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資格取得支援は事務所の未来をつくる。成功する税理士事務所の条件と実践ステップ


税理士事務所での教育をイメージするイラスト
税理士事務所の資格支援制度は、競争力に直結します

『入社する事務所を選ぶとき、税理士資格取得を支援してくれるかどうかは大きなポイントでしたね」2科目合格で入社し、法人税と消費税に合格、税理士まであと1科目となったAさんはこう語ります。


これまで800人を超える税理士事務所に入社したスタッフをインタビューしてきましたが、そう話す求職者は非常に多いです。特にアシスタントではなく担当者レベルになると、体感で6~7割は転職の際、税理士資格取得を応援してくれているかを転職で重視しています。


では単純に資格取得支援をやればいいのか、というのではありません。


どのような支援を行えばいいのか。

どんな体制を整えればいいのか。

資格取得後にどんなキャリアを目指すことができるのか。


そうしたものを一緒に設計しておかないと、単なる資格取得支援は”看板倒れ”になってしまいます。

そこで今回は、中小税理士事務所で効果的な資格取得支援はどのように行うべきか、について考えてみました。



なぜ、税理士事務所の資格取得支援が注目されているのか


そもそもなぜ、税理士事務所が資格取得支援を行うのでしょうか?

資格の有無は個人についてまわるもの。あくまでスタッフが主導で進めるべきもので、職場である事務所がプライベートに深く関与すべきではない。歴史のある事務所ほど、そう考えあまり資格取得の支援などは行ってきませんでした。

しかし、人材不足が深刻化し、経験豊富な人材の採用が難しくなっている状況では、未経験でも採用し、戦力化していかなければなりません。そんな中、資格取得は若手スタッフが成長を実感でき、身につけた知識が実務に直結します。そのため近年では資格取得を積極的に応援している事務所がほとんどになりつつあるのです。


実際、資格取得を応援すると事務所にも多くのメリットがあります。


● 採用力が上がる

求人票で「教育制度が弱い事務所」は即スルーされる時代。支援制度があるだけで応募率が上がる。


● 業務品質が安定する

資格勉強は“体系的な知識”を身につける最短ルート。結果としてミスが減り、レビュー負担も軽くなる。


● 事務所のブランド力が上がる

「人を育てる事務所」は顧客からの信頼も高い。


一方で、スタッフ側からしても資格取得を応援してくれる事務所は非常に働きやすい職場となります。

スタッフから見た資格取得支援のある事務所


  • キャリアの見通しが立つ

  • 給与アップにつながる

  • 自信がつき、仕事が楽しくなる

  • 「応援されている」という心理的安全性が生まれる


資格取得は成長実感に直結します。そのため定着率が上がり、人が辞めにくい事務所になります。「資格取得=キャリアの道筋」が見えると安心感が生まれるので、キャリアパスの一環として資格取得を取り入れている事務所も多いですね。



税理士事務所で実施されている資格取得支援制度の種類と実例


資格取得を応援したい、でもどんな制度を整え、環境を整備したらいいのかわからない。そんな相談もよく寄せられています。そこで、これまで見てきた税理士事務所であった資格取得支援制度を種類別にまとめてみました。


● 金銭的支援

  • 受験料補助

  • 予備校費用の一部負担

  • 資格手当の設定

  • 合格祝い金

これは多くの事務所で取り入れられている制度です。特に資格手当を設定は効果が高いですね。勉強をがんばればった分収入に直結するため、スタッフは意欲を持って資格取得へのモチベーションが高くなります。

また、スタッフ側からすると、助かるのが受験料の補助や予備校費用の一部負担などでしょう。特に受験料は1科目4,000円、2科目5,500円、3科目7,000円、4科目8,500円、5科目10,000円です。資格手当は多くの事務所で5000円から1万円、これを毎月支出するのに比べると、年に1度の受験料を補助するのは”安く上がり”、同時に求人などで資格取得を応援していることを明確にアピールできるので、コストパフォーマンスの良い制度といえるでしょう。



● 時間的支援

  • 試験前の有給付与

  • 試験休暇の設定

  • 勉強時間確保のための業務調整

  • 残業ゼロデー

金銭的な支援制度と並んで、資格取得支援制度としてこの時間的支援を取り入れている事務所も非常に多いですね。というよりこれをやっていない事務所は、資格取得を目指すスタッフの離職が多くなってしまいます。

求職者のインタビューをしていて離職の理由を尋ねると「残業が多くて勉強時間が取れず、試験勉強が進まなかった」と答える人はかなりの割合になります。

問題はどのような設定をするのか、です。

単純に試験休暇といっても、いくつかパターンがあります。大手税理士法人などは試験前1か月は自由出勤として、勉強を集中できるようにしているところもあります。また、小規模な事務所では試験休暇を多くするとその穴を埋めるのが難しいため、試験日だけを公休扱いにし、その他は有給を取得してもらってカバーする、というところもありますね。

ただ、試験を受ける人と受けない人に差が出て不公平、ということでノー残業ディなどを設け、必要であればその日に予備校などの授業を受けてもらう、というやり方をしている事務所もあります。



● 環境支援

  • 先輩や他の受験生との勉強会

  • 過去問の共有

  • 合格者のノウハウ提供

中規模事務所で、多くの資格取得に挑戦しているスタッフが多い事務所は、この”環境支援”ができるのは非常に大きなアドバンテージです。

資格取得の勉強は、とかく孤独になりやすいもの。その点、先輩による勉強会などの支援は所内のコミュニケーションを円滑にし、事務所の組織をスムーズにする効果もあります。



● キャリア支援

  • 合格後の役職・給与テーブル

  • 担当件数の調整

  • MASや相続など専門領域へのステップアップ

資格取得をキャリアパスに組み込むというのは、大きな支援効果があります。

金銭的支援のところでも少し触れましたが、資格取得(科目合格)が収入アップに直結するというだけでなく、活躍の幅が広がることが具体的に示されていれば、受験をするスタッフのモチベーションが上がります。

そのため資格を軸に、評価制度や給与制度と連動させるなど、最初は手間もかかりますが、かなり効果的といえるでしょう。



資格取得制度導入で成功する事務所と失敗する事務所


資格取得支援制度を導入して成功する事務所と失敗する事務所をイメージするイラスト
単に資格取得支援制度だけ作ってもうまくいきません。効果的に制度を運用するためのポイントとは何でしょうか?

導入することで様々なメリットのある資格取得支援制度ですが、単に「やっただけ」だとあまり効果はありません。しっかり機能するように設計し、そのための仕組みを作っていかないと、成果は上がらないのです。

ではどのようにすれば良いのでしょうか?

それを知るためには、まずは資格取得支援制度を導入して失敗するパターンをみていきましょう。


失敗する事務所の4つの共通点


  • 「制度はあるが実態が伴わない」

  • 「忙しすぎて勉強できない環境」

  • 「合格後のキャリアが曖昧」

  • 「支援が公平でないと不満が出る」


失敗例としてもっとも多いのが、忙しすぎて資格取得制度を使う人がいない、というケースです。試験前の一般的な事務所では閑散期と言われるタイミングでも、月次などの業務が終わらず、残業せざるを得ない。そんな事務所もあります。その場合は、まずは業務の効率化を進め、ある程度スタッフにも時間の余裕がある状態を作り出してから資格取得支援を進めていく必要があります。


次が、失敗しやすいのがスタッフのモチベーションが低下し、資格取得に挑戦する人が誰もいなくなってしまう、というパターンです。その理由の多くがキャリアパスを描けないこと。近年、税理士になっても独立・開業へのハードルが高くなったことから、資格取得自体に魅力を感じなくなり挑戦をやめてしまうのです。

ただ、この仕事は”勤務税理士”であっても仕事の幅は大きく広がります。それを事務所がしっかり提示できず、合格後のキャリアが曖昧だとモチベーションの低下を加速させてしまいます。資格自体は個人の問題かもしれませんが、同時に仕事にも惰性が現れるようになるなど問題が大きくなることも。資格を取ったらどんな仕事に携われるようになるのか、待遇がどう変わるのか、などを提示することが必要です。


最後に、ある程度の規模になったら公平性が重要になる、ということです。たまにあるのですが「資格取得は応援するけど制度などは設けず、スタッフが望む支援を相談しながら提供する」という事務所です。これは小規模な事務所だと効率的に機能します。しかし規模が大きくなり、資格取得に挑戦するスタッフが複数になった時、不公平感につながることがあります。中には「あの人には試験休暇をたくさんあげたのに、自分にはこれしかくれなかった。だから試験に落ちたんだ」と考える人も。

そうならないよう、資格取得に挑戦する人が複数名になった段階で”制度として”しっかり整備する必要があります。

では、資格取得支援で成功する事務所にはどのような共通点があるのでしょうか?


成功する事務所の4つの共通点


  • 所長が“人材育成は投資”と捉えている

  • 仕組み化されていて属人化していない

  • 合格者のストーリーを事務所内外で共有している

  • AIやMASなど、資格+αの成長機会を用意している


人材育成は時間がかかります。その成果が出てくるのは数年後、ということもよくあります。特に税理士資格取得は平均で8年と言われています。よくあるのが簿記論・財務諸表論の2科目をとって就職したとしても、そこから数年かけコツコツと科目を積み重ねていく必要があります。それを”事務所として”支えていくためには、所長がしっかり育成に投資する、という姿勢を見せる必要があります。

そのために仕組みを整え、事務所の方向性を皆で共有していく、というのは重要ですね。また、いわゆる顧問業務だけでなく、AIやMASなど幅広いキャリアパスがあるとさらに効果は高まります。資格取得は一つのステップと捉え、さらにその先を見据えることができ、モチベーションを高めることができるのです。



まとめ:資格取得支援は「事務所の未来をつくる」仕組み


何らかの資格取得支援をやっている事務所は、体感で7~8割といったところでしょうか。しかし、実際に機能しているところは半分程度だと思います。その理由は、単に制度を設けただけであったり、実際は活用されていない、というところも多いのです。

しかし、資格取得支援制度は、うまく使えば採用・定着・品質・ブランドのすべてに効果的に働く制度です。また、大掛かりな仕組みの導入などしなくても効果があるため、小規模な事務所でも導入しやすいのが特徴です。


「資格取得支援をしたいけど、どんなことからやればいいかわからない」


そんな所長には、次の”明日からできる3つの施策”をお勧めします。


1. 「勉強優先デー」を週1回つくる

  • 例えば毎週水曜は“残業なし・勉強優先”と決めるだけ

  • ルール化することで、スタッフが遠慮せず勉強時間を確保できる

  • 業務量の調整にもつながり、制度化の第一歩になる

ポイント:「時間の支援」は最も効果が高く、最も導入しやすい。


2. 合格者・受験者の“ナレッジ共有フォルダ”を作る

  • 過去問、使った教材、勉強法、スケジュールなどを共有

  • 1人の努力が事務所全体の資産になる

  • 新人が迷わず学習を始められる

ポイント:フォルダを作るだけで“教育文化”が生まれ始める。


3. 求人票に「資格取得支援あり」と明記する

  • まだ制度が整っていなくても「支援する意思」を示すだけで応募率が上がる

  • 採用ページに「学習ロードマップ」を載せるとさらに効果的

  • 外部への発信は、内部の改善を加速させる

ポイント:採用面での効果が即出やすい“費用ゼロの施策”。



この3つはコストをかけず、制度化を踏み出すことができます。

時間、環境、発信の3方向からアプローチをしているため、どれか1つというよりは3つすべてを一気に導入することをお勧めします。

小さく始めても、スタッフの心理的安全性が高まり、勉強が習慣化されやすくなります。また、事務所の”教育力”が競争力に直結する今、内外に教育力のある事務所として見られることになるのは事務所にとって大きなメリットとなるでしょう。

まずはここから始めていただき、そこからさらに踏み込んでスタッフの教育・研修などを制度化することで、事務所全体の底上げ、レベルアップを目指すのが効果的です。


また、今回の記事の”おまけ”として、採用ページにそのまま掲載も可能な「学習ロードマップ」をダウンロードできるようにしています。興味のある方はダウンロードしてご活用ください。

他にもTaxOffice-Supportでは、採用・定着から資格取得、研修、教育など様々な支援を提供しています。まずは3つの施策からはじめ、次のステップにお悩みの方は、無料相談からお問い合わせください。





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