採用できたらそれで成功、ではない(税理士事務所で見落としがちなポイント)
- 斉藤永幸
- 12月16日
- 読了時間: 6分

単なる人でを賄うだけの採用にはしない
「この前、良い人が取れたと思ったんだけど、入社してすぐに辞めちゃったんだよ」
ある所長から開口一番、そう告げられました。話を聞いてみると、つい最近採用した人はスキルが非常に高くてこれからを期待したのに、試用期間3か月で辞めてしまったそうです。退職理由は事務所の雰囲気に合わなかった、というふわっとしたもので、所長は納得できない、と憤慨していました。
そこで募集の状況を詳しく見ていくと、これではうまく採用できてもうまくいかないよな、というポイントがいくつもありました。
そこで今回は(採用の相談はこちら)に多く寄せられた悩みである、税理士事務所で見落としがちな採用のポイントをお伝えします。
税理士事務所の採用で多くの事務所が陥りがちなことが、人手不足での採用です。もちろんそれ自体は問題ではありません。
問題なのは、
欠員が出た→欠員の穴を埋めなきゃ→応募が集まらない→どんな人でもいいからすぐに採用
というような図式です。
これが非常に危険です。単に人手を補うだけの採用では、早期離職やミスマッチが起こりやすく、かえってコストが高くついてしまう結果になりがちです。採用とは単に穴を埋めるのではなく、採用した人が長く活躍することができてはじめてゴールとなります。
この長期に活躍する、という視点が抜けているため、「定着・活躍まで見据えた採用設計」と「事務所文化との相性確認」といったことを、税理士事務所の採用で見落としがちになってしまうのです。
ここをチェックしてみよう
では、実際に採用活動を行う際、どこに注意をすれば見落としを防ぐことができるのでしょうか。以下のようなことを確認してみてください。
・最終ゴールを確認
採用できるかどうかは通過地点です。採用した人が長く活躍することが最終ゴールであることを再確認しましょう。
・「誰でもいい」は危険
ターゲットがあいまいだと定着しない人材を選びがちになり、早期退職やミスマッチを引き起こし、余計なリスクを背負うことになります。
・文化の言語化
事務所の価値観や働き方を見直し、言語化してみましょう。それを求人票や面接で伝えることでミスマッチを大幅に減らすことができます。
・入社後の育成設計
経験者なら最初はどういうことからはじめ、どうやって事務所のやり方を学んでもらうのか。また未経験者の場合さ、最低でも3か月の育成プランを用意しましょう。
中でも、事務所の文化の言語化は重要です。これは事務所によってかなり幅があります。同じ決算・申告をメイン業務としている事務所でも、チームワーク重視か、個人裁量重視か、によって働き方などはまったく違います。ここをあいまいなままにしてしまうと、自分の事務所にフィットする人材を採用することは難しく、早期離職につながってしまうのです。
面接に進んだ段階で、あわてて「うちの事務所ってどんなだっけ?」と考えてもい、なかなか適切な言葉が出てこない場合があります。そのため自分のところはどんな税理士事務所なのか、ということをあらかじめ言語化しておく必要があるのです。
例えば以下のようなものを参考にしてみてはいかがでしょうか?
個人主義 | 1 2 3 4 5 | チーム主義 |
裁量が大きい | 1 2 3 4 5 | ルールがしっかりしている |
結果重視 | 1 2 3 4 5 | プロセス重視 |
所内コミュニケーション多め | 1 2 3 4 5 | 少なめ |
トップダウン | 1 2 3 4 5 | ボトムアップ |
これはマイナビ転職などで使われていた、自社の雰囲気を表すチェックシートです。これを元に自分の事務所を5段階で評価してみます。相反する項目を一つひとつ確認していくと、客観的に自分の事務所を判断することができます。
面接での質問で意識のすり合わせを
こうして自分たちの職場がどんな事務所なのか、を確認したら面接でそれに合うかどうかの確認をしていきます。私が面接などをお手伝いしているときは、大きく5つのポイントに絞って確認するようにしています。
<面接でのチェックポイントと質問例>
1基本的な動機とキャリア間
なぜ当事務所を志望したのですか?
将来どんな税理士を目指していますか?
2.実務経験・スキル確認
これまで担当した業務の内容を具体的に教えてください。
クライアント対応で工夫したことや成功体験はありますか?
3人柄・チーム適正
チームで働く際に心掛けていることは?
繁忙期のストレスをどう乗り越えましたか?
4働き方・定着性
当残業や繁忙期対応についてどのように考えていますか?
長期的に働くうえで重視する条件はなんですか?
5逆質問
当事務所で働くうえで、不安な点はありますか?
どんなサポート体制があると安心できますか?
税理士事務所の採用で、とりあえず穴を埋めないと、となると2ばかりに注意が向きがちです。欠員募集の場合、辞めていく人と比較し、手が足りないところを埋められるのか、ということで判断してしまうのです。それでは面接ではなく、単なるスキル確認です。
しかし、それだけだと結局は事務所に合わず、早期退職になってしまいます。
税理士事務所でついつい見落としがちなポイントに沿って、一つひとつ確認していきましょう。志望動機やキャリア感で、自分の事務所でそれを実現できるのか、を確認できれば長期的に定着するかを判断することができます。人柄・チーム適正の確認で事務所の文化に合うのかを見極めます。最後の逆質問(求職者から質問してもらう)では、応募者の本音や準備度、意欲をチェックすることができます。
こうした質問を組み合わせることで、単なるスキル確認だけではなく「事務所に合う人材かどうか」を見極めることができます。先ほどの事務所は事務所の雰囲気を言語化し、面接でチェックポイントを取り入れたことで、次の採用では良い人材を採用でき、その人は今でも活躍中とのことです。
ただ、面接は非常に経験が求められます。あまり面接をしたことがない、採用頻度が少ない事務所の所長の場合、面接で求職者を見極めるのは難しいかもしれません。そうした際は、外部のサポートを求めるのも一つの手です。
私はこれまで、多くの税理士事務所の採用サポートをしてきましたので、不安のある方はまずは無料相談から承っております。興味のある方はこちらからご連絡ください・
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