採用力のある事務所はここが違う~採用チャネルを活用して競争力強化~
- 斉藤永幸
- 3月1日
- 読了時間: 16分

先日、ある税理士事務所からこんな相談が寄せられました。
「採用支援って結局どんなことをやってくれるの?」というもの。
多くの事務所で採用というと利用しているのが、求人媒体です。
求人媒体に広告を掲載することは、事務所にとっては負担は大きくありません。採用前の準備やスカウトメールの送信、応募者の管理、選考……。確かに面倒なこともありますが、果たして費用を使ってまで採用支援・サポートを使う意味はあるのか、という質問です。
TaxOffic-Supportが提供している採用サポートは、単に求人媒体を活用するものだけではありません。特に重視しているのが、採用媒体+それ以外の採用チャネルの活用です。ここに強みがあり、価値を認めていただき、相談いただいている事務所が多いのです。
求人媒体以外の採用チャネルと聞いて、ピンとくる事務所は少ないと思います。
しかし、採用力のある事務所はここの使い方が上手いのです。
求人媒体で募集内容だけ見ても、そこまで差はないはずなので応募者数や採用者数が違う、というのはこの採用チャネル戦略が影響を及ぼしていることも多いのです。
そこで今回は、この求人媒体以外の採用チャネルについて、少し整理してお伝えしたいと思います。
1.求人媒体だけでは差が出にくい時代
まず現状として、税理士事務所の採用は非常に難しくなってきています。特に求人媒体を使った採用では、競争が激化しており、条件での叩き合いのような状態が生まれつつあります。
実際に私のところにも「あの求人媒体を使ってけど応募が来ないので他の媒体を紹介して」、という相談も増えています。
しかし税理士事務所の採用難は、媒体の問題ではないということも多いですね。
もちろんまったく的を外している求人もまだまだ多いのですが、しっかりと求職者のニーズを踏まえ、採用原稿を掲載しているところもあります。しかし競合も多く、差別化しづらくなってきている、という問題があります。
そのため媒体での求人だけだと、なかなか他の事務所と差が出にくくなってきているのです。
そこで重要になってくるのが、求人媒体以外の採用チャネルです。
採用力のある事務所は、媒体以外のチャネルを複数持っています。そして、その性質をしっかり理解し、採用媒体と組み合わせることで効果を高めたり、求人媒体以外のターゲット層にアプローチをしたり、と様々な選択肢があるのです。
ここにこそ、採用格差が生まれているのです。
では、採用力のある事務所は、どのような採用チャネルを活用しているのでしょうか。
一行まとめ:求人媒体だけで差がつかない理由は、”競争の激化”と”差別化の困難さ”にある
2.採用力がある事務所が強い理由:導線を複数持っている
私がサポートしている採用力のある事務所では、複数のチャネルを活用し、それと求人媒体を組み合わせることで大きな成果を出しています。
これを分類すると、大きく3つに分けることができます。
・関係性の導線(紹介・学校・コミュニティ)
・発信の導線(SNS・note・採用LP)
・体験の導線(見学会・インターン・イベント)
です。
求人媒体は基本的に「待ちの採用」です。
スカウトメールなどを打つことで、事務所からアプローチをすることもできますが、基本的には広告を出して応募を待つ形です。それに対し、求人媒体以外の採用チャネルは「関係性を作る採用」と位置づけることができます。
その特徴は、効果が重複し、継続することです。
求人媒体での広告出稿は、その時点では求職者から注目を集めますが、広告出稿期間が終われば当然のように効果はゼロになります。しかし求人媒体以外の採用チャネルは、導線一つひとつで求職者と関係性を作っていくので、時間はかかりますが効果の継続性が高いのです。そして、求人媒体で募集をかけると、関係性の高い求職者が応募してくる確率が高まるのです。
様々なチャネルで関係性を築いているため、求職者は事務所を理解しており、ミスマッチがほとんどありません。媒体のプランのグレードを上げるよりコストを抑えることができ、応募者の質が高めることができ、長期的に効く。ここにこそ差がつく理由があるのです。
一行まとめ:採用は”導線の総量”で決まる。媒体は短期、導線は長期的に効果を発揮
3.求人媒体以外の採用チャネル一覧
では具体的に、どのようなチャネルがあり、どんな特徴があるのでしょうか。
ここではそれぞれのチャネルについて見ていきたいと思います。
①関係性のチャネル
・スタッフ紹介制度
・顧問先からの紹介
・士業ネットワーク(社労士・行政書士など)
・金融機関や保険代理店からの紹介
このチャネルは比較的わかりやすいでしょう。いわゆる「誰かからの紹介」にあたります。地域に根差した税理士事務所ほど、ここの関係性チャネルをしっかり構築しておくと、求人媒体による募集より効果が高いことも多くなります。
ポイントは、一度や二度声をかけるのではなく、繰り返し「うちに合う人いない?」と継続すること。
特に他士業からのキャリアチェンジを狙う人や、スタッフが同じ学校での友人などを紹介してくれるケースも多いですね。
②学校・教育機関連携
・大学キャリアセンター
・専門学校(簿記・会計系)
・商業高校
・インターンシップ(短期・長期)
・学内セミナー、職場見学会
新卒などを採用している企業であれば、大学などの教育期間との連携は慣れています。しかし、中途で経験者を採用することが多い税理士事務所の多くは、学校などの教育期間との連携が弱いところがほとんどです。
近年、大学などでは社会に出てすぐに通用するスキルを身につけることを重視するようになってきており、地元の企業との連携に積極的なところが増えています。それは専門学校や高校なども同様。卒業後の生徒の進路は各学校の悩みでもあるため、教育機関と連携をすることで、Win-Winの関係を築くことができます。
③コミュニティ採用
・簿記学習コミュニティ
・会計人向けオンラインサロン
・地域の若手社会人コミュニティ
・勉強会の主催
一部の集まり=コミュニティと税理士事務所は非常に相性がよく、潜在的なスタッフ候補が集まる場も多くあります。こうした場とつながりを持つことで、将来の採用につながることもよくあります。
ただ、コミュニティの中心は、勉強や学習、情報交換が主なので、あまり”採用色”を出してしまうと嫌われる傾向があります。
ある程度の存在感を出しつつ、長い目で見ながら関係性を深めていくことが重要となってきます。
④発信チャネル
・SNS
・noteでの”事務所のリアル”発信
・採用HPの改善
・スタッフインタビュー、事務所紹介動画
自ら発信力を持っている事務所は、採用においても強さを発揮します。いざ募集広告を出すとなった際、SNSなどで常に発信を続けていると、知名度が加わり応募の増加につながることもよくあります。
企業の広報でも、近年は対顧客だけでなく、潜在的な求職者に向けたCMを流すところも増えています。それだけ重要なチャネルといえるでしょう。
⑤コンテンツ採用
・「1日の仕事の流れPDF」
・「新人がつまずくポイント」図解
・「教育体制の見える化」資料
・「事務所の価値観」ストーリー記事
これは情報発信チャネルで流す内容ですが、ちょっと違った角度からのアプローチになるため、あえて分けています。情報発信チャネルは潜在的な求職者との間に関係性を作ることを目的としていますが、このコンテンツ採用では一歩踏み込み、信頼性というブランドを生み出します。
潜在的な求職者の参考になるコンテンツを作成し、発信することで、自分たちの事務所のイメージを向上させ、ブランドに高めます。例えば「教育体制」についてコンテンツを作成し、発信していれば、自分が今所属している事務所との差を認識し、そんな事務所で働きたい、という心理に訴えかけることもできます。
⑥体験チャネル
・事務所見学会
・オープンオフィス
・資格スクールのイベンド
・キャリアフェア
実際に体験することは、非常に大きな印象を残します。
税理士事務所の仕事に興味はあっても、未経験の人は”なんとなく”わからない世界で応募しにくい、というのが現状です。そこで事務所が”体験の場”を作ることで、求職者にアプローチをするのがこの手法です。
実際に”会って”、”話をして”、”仕事に触れてみる”ということは、非常に強いコンテンツです。
機会があれば積極的に活用していきたいチャネルといえるでしょう。
⑦地域密着チャネル
・商工会議所の求人掲示板
・地元のフリーペーパー
・地域の求人掲示板
地方は求人のエリアが比較的狭いのが特徴です。
例えば首都圏であれば、都内の事務所に埼玉や千葉、神奈川などの人が応募するのが当たり前。通勤時間1時間以上、という人も多いでしょう。
しかし地方では車社会で、通勤は1時間以内がほとんど。そのため広いエリアで求人をするより、身近なエリアに効果的にアプローチをする必要があります。
そこで重要になってくるのが、この地域密着チャネルです。
他の様々なチャネルと組み合わせることで、他のエリアでは知られていないがこの地域では知名度は抜群、という状況を作り出すことで、求職者に効果的にアプローチできる環境を作っていくことが求められます。
4.採用に強い事務所が実際にやっていること
採用力のある事務所は、媒体以外の導線を”組み合わせて”成果を出しています。
求人媒体以外の採用チャネル、というと難しく考えてしまいますが、一つひとつみていくとそれほど珍しいことをやっているわけではありません。しかし採用力のある事務所は、これらを複数組み合わせ、さらに媒体の募集も組み込み、相乗効果を上げています。
ここではそんな採用力のある事務所の事例をみていきたいと思います。
・教育体制を図解化して公開+スタッフの働き方をストーリーで発信
事務所のHP強化で私に相談が来たので提案し、実現したのがこの組み合わせです。採用HPの強化の一環として行ったのですが、これがハマりました。
HPを更新しただけでは効果はそこまで上がりませんでしたが、数か月後に求人媒体で募集をしたところ、求職者は必ずHPをチェックします。そこでこの教育体制と働き方ストーリーが最後の後押しとなり応募を促進。応募者数が倍増しました。
・学校と継続的に接点を持つ
地方の12名規模の税理士法人から相談を受け、提案したのがこの手法です。
この事務所は地域に強い地盤を持っていますが、お客様の多くが地場産業で、経理体制が貧弱なところが多いというのが特徴でした。そこで仕訳入力ができる人材を定期的に採用し、顧客の経理支援体制を強化したいとのことでした。ただ、地方都市のため、媒体に求人広告を出しても人が集まらない、というお悩みでした。
そこで地元にある商業高校にアクセスしてみてはどうか、と提案したのです。
その商業高校では、授業で簿記3級を取得するので、基礎知識としては十分。まずは高校3年生の夏前くらいから、学校と連携しアルバイトとして2名を受け入れました。それがインターンとなって2名は卒業後、そのまま入社。現在では毎年のように1~2名をその高校から定期的に採用できるようになり、経理支援体制がかなり拡充されたとのことです。
・コミュニティで価値提供する
情報を発信したいけど、どんなことをやっていけばいいのかわからない、ということで相談を受けました。所長+スタッフ1名という立ち上げたばかりの事務所。これからどんどんお客様を増やし、同時にスタッフも採用していきたいけど、手探り状態だというのです。
そこで基礎的な認知度を高めるため、SNSの活用を提案。FacebookやX、そしてスレッドの3つを使い、週に2~3本の投稿を行うことを提案しました。
特に反響が大きかったのが、税理士試験勉強のコミュニティでの投稿です。
所長以外のスタッフがちょうど税理士試験勉強中だったことから、協力してもらいコミュニティに参加。所長は数年前に勉強で役立ったこと、スケジュールの組み方、働いている事務所との協力体制、などを投稿。スタッフは日々の勉強している姿を投稿することで、つながりを作っていきました。
最初の数か月はほとんど成果は出ませんでしたが、半年後くらいから徐々に反応が出始め、SNSを通してHPへのアクセスも増加。SNSのコミュニティの中から転職したい、という相談を受けるようになり、その人材を確保することができました。
・見学会で”体験”を提供する
これも単体ではなく、求人媒体と組み合わせたことで大きな効果を発揮したケースです。
その事務所は都内の8名規模の事務所でした。これといって特徴がないのが特徴といった事務所で、採用に苦労していました。そこで着目したのが地方の人材をうまく引っ張ってこれないか、ということでした。
そこで行ったのが、次の求人媒体に掲載する際、2泊3日で見学会を開くことにしたのです。
応募した求職者に、交通費と宿泊費を支給。地方からすれば、都内で働くことは興味はあっても、なかなか踏み出せないという実情があるため、見学会ということで後押しをしたのです。
すると普段は応募はあっても1~2件だったのが、5件以上の応募があり、うち3名が見学会後に入社の意向を表明。一気に事務所の増員を図ることができました。
5.求人媒体以外の採用チャネルの考え方
このように事例だけ見ると、簡単なように思えます。
しかしポイントとなるのは、継続性です。やはり求人媒体は瞬間風速でみるとかなり強いです。求職者に一気に情報を発信することができます。しかし求人媒体以外の採用チャネルの多くは、徐々に浸透していく形です。つまり継続性が重要となってくるのです。
私がよく例える話ですが、人材の採用はスポーツの競技に似ています。
求人媒体での募集は、アスリートが大会などに出場することに似ています。そこで結果を出すことが目的ですが、多くの人が出場する競技では、しっかりとした準備と練習がなければ入賞できません。
所内の環境整備は、アスリートがトレーニング環境を整備するのと同じイメージです。それに対し、媒体以外の採用チャネルは基礎トレーニングのようなもの。結果が出るまで黙々と練習を積み重ねるアスリートのように、日々少しずつ多くの潜在的な求職者と関係性を少しずつ築いていく。それがあってはじめて、採用という結果に結びつくのです。
競技人口が少ない場合は、買い手市場と同じように、潜在能力だけで入賞することができる場合も多いでしょう。しかし競技人口が増え、競う相手が増えれば増えるほど、トレーニング環境や日々のトレーニングが重要になってきます。
求人媒体で募集をしても、人が集まらない。
そんな悩みを抱えている事務所は、いわば日々の練習を行わないでいきなり大会に出場する選手のようなものなのです。周りに毎日練習をしている選手がいれば、競り負けてしまうのも当然なのです。
一行まとめ:導線の整備を行わなければ、差がついてしまうのは当然の結果
6.今日からできる3ステップ
ここまでの話を聞いて、求人媒体以外の採用チャネルに取り組んでみたいけど何から始めればいいかわからない。そんな方も多いでしょう。実際、チャネルによって特徴があり、種類も多く、いきなり幅広く手を出してしまうと収拾がつかなくなる恐れもあります。
そこでまずは3つの取り組みから始めてみることをお勧めします。
ステップ1:採用LPを整える
事務所のHPに採用ページを作成し、事務所の教育・働き方・雰囲気を1枚で伝えられるようにします。
重要なのが1ページの追加である、ということ。いきなり導線などを意識して様々なリンクを張り巡らそうとすると、どれも中途半端になりがちです。まずは1枚のページを追加し、整備することで改善の一歩を踏み出します。
ステップ2:月1回の発信を始める
しっかりとした効果を出すのであれば、SNSだと週に2~3回、ブログの更新だと週1回、noteだと月1回以上、発信することが必要だとお伝えしています。しかし、最初はどんな情報を発信すればいいかわからない、ペースがわからない、とこれもまた中途半端になりがちです。
そこでまずは月1回、SNSやnoteで発信することから始めることをお勧めします。
ここで重要なのは、継続すること。月1回の発信では、ほとんど効果は出ません。しかし数か月やってみて、どんなことを発信すれば反応があるのか、といったことを把握することができます。
そのうえで、徐々にペースを上げ、潜在的な求職者との関係構築をスタートさせます。
ステップ3:関係性チャネルを1つ作る
SNSなどのネット上のチャネルと異なり、関係性チャネルはリアルの人間関係がベースとなります。そのため取り組みやすいチャネルの構築から始めてみることをお勧めします。
学校、コミュニティ、協業パートナー、いずれかと接点を持ち、まずは「うちに入ってくれそうな人がいるかな?」と声をかけることからスタートします。
その人としっかりと信頼関係が築けていれば、何らかの反応が返ってくるでしょう。その後はそこを起点に、徐々に関係性チャネルを広げていき、導線を太くしていきましょう。
一行まとめ:まずは小さく始め、徐々に関係性を強めていくことが重要
結論:媒体依存から抜け出すことが採用力の差になる
ここまでの説明でご理解いただけたと思うのですが、求人媒体以外の採用チャネルは、事務所の採用力の基礎となるものです。
ただ、多くの事務所はスタッフの募集というと求人媒体の利用くらいしか行っていないところ多いのです。もちろん募集は100%成功することはないのと同様、100%失敗することはありません。しかし、何度も募集を繰り返す中で、明らかな差となって表れます。
ただ、これも繰り返しになりますが、重要なのは継続して行うこと。
SNSの発信などは、即効性はほとんどありません。いきなり採用活動の色を出しすぎると、コミュニティから反感を持たれてしまうこともあります。時間をかけ、少しずつ関係を築いていくのは、リアルの人間関係と一緒です。
手間や時間もかかりますが、こうした媒体以外の採用チャネルを整えることで、応募が自然と集まる状態を作ることができます。実際、採用力のある事務所では、媒体以外の導線を複数持つことで、相乗効果で応募を集めているのです。
媒体での募集に応募が集まった、集まらなかった、と一喜一憂する必要がなくなる、つまり媒体に依存する状態から抜け出すことができるのです。
重要なのは、チャネルそれぞれの特徴に合った戦略を立て、継続的に実行していくこと。これが実は難しいのです。税理士事務所には繁忙期もあり、そうした時期はチャネルの構築などが止まってしまうこともあります。
さらに私自身も、すべての採用チャネルを熟知しているわけではありません。
採用支援サポートを行う際も、媒体での採用を基本としつつ、それ以外の時期は採用チャネルの構築に取り組む、といったスタイルです。それでも、常に複数のチャネルの構築を継続しているため、サポートをしている事務所ではそれなりに結果を出してくることができました。
採用力は、一度整えてしまえば長期的に効き続ける”資産”になります。
媒体に振り回されない採用体制を作りたいという事務所は、早めに動くほど効果が出やすいです。
一つひとつ、自力で整えていくのは簡単ではありませんし、事務所ごとに最適解も異なります。
「まずは方向性だけでも確認したい」「うちの場合は何から始めればいいのか?」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
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