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小規模税理士事務所ほどDXで最速に変われる理由

税理士事務所のDX導入イメージ
まだ規模が小さいからDXは後回し、は間違い。小規模事務所ほどDXの恩恵は大きい

私が支援の対象としている税理士事務所は、中・小規模のところが中心です。中規模の税理士事務所では、お客様である所長からさまざまな相談が寄せられます。組織の効率化、新入社員の定着促進、SNS戦略、DXやAIの導入……。10名くらいの規模になると、将来を見据えて様々な手を打つ必要が出てくるため、ニーズも多様化しています。

しかし5名以下の小規模税理士事務所になると、採用支援がほとんどです。小規模事務所はどうしても採用力が弱いため、求人媒体に出稿しても人を集めることができないため、どうにかしてほしい、という依頼です。もちろんそうしたニーズにはしっかり向き合っていますが、他の提案、特に”DX”について話をすると、一部を除いてあまり乗り気ではない所長が多いですね。


ただ、私の経験上からも、小規模な事務所、企業がDXに取り組むと大きな結果を出すことが多いのです。いいえ、あえて言うなら小規模な事務所はDXに取り組むことは必須ともいえるでしょう。

中規模以上の税理士事務所なら、最悪人数に頼った”ごり押し”でなんとかなる場面は多いです。それに対し、マンパワーの上限が低い小規模な事務所ほど、DXでその不利を補っていくべきなのです。


そこで今回は、小規模税理士事務所だからこそDXに取り組むべき、という理由をまとめてみたいと思います。



1.小規模税理士事務所は課題は山積み、でもなぜ”DXは難しい”と思われているのか


小規模税理士事務所の所長とDXについて話をしていると、次のような言葉をよく聞きます。


「人が少ないからDXに手が回らない」

「ツールを使いこなせる人がいない」

「まずは人を増やしてから」

「売り上げがまだ低いので、DXにコストをかける余裕がない」


このように、小規模税理士事務所ほど、DXについては消極的です。

果たしてこのような考え方は正しいのでしょうか?実はこのようなDXに対する消極的な姿勢が、事務所の成長を阻害している、ということも多いのです。そもそも小規模税理士事務所では、様々な課題を抱えているところが多いです。


・人手不足、採用難が常態化

・属人化が進み、誰かが休むと業務が止まる

・定着率が低く、スタッフが辞めると一定数のお客様が離れてしまう

・顧客ニーズの高度化(スピード・透明性・オンライン対応、等)


小規模税理士事務所を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わりました。

人手不足や採用難はもはや一時的な問題ではなく、どの事務所でも当たり前のように直面する課題となっています。限られた人数で多様な業務を回さなければいけない状況の中、一人ひとりの担当者に業務が集中し、誰かが休んだだけで事務所全体のスケジュールが崩れてしまう。そんな属人化のリスクも年々大きくなっています。


そのようにストレスの大きい環境下では、スタッフも定着しません。離職率は高くなりますし、属人化している環境ではスタッフが事務所を辞めると、担当していたお客様がスタッフについて離れてしまうことも多く、営業コストが増大する原因ともなっています。


さらにお客様のニーズは確実に変化しています。

「早く知りたい」「状況を見える化してほしい」「オンラインで完結したい」

こうした要望は、もはや一部のお客様だけのものではありません。スピード・透明性・オンライン対応は事務所の規模に関係なく求められる”標準”になりつつあるのです。


そのような中、さらにDXで負担を増やすなんて……、

そう感じている方も少なくないのです。しかし実際にはその逆なのです。小規模事務所だからこそ、DXの効果が最も早く、最も大きく表れます。意思決定が早く、改善がすぐに現場に反映される。変えた分だけ成果が見えやすい。これは大規模事務所にはない、小規模ならではの強みです。


だからこそ今、小規模事務所にこそDXが必要なのです。



【よくある誤解】

DX = 大規模事務所のもの


【実際】

DX = 小規模のほうが効果が出る

(意思決定が速い/改善が反映されやすい)



2.結論:小規模の税理士事務所こそDXの恩恵が最大化する



人がいないから、ツールが使いこなせないから、予算が確保できないから……。

小規模税理士事務所がDXに踏み切れない理由は様々です。

しかしDXが遅れることで、課題がいつまでも残り続け、結果として成長が阻害されいつまでも人手不足、予算不足が続いてしまう。そのような状態の事務所が多いのです。

そもそもDXは小規模な事務所ほど、取り組み始めると一気に結果が顕在化します。恩恵が大きく帰ってくるのは大規模事務所ではなく、むしろ小規模事務所の方なのです。

ここからは小規模税理士事務所だからこそ、DXの恩恵が最大化する理由を一つずつ見ていきたいと思います。


税理士事務所の規模によってDXの効果が変わることを表すイラスト

理由①:意思決定が速いから、改善が一気に進む

DXが進まない最大の理由は人、ということが非常に多いです。最大の障壁と言っても過言ではないでしょう。DXを導入することで、それまでの仕事の進め方などが大きく変わります。それまでやってきたやり方に愛着がある人にとっては、やりづらくなることもあります。

私がDX推進のサポートをする際、そのほとんどがそのすり合わせです。ヒアリングを行い、皆がDXによって便利になるように導入の仕方などを工夫していくことになります。

小規模なほど、その手間が少なくなります。


小規模な事務所は「合意形成の壁」が低いのです。

極論、所長の判断で即日運用変更することができる場合も。

そして運用ルールなどが変更されても、人数が少なければ浸透スピードは非常に早くなります。ITツールなどの導入は、最初は小さく始め徐々に拡大していくのが鉄則。浸透スピードが速いということは、改善のPDCAが回る速度が大規模と比べて段違いなのです。



理由②:属人化の影響が大きいからDXの効果がすぐ出る

税理士事務所は規模が大きくなるほど、標準化が必須になります。逆に、小規模な事務所では属人化している部分が多いのが通常です。一人のスタッフが担当先のお客様を深く理解し、すべてを担っている。そのような状態は一見効率的に見えますが、小規模な事務所では「誰かが休むと業務が止まる」という問題が深刻です。


DXはこの属人化に一気にメスを入れることになります。

標準化・共有化を強制的に進めることになるのです。

一人の業務が見える化されるだけで、全体の効率が跳ね上がります。


効果が見えないと、継続的に取り組むのは難しいもの。小規模法人では属人化の影響が大きいからこそ、DXを導入した効果がすぐに実感できるので、スタッフからもその後の同意を得やすくなります。



理由③:導入コストが相対的に低い

DXは様々なITツールを導入することになります。その料金形態はさまざま。システムを組み立てるとなると、けっこうな金額になりますが、最初からそのような高額なシステムの導入などは必要ありません

小規模な税理士事務所では、基本的にライセンスを購入し、利用することがほとんどです。

このライセンスは、利用する人数によって決まります。つまり人数が少ない=ライセンス費用が安い、のです。


また、バカにならないのが研修コストです。

しっかり使いこなせるよう、利用方法の説明など、研修を受けることもあります。人数が多くなればなるほど、この研修コスト負担が大きくなります。ただ、少人数だと一回の研修で皆が参加できるので、研修コストは最小限で済みます。


結果として、大規模より小規模税理士事務所の方が、費用対効果が高くなりやすいのです。



理由④:業務フローがシンプルで、標準化しやすい

税理士事務所は、規模が大きくなればなるほど、業務の幅が広くなりがちです。

しかし、小規模な税理士事務所は、基本的な税務業務に絞って対応しているところが多く、そうした事務所はフローがシンプルです。また、専門性の高い事務所であっても、扱っている分野の範囲は限られているため、こちらも業務フローのバリエーションは少ないでしょう。


そのため業務のフローをテンプレ化しやすいのです。

DXは業務の標準化と切り離すことはできません。だからこそフローがシンプルなほど、テンプレ化・自動化しやすく、DXの初速が出やすくなります。



理由⑤:所長の”見える化”が全体に直結する

税理士事務所は所長が全体に大きく影響を与えます。これは小規模になればなるほど、その傾向は強まります。

ただ、小規模な税理士事務所では、所長の業務がブラックボックス化しがちです。

所長がしっかり情報を伝えているにも関わらず、スタッフからすると”所長が何をやっているのかわからない”ということも多いのです。

結果、業務で疑問に思うことがあっても、なかなか相談するタイミングがつかめなかったり、判断がブレてしまったりすることもよくあります。


DXで所長のタスクが見えると、事務所全体の動きが整います。

小規模なほど、トップの変化がそのまま組織の変化になるため、トップダウンの改善が最も効果的な規模ということもできます。



理由⑥:根拠が明確に出せるので、補助金を活用しやすい

AI導入補助金の正式名称は『デジタル化・AI導入補助金』といい、AIだけに限定されないのがこの制度の大きな特徴です。これを活用すれば、少ない費用負担で効果のあるツールを導入することが可能です。


その対象はバックオフィス系DXや社内情報管理DX、セキュリティ対策など幅広いものを含んでおり、税理士事務所が最も利用しやすい補助金の一つといえるでしょう。


この補助金は、実は小規模事務所ほど審査に有利だと私は考えています。

補助金の審査では、次の点が重視されます。

・業務改善につながることが明確

・効果を数字で説明できる(例:工数削減〇%)

既存業務フローと紐づいている


つまりAIがどうかというより「業務のどの課題を、どのDXツールで、どれだけ改善できるのか」が重要になってくるのです。ここまでの理由を見てきたように、小規模事務所ほどDXの効果がはっきりと表れ、大きく改善されます。結果、大規模事務所より小規模事務所の方が、「業務改善の明確さと効果の数値化」で有利なのです。



3.小規模事務所でDXが成功したケース


事務所プロフィール

規模 :所長+スタッフ3名

顧問先 :70件前後

エリア :東京23区内

課題 :月次の遅延、所長の業務過多、新人育成の停滞、顧客対応のバラつき


■Before

私がこの事務所から相談を受けたのは、新人の育成をどう進めていくべきか、というものでした。しかし事務所の状況を詳しく聞くと、それだけでなく問題が山積みだったのです。

主な課題として、以下のようなものが挙げられます。


1. 月次が常に遅れ気味

  • 各担当が独自のやり方で作業

  • 進捗が見えず、所長が「今どこまで進んでる?」と毎日確認

  • 期限ギリギリの提出が常態化


2. 所長の残業が慢性化

  • レビューが集中する

  • スタッフの質問が都度発生

  • 結局、夜にまとめて処理するしかない


3. 新人が育たない

  • マニュアルがなく、OJT頼み

  • 「人によって言うことが違う」状態

  • 新人が自信を持てず、作業が遅い


4. 顧客対応にムラがある

  • 担当者ごとに対応品質がバラバラ

  • 所長が後追いでフォローする負担が大きい


状況としてはかなり深刻でした。

スタッフそれぞれが、以前に在籍していた事務所のやり方でサービスを提供。フローなどが統一されていないため、管理がまったくできておらず、月次が常に遅れている状態。

それを所長がフォローするために忙殺されてしまっており、新人の採用や育成に時間を割くことができず、たまに新しい人を採用できても数か月で辞めてしまう。そんなことが続いていたのです。

お客様も70件程度までは一気に増えたものの、ここ数年は停滞気味。結果として小規模状態から抜け出せずにいたのです。


そこで根本的な解決を目指し、DX導入を提案。

最初は否定的だったものの、最終的には提案を受け入れていただき、プロジェクトをスタートさせました。



■DX導入

DX導入、といってもそれほど大掛かりなことはやっていません。

というより小規模な事務所では、大規模なシステムを組んだり、複雑なツールを導入しても、ほとんど意味はありません。やったことは”たったの3つ”です。


① 業務の棚卸しと見える化

  • 月次業務を細かく分解

  • 誰が何をどこまでやっているかを共有できる状態に


② チェックリスト化・テンプレ化

  • 月次チェックリスト

  • 顧客別の注意点テンプレ

  • レビュー項目の標準化

    → 属人化が一気に減る


③ 最小限のツール導入(2つだけ)

  • 進捗管理ツール

  • ファイル共有ツール

  • 利用ルールの統一

    →ツールは最小限でスタートさせるのがポイント


DX導入にあたって注意したのは、単なるツールの導入で終わらないことです。

特に業務の棚卸と見える化、その後の属人化の解消がなければ、どんなツールを導入しても意味はありません。

そのうえで導入したツールは2つだけ。

労務管理・進捗管理ツールとしてFLOWを、ファイル共有ツールとしてStockを導入しました。

Stockで進捗管理とファイル共有、二つの機能を持たせることができるのですが、スタッフがそこまでITに詳しくないとのことなので、シンプルに機能を使い分けることができるように2つのツールに役割を分けた形になります。


業務の棚卸からツールの導入、使い方をスタッフに説明するところまで期間わずか1か月。

FLOWもStockも無料お試しができるため、初期費用はかからず、私が導入支援をした費用として10万円だけでコストを抑えることができました。



■After

結果としてこの事務所のDX導入は、かなりの成功を収めました。

問題が大きかった分、結果が大きく出た形です。

導入3か月で、以下のような変化が起きました。


1. 月次の遅延が半減

  • 進捗が見える化され、遅れが早期に発見できる

  • チェックリストで作業漏れが激減

    月次の遅延が約50%減少


2. 所長の残業が激減

  • レビューが標準化され、確認がスムーズに

  • 質問が減り、所長の“呼び出し”が激減

    毎日2時間の残業が、30分以内に


3. 新人が早く育つ環境を構築

  • マニュアルとチェックリストで“迷わない”

  • 3ヶ月で一人前レベルに到達できる研修プログラムを策定


4. 顧客対応の質が安定

  • テンプレ化で対応のブレがなくなる

  • 所長のフォローが減り、顧客満足度が向上

    クレームゼロを達成


まず、進捗管理がしっかり行えるようになったため、業務の遅れなどがしっかり可視化されるようになりました。そのため所長は事前に対処できるようになり、月次の遅れが激減したのです。

その結果、所長の残業が減り、お客様対応の質が向上。新人スタッフを採用しても、しっかり教育ができるよう、研修制度の見直しやマニュアル作りなどに時間を割くことができるようになりました。



■分析:なぜここまで変わったのか

実はDX導入を勧めた際、ここまで大きく状況が好転するとは予想していませんでした。

効果はあると思っていましたが、私自身驚くべき変化が起きたのです。その理由を考察したところ、”小規模だったから”という結論に達したのです。


  • 人数が少ないから、ルール変更が一気に浸透

  • 所長の判断で即日改善できる

  • 属人化の影響が大きいから、標準化の効果がすぐ出る


所長を除けば、スタッフはわずか3人。

だからこそ意思統一が比較的簡単で、フォローも最小限で済みました。さらに問題が起きても、所長と相談しすぐに対応できたので、混乱もほとんど起きませんでした。

小規模税理士事務所は人数が少なく、所長の意思次第で”変わりやすい組織”と言えます。

だからこそDXの効果がダイレクトに出たのです。



4.まとめ:小規模税理士事務所こそ、DXで未来が変わる


人数が少なければ少ないほど、ITツールの導入で大きく変わる、というのは私自身の経験から感じていることです。

以前、数百人規模の企業に勤めていた際は、何か突発的な事態が起きた際でも”人海戦術”でなんとかしているシーンによく遭遇しました。規模の大きな組織はそれができるのです。一方、小規模な組織は、そうした”人力に頼った運営”はできません。

その足りない部分を補うのがITツールなのです。


そして、今回見てきたように小規模ほどITツールの導入=DXによって、改善の効果が全体に波及します。大規模な組織では、ちょっとしたツールの導入やフローの改善を行っても、影響は限定的です。

しかし小規模は”変わりやすい組織”です。

小規模税理士事務所の課題の多くは、DXによって解決することができるのです。


こうした状況から導き出されるのは、DXは大規模事務所のためにあるのではなく、むしろ小規模税理士事務所のための武器、ということができるのではないでしょうか。


もちろん、ただ闇雲にITツールを導入しても、このような効果は得られないでしょう。

しっかりステップを踏み、ロードマップを作って着実に進める必要があります。

それができれば、小規模事務所こそ、DXで最大の成果を発揮することができるのです。


小規模だからこそ、変化の効果が全体に波及する。「うちの規模ではまだ早い」――そう思っていた事務所が、DXで劇的に変わった事例をいくつも見てきました。

もし、

  • 月次業務の属人化に悩んでいる

  • 所長が日々の業務に忙殺されている

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