スタッフが辞めない事務所へ|税理士事務所のストレス構造と解決法
- 斉藤永幸
- 1月7日
- 読了時間: 9分

そもそも税理士事務所はストレスのたまりやすい職場です。PCに向き合い、延々と数字と格闘する時間も長く、所内での業務が中心の事務所では人間関係も自然と濃くなってしまいます。また、税務の仕事は期限も明確にある中、お客様の資料が遅れた際、しわ寄せを食うのは現場のスタッフです。その結果、ストレスが溜まって精神のバランスを崩したり、いきなり退職する、という人もいます。
求人が難しくなってきている昨今、ストレスでスタッフが離脱してしまうのは事務所にとって大きなダメージとなります。一人当たりの負荷が大きい小規模な事務所ほど影響は大きく、残ったスタッフはさらなるストレスにさらされることになり離職が連鎖してしまう、といったことも。そこまでいかなくても、ストレスが業務品質の低下を招き、顧客満足や生産性に直結します。
だからこそ職場である税理士事務所のストレスを減らすことは、リスクを減らす、ということになります。
この記事ではストレスの少ない税理士事務所を目指す改善策、について考えてみたいと思います。
1.税理士事務所で起きやすいストレスの正体
まずは税理士事務所でよくあるストレスの原因について考えてみましょう。
そのうえで、その原因に一つひとつ対処していくことが求められます。
まず、ストレスの原因になるものとして、次の3つが挙げられます。
業務構造から生まれるストレス
期限プレッシャー
資料が来ない
属人化
業務量の偏り
引き継ぎの不備
特徴:“仕組みの問題”が原因で、個人の努力ではどうにもならないストレス。
人間関係・コミュニケーションから生まれるストレス
指示の曖昧さ
相談しづらさ
意見が言いにくい
所長の気分で判断が変わる
ベテランと若手の価値観ギャップ
特徴:“心理的安全性の低さ”がストレスを増幅させる。
環境・設備から生まれるストレス
PC環境の悪さ
モニター不足
動線の悪さ
休憩スペースがない
オフィスの騒音・温度
特徴:“物理的な環境”が作業効率とメンタルに影響。
あなたの事務所でも、思い当たるものもあるのではないでしょうか。
2.ストレスの少ない職場に共通する3つの条件
ストレスは上記の3つの領域が互いに影響しあい、大きくなっていきます。
例えば、
資料が来ない(業務構造)
→期限がギリギリになる
→所長がイライラする(人間関係)
→残業が増える(環境)
このように1つの問題が他の領域に波及し、ストレスが増幅する構造になっています。だからこそ「仕組み」で整える必要があります。逆にストレスのない職場は、次のような仕組みを整備しています。
① 業務が標準化されている
一つひとつの業務に迷いなく安心して取り組むことができるようになる
② 心理的安全性がある
ミスをしても責められない、安心して発言できる、という安心感がある
③ 情報が見える化されている
誰が何を、いつまでに、どこまで進めているか、がわかる
このような状態の職場は、単に人間関係が良い、というだけでなく業務に伴うストレスを減らすことができます。
では具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか?
3.今日からできるストレスを減らす実践策
職場で感じるストレスを減らすには、大きく分けて3つの観点から改善を進めていく必要があります。それが、業務改善、コミュニケーション改善、環境改善、です。
● 業務改善編
チェックリストの導入
月次の締め日分散
資料回収の前倒し
AIによる単純作業の削減
● コミュニケーション編
朝5分のミニ朝会
指示のフォーマット化(期限・目的・形式)
相談窓口の一本化
● 環境改善編
デュアルモニター
イス・キーボードの見直し
休憩スペースの確保
これらは比較的簡単に導入でき、しかも即効性の高いものです。
ただ、環境改善などはコストもかかります。少しずつでも良いので改善を進め、より良い職場環境を作っていってください。
4.所長が理解すべき「心理的安全性」の作り方
税理士事務所の所長がストレスの少ない職場を作るために取り組むべき最初のことは、心理的安全性を高めることです。この心理的安全性とは、「この職場では、ミスや意見を言っても責められない」「安心して発言できる」と感じられる状態。この心理的安全性が低いと、スタッフは委縮し、ミス隠しや相談不足、離職につながることもあります。そのため近年、多くの企業で心理的安全性を高める方法が模索されており、Googleの研究でも、チームの生産性に最も影響する要素とされています。
ではどのようにすれば心理的安全性を高めることができるのでしょうか?
心理的安全性を高める4つの柱
1. ミスを責めない文化
ミスを共有する場を「改善目的」で設ける(例:月1回の“しくじり共有会”)
所長自身が「自分のミス」を先に話す
ミスの原因を“人”ではなく“仕組み”に向ける
2. 相談しやすい環境づくり
「相談は歓迎」という姿勢を明言する(朝礼・面談などで)
チャット・口頭・紙など、相談手段を複数用意
相談窓口を明確にする(誰に言えばいいか迷わせない)
3. 意見を言いやすい雰囲気
所長が「反対意見を歓迎する」姿勢を見せる
会議で「全員が一言話す」ルールを設ける
若手の意見を“拾って広げる”リアクションを意識する
4. 感情を共有できる関係性
所長が「最近ちょっと疲れてて…」など弱みを見せる
スタッフの感情に「共感→質問→提案」の順で対応する
感情を表す言葉(嬉しい・悔しい・不安など)を使う習慣をつける
業務面での改善やコミュニケーションの改善、環境の改善、などはどうしてもコストも時間もかかってしまいます。しかし、心理的安全性を高めることは、所長の心がけ次第ですぐに実行できることが多いのです。それだけに効果が非常に高いのです。
特に次の3つの言葉は意識してほしいですね。
💡 所長が意識すべき“3つの言葉”
「それ、いい視点だね」
→ 意見を拾って広げる
「それは仕組みで防げるね」
→ ミスを責めずに改善へ
「今どんな気持ち?」
→ 感情を言語化する習慣づけ
これだけでもだいぶ変わってきますよ!
5.税理士事務所タイプ別ストレス診断
ここまではストレスの少ない職場にするために、という一般的なことを考えてきました。しかし税理士事務所は一つひとつ、環境も置かれている状況も違います。そのため本来であれば実際に面談し、それぞれに合った対処法を検討していかなければなりません。
ただ、記事ではそこまでできないので、簡易的な診断をしたうえで、それぞれのタイプに合った対処法を考えていきましょう。
実際に事務所でストレスの原因になっているものはそれぞれ違っていると思います。
そこで私が普段使っている事務所別ストレス要因チェックがあります。これは事務所をタイプ別に分け、それぞれでどのような原因がストレスになっているか、をチェックするものです。5分くらいで出来る簡単なものなので、気軽に試してみてください。
A.
[ ] 所長の指示が遅れると業務が止まる
[ ] 意見を言いづらい雰囲気がある
[ ] 業務の進め方が人によって違う
[ ] 所長の気分で判断が変わることがある
[ ] 属人化が進んでいる
B.
[ ] 業務のやり方が人によってバラバラ
[ ] 情報共有がされにくい
[ ] 若手が入りづらい空気がある
[ ] 引き継ぎがうまくいかない
[ ] ベテラン同士の摩擦がある
C.
[ ] 教える人が忙しくて教育が進まない
[ ] 若手がミスを恐れて萎縮している
[ ] 質問しづらい雰囲気がある
[ ] OJTが属人的で偏っている
[ ] 成長のロードマップがない
D.
[ ] チーム内で役割が重複している
[ ] 意見がぶつかることがある
[ ] チーム外との連携が弱い
[ ] 改善案が実行されないことがある
[ ] チームリーダーの負担が大きい
E.
[ ] ルールが曖昧で人によって解釈が違う
[ ] 若手とベテランの価値観がズレている
[ ] 所長の意向と現場がかみ合っていない
[ ] 情報共有の仕組みがない
[ ] 誰が何をしているか分かりづらい
これで何がわかるのか、というと事務所で起きやすいストレスの原因です。
A~Eのどれが一番多くチェックが入りましたか?それにより次のようにタイプを分けることができます。
自分の事務所がどのタイプに近いかがわかれば、それぞれのタイプ特有のストレス要因と改善の方向性がわかります。
タイプ | 特徴 | 改善の方向性 |
所長ワントップ型 | 所長の判断がすべて/指示待ち文化/属人化しやすい | 権限委譲・業務の標準化・心理的安全性の強化 |
ベテラン分散型 | ベテランが複数/業務が個人に分散/連携が弱い | 情報共有の仕組み化・業務の標準化・若手育成の仕組み |
若手成長型 | 若手が多い/教育中/ミスや不安が出やすい | 教育の仕組み化・相談しやすい環境・ミス共有文化 |
チーム運営型 | チームで動く/役割分担が明確/改善意欲が高い | チーム間連携・役割の明確化・改善案の実行支援 |
混在カオス型 | 若手・ベテラン・所長が混在/ルールが曖昧/摩擦が多い | ルールの明文化・価値観の共有・業務の見える化 |
このチェックは簡単なものではありますが、事務所のストレスの傾向を知るのにはけっこう役に立ちます。そのうえで、ストレスのない事務所を作っていく必要があります。
本来であればそれぞれのタイプ別に3か月・6か月・1年と段階を踏んだ改善ロードマップを作って、実行していきます(無料相談よりご連絡いただければ、あなたの事務所のタイプに合ったロードマップを作成します)。ただ、それをすべて記事にすると非常に長くなるのでここではタイプ別に最初に手を付けるべき改善ポイントをお伝えします。
Aタイプ:所長ワントップ型
権限移譲と業務の標準化
→チェックリスト・手順書を整理し、所長以外でも判断できる仕組みを作る
Bタイプ:ベテラン分散型
情報共有の仕組み化
→案件管理ツールや進捗一覧を導入し、誰が何をやっているのかを見える化
Cタイプ:若手成長型
教育の仕組み化
→OJTを属人化させず、Q&Aノート・成長ロードマップ・マニュアルを整備
Dタイプ:チーム運営型
チーム間連携の強化
→チーム外との情報共有ルールや、横断的な朝礼・進捗共有を導入
Eタイプ:混在カオス型
ルールと価値観の明文化
→「うちはこう働く」という行動指針・優先順位・判断基準を明文化し、全員で共有
まとめ:ストレスの少ない職場は”仕組み”でつくれる
いかがでしょうか?
ストレスの少ない職場というと「人間関係を良くしなきゃ」「残業を減らさなきゃ」などが頭に浮かぶと思いますが、実はストレスの原因となっているものは様々。単なる所長、個人の努力ではなく仕組みで改善していくべきものなのです。
ただ、所長が変わると事務所全体が変わるのも確か。ぜひ所長自ら職場のストレスを減らすよう取り組んでいただきたいですね。
そのための情報は今後も随時発信していきます。
『業務の見える化』や『AIを活用したストレス削減』などもお伝えしていければと考えています。
また、タイプ別のロードマップを詳しく知りたい、他の手法も聞いてみたい、という方は無料相談よりお気軽にご連絡ください。
あなたの事務所の診断結果に応じた改善ロードマップを個別にご提案します。
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