税理士事務所でのリーダーシップ~パス・ゴール理論について知ろう~
- 斉藤永幸
- 11月20日
- 読了時間: 6分
更新日:11月24日

税理士事務所で求められるリーダーシップ
いうまでもなく税理士事務所において、所長や代表は事務所のトップであり、経営において責任を負っています。
同時に、スタッフを率いて組織をまとめるリーダーとしての役割が期待されています。
人数が少ない場合は、仲間内のリーダーという立ち位置で良いのかもしれません。
しかし次第に組織が大きくなってきたとき、そのままでは問題が発生します。
所長や代表とスタッフの間にマネージャーなどのポジションが必要となり、それぞれがまたリーダーシップを発揮しなければなりません。
このように税理士事務所においても欠かすことのできないリーダーシップなのですが、そもそもリーダーシップについてどれだけ理解しているでしょうか?
このリーダーシップへの理解を深めるうえで、非常に参考になるのがパス・ゴール理論です。
このパス・ゴール理論は、リーダーの役割に関する理論で、リーダーは部下の目標(ゴール)を達成できるように適切な道筋(パス)に導く役割を担っている、というもの。
そして次の3つに焦点を当てています。
1.目標の明確化
部下が達成すべき目標を明確にし、理解させる
2.支援の提供
部下が目標に向かって進む際に、必要なリソースやサポートを提供する
3.動機づけ
部下のモチベーションを高めるためのフィードバックや報酬を与える
これを達成するために、部下の能力や置かれている状況に応じて、次の4つのリーダーシップのスタイルに変化するべきだ、という考え方をしています。
つまりリーダーシップは一つのタイプではなく、4つのタイプを示しています。
パス・ゴール理論の4つのリーダーシップスタイル
パス・ゴール理論では、次の4つのリーダーシップスタイルを効果的に使い分けることが重要だ、としています。
(1)指示型リーダーシップ(目標達成のために具体的な指示を与える)
(2)支援型リーダーシップ(部下の感情的なニーズに応じてサポートする)
(3)参加型リーダーシップ(部下を意思決定に参加させ、意見を尊重する)
(4)達成志向型リーダーシップ(高い目標を設定し、部下の挑戦を促す)
これだけだとわからないと思うので、それぞれどのような場面で、どう実践していけるのかを見ていきましょう。
指示型
このリーダーシップの特徴は、明確な指示と構造化にあります。
具体的な指示を行い、タスクの進行を監督するスタイルですね。
このスタイルの特徴は、特に部下の経験が浅い場合や、自主性が低い場合、などで有効です。
つまり、新人教育やスタッフの自主性が低い場合、チームワークが悪い場合、また複雑なタスクを実行しなければいけない場合などです。
税理士事務所で新卒や未経験の採用を行った場合、まず発揮されるべきリーダーシップといえるでしょう。
他にも、規模の大きな案件、例えば上場企業の連結決算などに対し、チームを作ってそれをまとめ上げる、という場面で必要となってきます。
支援型
このリーダーシップの特徴は、スタッフへの配慮と支援です。
リーダーが部下とのコミュニケーションを重視し、信頼関係を築くことでチームの士気を高めていく必要がある、といった場面で効果があります。
このリーダーシップが必要な場面は、ストレス環境やモチベーションの低下時などです。
税理士事務所などでは、所内での会計データ入力などの単調な業務が続く場面で、作業効率を維持しなければいけないシーンなどが挙げられると思います。
参加型
参加型のリーダーシップの特徴は、意見の収集と共同決定にあります。
スタッフが意見やアイデアを表現できる環境を作り出すことで、創造性や生産性を高めることが期待できます。
そのためにはスタッフの経験・スキルが高い、自主性が高い、などの時、特に効果を発揮しますね。
業務フローの見直しなどを行う際、経験者の多い事務所では、アイデアの募集を行ったり、会議での議論に積極的に参加させる、などの手法が考えられます。
また、ある程度の経験を持ったスタッフに権限を委譲し、任せることで次世代のリーダーを育てていく、などの際もこのリーダーシップが効果的です。
達成志向型
このリーダーシップの特徴は、高い目標設定を行うことです。
高い目標設定を行うことで、スタッフに挑戦を促すスタイル、ともいえるでしょう。
このリーダーシップが効果を発揮するのは、スタッフの問題解決力が高く、自己成長を目指すことに意欲的な場合です。
リーダーはスタッフが目標を達成するための支援を行い、成長を評価することでさらなる成長を促します。
税理士事務所でパス・ゴール理論を実践するには
この4つのリーダーシップのタイプを使い分けることによって、より良い結果を導き出す、というのがパス・ゴール理論です。
ただ、正直なところこれを使いこなす、というのは非常にハードルが高い、と感じています。
あくまでも理論なので、これを実際の実務で使えるか、というとそのまますぐに、というのは難しいでしょう。
ただ、注目したいのは「スタッフの状況」に着目してリーダーシップを使い分ける必要がある、という点はしっかり確認しておきたいところです。
例えば、スタッフのモチベーションが下がっているときに、高い目標を設定し、叱咤激励するのは効果的だと思うでしょうか?
この高い目標を設定し叱咤激励するのは、パス・ゴール理論の達成志向型リーダーシップです。
この達成志向型リーダーシップが効果を発揮するのは、スタッフ自身の成長意欲が高いときです。
それを、スタッフのモチベーションが下がっているときに発揮してしまうと、逆効果になります。
スタッフのモチベーションが下がっているときに求められるのは、支援型のリーダーシップなのです。
日本では、リーダーシップのある人間というと、ぐいぐい周りを引っ張っていくタイプを想像してしまいがちです。
ある程度、画一的なタイプの人材をそろえた職場、同じ業務が続く職場では、そうしたリーダーシップでも通用したかもしれません。
例えば、体育会系の人材ばかりを採用し、売り上げを上げることが至上命題の営業職が中心の職場などですね。
こういう職場では、達成志向型のリーダーシップが効果を発揮し、それ以外はあまり必要とされなかったのです。
しかし税理士事務所は、近年業務領域が広がり、採用競争の激化により多様な人材をうまく使いこなす必要があります。
そのため状況に応じて、様々なタイプのリーダーシップを使い分ける必要性が高まっているのです。
このパス・ゴール理論は、確かに使いこなすのは難しいのですが、知っているだけでも、ちょっと意識するだけでも、かなり効果があると思います。
知っておいて損のない知識、といえるでしょう。
さらに詳しく知りたい、使いこなせるようになりたい、などのご希望がございましたら、こちらよりお気軽にご連絡ください。
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