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確定申告後の3月は“離職の山場”。税理士事務所が今すぐやるべきスタッフケアとは

繁忙期で燃え尽きているスタッフのイラスト
確定申告が終わったタイミングは、離職のリスクが高まるタイミングです



1.確定申告後はスタッフケアの最重要タイミング


確定申告後はスタッフの離職リスクが一気に高まる時期です。


この原稿を書いているのは、3月13日。

確定申告時期が終わるまで、あと数日といったところです。

きっと今頃は、多くの税理士事務所がラストスパートに差し掛かっているのではないでしょうか。

毎年のこととはいえ、頭が下がる思いです。


ただ、この時期だからこそ税理士事務所の所長に伝えなければならないことがあります。

それは、確定申告が明けたタイミングであるリスクが急激に高まるからです。それが”離職リスク”です。


数日たてば、日常を取り戻し、スタッフは一見落ち着いたように見えるでしょう。

想像してみてください。

確定申告が終わった後、スタッフはどのような状態でしょうか。


きっと疲労のピークで、達成感と同時に虚無感が押し寄せているかもしれません。

中には「この働き方を続けられるのか」という不安が芽生えている人もいるのではないでしょうか。


確定申告時期は集中していても、それが終わったと同時に緊張の糸が切れ、ミスが増えやすくなります。そして何より離職リスクが最も高まるのがこの時期です。


私にも、確定申告が終わって少し経ったタイミングで「辞意を告げられた」という所長から相談が多くなる時期です。

しかしこれは、ちょっとの工夫で防ぐことも可能です。

そこで今回は、そのちょっとの工夫=スタッフケア、について整理していきたいと思います。




2.なぜケアが必要なのか


では、そもそもなぜスタッフのケアが必要なのでしょうか。

スタッフのストレスは個人的なことであり、そこまで事務所として面倒を見る必要はない、そのような考え方もある意味で正しいといえるでしょう。しかし近年の求人市場は非常に厳しく、一度退職者が出てしまうと、そう簡単にリカバリすることはできません。

そのため、スタッフのケアは年々重要になってきているのです。


そしてこの時期は、離職の山場です。

8月の税理士試験で人が動く時期を除けば、この業界での離職は3~4月が最多でしょう。

これは様々なデータから推測することができます。


税理士業界単独の月別離職データは公表されていません。しかし、確定申告の2~3月は求人サイトへのアクセスが徐々に増えていき、繁忙期が終わると「区切り」として退職・転職が起きやすいのは他業界でも一般的な傾向です。

さらに多くの転職サイトで、4~6月にいわゆる”欠員募集”が増加し、繁忙期明けに転職が活発化する、といった傾向が繰り返し指摘されています。


つまり、税理士業界の月別離職率を示す公的データは存在しないものの、繁忙期(2〜3月)終了後の3〜4月に離職・転職が集中する傾向が強いと、業界の実務者・転職市場の双方で広く認識されているのです。


その原因の多くがストレスによるもの。

だからこそ、そのストレスを緩和し、取り除くケアが重要になってくるのです。



3.この時期のスタッフが抱えやすいストレス


ケアをしていくためにも、まずはスタッフが抱えているストレスがどのようなものなのか、をみていく必要があります。


①身体的疲労

まず最初に表面化するのが「身体的疲労」です。

具体的には次のような状態が起きています。

  • 業務量の過多

  • 残業の増加

  • 睡眠不足

  • 集中力・判断力の低下

繁忙期が終わった瞬間に緊張が切れ、どっと疲れが押し寄せるため、ミスが増えやすいのもこの時期の特徴です。



②認知のゆがみ(自分だけが大変/評価されていない)

身体が疲れていると、物事の捉え方もネガティブになりがちです。


  • 「自分だけが大変な思いをしている」

  • 「頑張ったのに評価されていない」

  • 「もっとできる人がいるはず」

こうした“認知の歪み”が生まれやすく、自己評価が下がり始めます。

そして、認知が歪むと次に感情が揺れ始めます。



③感情の乱れ(虚無感・不安・怒り・落胆)

認知の歪みが続くと、次に感情が揺れ始めます。

繁忙期中は顧客対応が増え、催促や追加資料の依頼、時には理不尽なクレームも重なります。その結果、繁忙期後には以下のような感情が一気に噴き出します。


  • 虚無感

  • 不安

  • 怒り

  • 落胆

いわば “感情のエネルギーが枯渇した状態” です。



④ 価値観の揺らぎ(この働き方でいいのか?)

身体 → 認知 → 感情とストレスが積み重なると、最後に「価値観」が揺らぎます。


  • 「この働き方を続けられるのか」

  • 「もっと良い環境があるのでは」

  • 「この職場で働き続けていいのだろうか」


ここまで来ると、離職を考え始める最初のきっかけになります。

この段階に入ると、ケアだけで引き戻すのが難しくなるケースもあります。



この時期にスタッフが抱えるストレス階層をまとめると、以下のようになります。


【繁忙期後のストレス4層モデル】


┌──────────────────────────┐

│ ④ 価値観の揺らぎ(この働き方でいいのか?) │

├──────────────────────────┤

│ ③ 感情の乱れ(虚無感・不安・怒り・落胆) │

├──────────────────────────┤

│ ② 認知の歪み(自分だけが大変/評価されていない) │

├──────────────────────────┤

│ ① 身体的疲労(睡眠不足・集中力低下・判断力低下) │

└──────────────────────────┘


”疲労→認知→感情→価値観”というように、ストレスが層となって変化していきます。

つまり、④の価値観が揺らぎ、それによって引き起こされる離職につながる前にケアをしなければいけません。

そして、まず身体、次に感情、といった優先度がわかれば③、④につながる前に防止することができるのです。



4.今すぐできるケア施策



結論:繁忙期後のケアは「短時間・低負荷・承認中心」が最も効果的です


”この時期、スタッフへのケアをしなければいけない”。

それは理解しても、どうやればいいのかわからない、という事務所がほとんどです。

そのため「とりあえず飲み会でも開いて、スタッフをねぎらえばいいや」と従来型の手法に頼る所長も多いのではないでしょうか。


繁忙期明けの打ち上げ、慰労会として飲み会を開くことは否定しません。それどころか、しっかりとしたやり方をすれば、一定の効果があります。(飲み会の活用については過去の記事『税理士事務所の飲み会は必要か?効果とリスクを徹底解説』を参照ください)。


他にも、繁忙期後に決算賞与を与える事務所もありますね。

ただ、これはストレスがそこまで進んでいないスタッフに対しては有効ですが、一定程度を超えてしまうと効果はそこまで大きくなさそうです。

そこでここでは、事務所が比較的すぐに取り組める有効なケア施策について紹介していきましょう。


✔ 1on1(10〜15分)

繁忙期直後の1on1は、長時間やる必要はありません。

むしろ 短く・軽く・承認中心 が効果的です。

進め方

感謝 → 事実 → 次回に向けた希望、を伝える

・感謝:「本当に助かった」「あなたのおかげで乗り切れた」

・事実:具体的な行動を伝える(例:期限管理が正確だった、対応が丁寧だった)

・希望:「来年はここを一緒に改善したい」「あなたとならできると思う」

Point:

・評価ではなく“承認”に徹する

・改善点は深堀りしない(今は回復フェーズ)

・10~15分で終えることで、心理的負担を減らす


✔ チームでの「成功共有会」

繁忙期後はどうしても「ミス」「反省」に意識が向きがちです。しかし、疲れている時期に反省会をすると、スタッフの自己肯定感がさらに下がります。

そこで有効なのが “成功共有会”

Point:

・ミスではなく“うまくいったこと”にフォーカス

・お客様からの感謝の言葉があれば皆に伝える

・自分が成長したと感じた瞬間などを共有する

→チームの空気一気に明るくなり、スタッフの自己肯定感が回復、来年も頑張れるという前向きな気持ちを生み出す効果があります


✔ 業務棚卸しの前に「感情の棚卸し」

繁忙期後は、業務の振り返りよりも “感情の整理” が先です。

聞くべき3つの質問

・何がしんどかった?

・何が嬉しかった?

・どこが改善できる?

この順番が重要です。

いきなり改善点を聞くと「責められている」と感じやすく、逆効果になります。

Point:

・否定しない

・途中で口を挟まない

・感情を受け止めることに徹する

→感情が整理されると、スタッフは自然と”次”にむけて前向きになります。


✔ 休暇の取り方のガイドライン

繁忙期後に休んでいいよ、といっても遠慮して休まないスタッフも多いです。

だからこそ明文化が必要です。

しっかりと休暇を取得できれば、心身の回復が早まり、その結果ミスが減って組織の雰囲気が柔らかくなります。

●ガイドライン案

・繁忙期後の3~4月は、最低1~2日の休暇取得を推奨

・連休でも単発でもOK

・所長自身も休む(これが重要)

→”休んでもいい、という文化”を明文化することにより、スタッフは遠慮なく休暇を取り、回復をすることができます。


✨ この4つの施策は「小さくて強い」

これらの施策はどれも時間も、コストもかかりませんが、スタッフの心理状態を大きく改善し、離職リスクを下げる効果があります。

特に繁忙期後は”改善”よりも”回復”が優先

この順番を間違えないことが、来年の繁忙期を楽にする第一歩です。



5.ケアをしないとどうなるのか(未来のリスク)


ストレスは自然と消えるということはありません。

それどころか、繁忙期のケアをおこたると、むしろ見えないところで静かに蓄積し、数週間~数か月後に一気に表面化します。

ここでは実際の現場で起きやすい”未来のリスク”について見ていきましょう。


①離職リスクの急上昇

繁忙期後は税理士事務所の離職が多くなる時期です。


  • 「この働き方を続けられるのか」

  • 「頑張ったのに評価されていない」

  • 「もっと良い環境があるのでは」


こうした感情が重なり、“辞める理由”ではなく“辞めてもいい理由”が揃ってしまう のがこの繁忙期とその直後です。

ケアをしないと、スタッフは静かに転職サイトで”次”を探し始めます。



② ミスの増加 → 顧客満足度の低下

疲労が抜けないまま通常業務に戻ると、次のようなミスが増えます。


  • 入力漏れ

  • 添付忘れ

  • 期限の勘違い

  • 顧客への返信遅れ


これらは小さなミスに見えて、顧客からの信頼を大きく損ないます。

結果として、顧問先の離脱やクレーム増加につながる 可能性があります。



③ 組織の空気が悪化する

ケアがないと、スタッフ同士のコミュニケーションも荒れやすくなります。


  • ちょっとした言い方が刺さる

  • 相談が減る

  • 助け合いがなくなる

  • 「自分だけが大変」という認知の歪みが強まる


こうした空気は、放置すると組織全体の生産性を下げる“負の連鎖”を生みます。



④ 所長への不信感が蓄積する

繁忙期後のケアがないと、スタッフはこう感じます。


  • 「所長は現場の大変さをわかっていない」

  • 「頑張りを見てくれていない」

  • 「結局、数字しか見ていない」


この“不信感”は、改善施策を進める際の大きな障害になります。

つまり、ケアをしないと、改善の土台そのものが崩れる のです。



⑤ 来年の繁忙期がさらに厳しくなる

離職・ミス・空気の悪化が重なると、来年の繁忙期は確実に今年より厳しくなります。


  • 人手不足

  • 新人教育の負担増

  • ベテランの疲弊

  • 顧客対応の質低下


結果として、「毎年しんどくなる」負のスパイラル に陥ります。



✨ ケアは“甘やかし”ではなく、経営の投資

たまに私が「スタッフをケアしてください」、というと「なんでそこまで甘やかさないといけないんだ」として反感を持つ所長もいます。確かに数年前までは、税理士事務所の所長がスタッフのケアをする、という考え方自体が一般的でない時代もありました。

しかし、確定申告などの繁忙期後のケアは、単なる”優しさ”ではありません。

離職防止・生産性向上・採用コスト削減など、事務所経営に直結する”投資”です。


ケアをするかしないかで、来年の繁忙期の負担が大きく変わるとしたら、それは単なる「甘やかし」としてとらえてしまってよいのでしょうか。

次は、この”投資”という面から、ケアについて考えてみたいと思います。



6.ケアは採用コスト削減に直結する


繁忙期後のスタッフケアは、単なる”優しさ”や”気遣い”ではありません。

税理士業界では「採用できない」よりも「辞められる」ほうが圧倒的にコストが高いのが現実です。


税理士事務所の採用は年々難しくなっており、1人採用するためのコストは増加を続けています。


  • 求人広告費

  • エージェント費用

  • 面接・選考の時間

  • 入社後の教育コスト

  • 戦力化までのロス


多くの費用をかけても、同じレベルの人材を獲得できるかわかりません。それどころか、かなりの確率で戦力ダウンしてしまいます。つまり、辞めさせないことが最大のコスト削減です。

ここでは、ケアがどのように採用コスト削減につながるかを整理します。


✔ ① 離職率が下がる → 採用そのものが減る

繁忙期後の離職は、事務所にとって最も痛いダメージです。


  • ベテランが抜ける

  • 顧客対応が回らない

  • 新人教育の負担が増える


これらはすべて、採用コストを押し上げます。

しかし、繁忙期後に適切なケアを行うことで、「辞める理由」が消え、「続ける理由」が増えるため、離職率が大きく下がります。

結果として、採用の必要数そのものが減り、コストが一気に下がる のです。



✔ ② 組織の雰囲気が良くなる → 求人の応募率が上がる

ケアが行き届いている事務所は、スタッフの表情や雰囲気が明らかに違います。


  • 口コミが良くなる

  • 面接時の印象が良い

  • SNSや採用サイトの写真に“安心感”が出る


これらはすべて、募集広告を出した際に応募率を高める要因です。

特に税理士業界では、「雰囲気の良さ」が応募の決め手になるケースが非常に多いため、ケアは採用力の向上に直結します。



✔ ③ 定着率が上がる → 教育コストが下がる

スタッフが長く働いてくれると、教育コストが劇的に下がります。


  • 新人教育の回数が減る

  • ベテランが育つ

  • 顧客対応の質が安定する

  • 属人化が減り、業務が回りやすくなる


つまり、ケア → 定着 → 生産性向上 → 教育コスト削減という好循環が生まれます。



✔ ④ 採用ブランディングになる

「繁忙期後のケアを大切にしている事務所」というだけで、求職者からの印象は大きく変わります。


  • “人を大切にする事務所”

  • “働きやすい環境が整っている”

  • “長く働けそう”


こうしたイメージは、求人広告よりも強力なブランディングになります。

結果として、採用にお金をかけなくても人が集まる状態 に近づきます。



✨ ケアは「コスト」ではなく「投資」

繁忙期後のケアは、

  • 離職防止

  • 応募率向上

  • 教育コスト削減

  • 組織の安定化

これらすべてに直結する、最も費用対効果の高い経営施策です。

採用難の時代だからこそ、「辞めさせない仕組み」をつくることが、最大のコスト削減になります。



まとめ:繁忙期後のケアは来年の働き方を決める”分岐点”


確定申告を走り抜けた直後のスタッフは、疲労・虚無感・温度差・自己効力感の低下といった、複雑なストレスを抱えています。

そしてこの時期のケアは、

  • 離職防止

  • ミス削減

  • 組織の安定

  • 採用コスト削減

  • 来年の繁忙期の負担軽減

こうした“経営の根幹”に直結します。


ケアは決して甘やかしではなく、事務所の未来を守るための投資 です。

小さなケアを積み重ねるだけで、スタッフの表情も、組織の空気も、来年の繁忙期の景色も大きく変わります。


ただ、繁忙期後のケアは、事務所ごとに最適なやり方が異なります。スタッフの構成、業務量、所長のスタイル、顧問先の特徴──それぞれに合わせた“現場で機能する仕組み”が必要です。


もし、

  • どこから手をつければいいかわからない

  • 離職リスクが気になっている

  • 組織の空気を整えたい

  • 来年の繁忙期をもっとラクにしたい

そんな思いがあれば、気軽にご相談ください。


現場理解 × 組織改善 × ストレス構造の可視化この3つを軸に、あなたの事務所に合ったケア施策を一緒に設計します。


まずは状況をお聞きするだけでも大丈夫です。

まずは無料相談からお気軽にご連絡ください。



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