税理士事務所の業務に AI を導入!?
- 斉藤永幸
- 12月14日
- 読了時間: 6分
更新日:12月14日

2025年もいろいろありました。良いこと、悪いこと、たくさんありましたが、税理士事務所の今後を大きく左右することとして、世の中にAI が大きく広まった年、というのもあげられるでしょう。先日、ある方と税理士事務所でAI をどのように活用できるのか、についてお話しする機会がありました。その中で感じたのは「このままではAI 導入しない税理士事務所はかなり不利になるな」ということ、です。
話を伺う前は、私自身あまりAI について信用していない部分も大きかったです。生成AI などで画像が作れる、あとは検索などが便利になった、くらいでしょうか。私自身は記事を書いたり、雑誌等の編集なども仕事なのですが、周りにAI を使って効率的に記事を大量に作成している人もいます。ただ、そうした記事は精度が低く、手直しをするのも一苦労。そのため私の仕事の範囲にAI が全面的に導入されるのはまだ先の話だろうと考えていたのです。そして、税務会計業界もまた、AI を使ってもそこまで効率的にはならないだろう、と簡単に考えていました、しかし、話を聞いてみると単なる業務負担の軽減というだけでなく、様々な面で活用できることがわかってきました。
そこで今回の記事では、税理士事務所でAI を導入することによって、どんな変化が起きるのか、についてみていきたいと思います。
会計データ入力の負担軽減はそこまで大きく変わらない?
まず税理士事務所でAI の活用というと、会計データの入力などで利用できるのではないか、と考える方が多いでしょう。しかし結論から言うと、AI を導入しても、すぐに劇的に作業負担が軽減される、ということはありません。
AI-OCRによる領収書や請求書といった紙の証票をスキャナー等で取り込みを行います。これについてはすでに導入しているところもあるでしょう。ここから生成AIを使って仕訳入力をするのですが、導入してすぐは精度がそこまで高くありません。
AIを導入してすぐのころは、誤った仕訳を行ってしまうこともあります。そのため必ず「確認」作業をする必要があります。ただ、これは使えば使うほど精度が高まっていきますので、徐々に使いやすくなっていきます。完全自動ではないことに留意する必要があります。
ただ、金額、日付、取引先などは自動で抽出できるので、転記などの手間は大きく減ります。
こういった転記が求められる場面では、AIはかなり効果が高いですね。
税理士事務所では、様々な書類を転記しなければなりません。お客様からお預かりした帳票などはもちろん、メモなどを紙ベースで記録し、それをPCで保管する、といったことも多いでしょう。これをいちいちキーボードで入力するのはかなり時間がとられます。
こうした負担を、AI を活用したDX化で大幅に下げることができます。
例えばお客様へのヒアリングを録音し、データとしてAI で解析。議事録をAI で作成することができ、それを各書式に落とし込む、ということも可能です。今まではメモを取り、それをPCに打ち込み、そこから議事録を作成し…、と手作業でやっていたのを半自動化することができるのです。
これだけでもAI を導入する価値はあると思うのですが、税理士事務所で真価を発揮するのはいわゆる付加価値業務の部分です。
真価を発揮するのは付加価値業務
AI を導入している事務所と、AI を導入していな事務所。この二つの事務所で最も差が出るのは、いわゆる付加価値業務の部分です。
お客様の財務状況を把握し、そこから利益などを計算し、将来の目標に合わせてどう再投資をしていくのか。このような分析などはAI の最も得意とする部分です。お客様の経営にかなり踏み込んだサービスは、スタッフそれぞれの能力・スキルによって差が生まれてしまうので、どうしても属人的なものにならざるを得ませんでした。
しかしAI を活用することで、即座に状況を把握し、こうしたらこういった結果になる、という予想をつけやすくなるのです。そのためスタッフはこのデータを元に、お客様に合わせ状況を説明し、より深く検討を重ねることができます。これをお客様からデータをお預かりし、すぐにその場で行うことも可能です。
だからこそお客様は素早い経営判断をすることができるようになり、お客様の成長サポートに大きく貢献することができるようになるのです。
ここで注目したいのが、上場企業が求めるような複雑なものはやはり人間が状況に合わせて対応しなければならない、ということ。しかし中小の税理士事務所のお客様の大部分は、小規模~中小企業がほとんどです。求められる情報などもある程度決まってきますので、素早く、正確なデータ処理といったAI の特性を最も発揮することができるのです。
例えばお客様と話しながら、決算からどのような数値が導き出され、そこからどんな予想がつくのか、といったものをまとめたデータを見ながら話をすることができるのです。さらに会話の中で、あのデータはどうだった?などがあがってもすぐに柔軟な対応ができるようになり、お客様の満足度が向上します。
重要なのはコストパフォーマンス
実はAI を使わなくても、上記のような業務は行うことはできないことはないでしょう。ただ、そのためには非常に高額な費用が発生します。それに対し、AI を使うことで、非常に費用を抑えることができます。
特に現在は、IT導入補助金があるため、さらに費用を抑えることができます。この補助金を使えば、補助率2分の1まで、上限は150万円までまかなうことができます(ITの業務プロセスが4つ以上の場合は上限450万円まで、また最低賃金近傍の事業者は補助率3分の2まで)。
そのため中小規模の税理士事務所であっても、十分負担できるだけのコストでAI の活用をスタートすることができるのです。
ただ、注意したいのが、AI を導入する際、しっかりとそれが自分たちの業務に役立てることができるのか、を確認することです。
前にDXという言葉が流行った時、多くの企業が社内のDX化を進めました。その中には、システム的にはすごい技術が使われていて、使いこなせばそうとうな効果があるだろう、というものでも、実際の業務にはあまり役立たないというものもたくさんありました。
AI はあくまでツールの一つです。どんなに高性能なものでも、それを使うことによってどんな効果を上げ、事務所の利益や発展につなげることができるのか、といった視点から判断しなければならないでしょう。しかし、しっかり活用できるようにAI を導入できれば、他の税理士事務所よりサービスの質を高め、顧問料の引き上げなどによる利益の増加や、作業負担の低減などによるコストの低下、といった効果を生み出すことができます。
この機会にあなたの事務所も、AI の活用について考えてみませんか?
税理士法人へのAI 導入などの実績のあるシステム会社におつなぎすることも可能ですし、税理士事務所とシステム会社の間に立ち、調整などのご相談も可能です。
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