙期はある意味、業界特有の宿命ともいえます。これは一つの事務所でどうこうできる問題ではありません。しかしその環境は改善することができます。
ITツールをうまく組み合わせて使うことで、繁忙期の負担などは大幅に低減させることが可能。AIやRPAなどをうまく使うことで、残業を減らし、効率的に働くことで生産性を高め、給与アップなどにつなげることができれば、モチベーションを大きく高めることも可能です。
ITツール導入の“段階的アプローチ”
ITリテラシーの差を埋める教育方法
Dropbox/Google Drive/Teams/kintone などの使い分け
「効率化=モチベーション向上」につながる理由
8. 具体策⑥:事務所のビジョン・価値観を共有する
税理士事務所の働き方の特徴として”孤立化しやすい”ということがあります。
特に月次巡回などで毎月訪問をしている事務所だと、業務のほとんどが所外で、となります。お客様の間を飛び回り、事務所にはほとんど帰ってこない。そのような状態では、帰属意識がどんどん低下します。すると自分は「何のために働いているんだろう」という思いからモチベーションが低下してしまうことも多いのです。
そのため事務所がしっかりとビジョンを示し、価値観を共有することで”仕事の意味付け”を行い、モチベーションの低下を防ぎます。
事務所の方向性が見えると人は動きやすい
「何のためにこの仕事をするのか」を言語化
ビジョンを日常業務に落とし込む方法
スタッフが“自分ごと化”できる伝え方
9. よくある失敗例
スタッフのモチベーション管理は、事務所にとって最重要課題の一つです。
これを放置したことで、20名以上の中堅事務所が一気に5名くらいまで縮小してしまった、という事例も見てきました。また、モチベーション管理をしなかったため、何度新人を雇っても離職が相次ぎ、採用コストが事務所の経営を圧迫している、というところもありました。
以下のような事務所は、すぐにでも事務所の仕組みから改善し、モチベーション管理に手を付ける必要があります。
形だけの評価制度
ツール導入だけして運用が定着しない
「忙しいから後回し」でコミュニケーションが崩壊
属人化を放置して離職につながっている
また、叱咤激励は効果は低いと述べましたが、その逆もまた問題があります。
「叱らない=優しい」ではない
「任せている=放置」になっている
自分はスタッフをしっかり思いやっている、という所長ほどこうした失敗に陥りやすいので注意が必要です。
10. まとめ:モチベーションは“仕組み×関係性×成長実感”
税理士事務所でスタッフのモチベーションを高めるには、「仕組み」「関係性」「成長実感」の3つがそろって初めて効果が安定します。
仕組みが整えば、迷いが減り、仕事がスムーズになる
関係性が良ければ、相談しやすく、安心して働ける
成長実感があれば、前向きにチャレンジできる
この3つはどれか1つ欠けても機能しません。だからこそ、段階的に整えていくことが大切です。
ただ、モチベーションを高める施策は時間のかかるものもあります。しかしちょっとした意識を持つことで、モチベーションを高めることができるものもあります。
次のようなものは、明日からでもすぐに実践できるものです。まずはそこを意識しつつ実行し、中期的な施策、長期的な施策、と段階的に進めていきましょう。
🔹 すぐできること(今日から実践)
朝礼・週次ミーティングで情報共有の質を上げる
チャットで「ありがとう」を1つ送る
小さな成功体験を意図的に作る(簡単な仕事を任せるなど)
スタッフの話を“否定せずに聞く”姿勢を徹底する
ポイント:まずは“空気”を変える。小さな行動でも、職場の雰囲気は驚くほど変わる。
🔸 中期的に取り組むこと(1〜3か月)
スキルマップを作成し、成長段階を見える化
チャットツールやクラウドの運用ルールを整備
研修計画をスタッフごとに最適化
業務の見える化(チェックリスト・フロー図)を進める
ポイント:仕組みを整えると、スタッフの不安が減り、“仕事がやりやすい”状態が生まれる。
🔷 長期的に整えること(半年〜1年)
公平で納得感のある評価制度の構築
所長・リーダーのマネジメントスタイルの見直し
事務所のビジョン・価値観の言語化と浸透
属人化をなくすための業務標準化
ポイント:長期施策は“文化づくり”。ここが整うと、離職率が下がり、採用力も上がる。
まとめ:まずは行動に移すことが重要
モチベーションは「気合い」ではなく「設計」で生まれます。そして、設計は一気にやる必要はありません。できるところから、ひとつずつ。小さな改善が積み重なると、事務所の空気は確実に変わります。
私がこれまで見てきた事務所でも、“ほんの小さな一歩”から大きな変化が始まっていました。
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いかがでしたでしょうか。
1時間ちょっとの内容でしたが、記事にすると細かい部分の解説も必要となるため、この5倍くらいの文章量になってしまいます。今回は概要のみをお伝えしています。
さらに言えば、このテーマは私が税理士事務所をサポートする際、非常に重視している部分だからです。以前採用のサポートを依頼され、事務所を訪問した際、その事務所の所長は声を荒げスタッフを叱責していました。「お前の目からはやる気を感じられない」といった言葉が印象的でしたね。
その時は「この事務所の採用サポートすることは、劣悪な環境に求職者を叩き込む行為じゃないか」と感じ、依頼をお断りしました。しかし、今はそもそも所長には、モチベーション管理という意識自体なかったのではないか、そこの部分からサポートするべきだったのではないか、と考えるようになったのです。
スタッフのモチベーション管理は、単なる「人の問題」ではなく、事務所の生産性・離職率・採用力・顧客満足度すべてに直結する“経営課題”です。そして、今回お伝えした内容はあくまで概要にすぎません。実際の現場では、事務所の規模・スタッフ構成・業務フロー・所長の価値観によって、最適なアプローチは大きく変わります。
私自身、これまで多くの税理士事務所をサポートしてきましたが、モチベーション管理が改善された瞬間、事務所の空気が一気に変わる場面を何度も見てきました。
もしあなたの事務所でも、「うちも何か手を打たないといけない」「どこから改善すればいいのかわからない」と感じる部分があれば、ぜひ一度無料相談からお問い合わせください。
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