補助金・助成金は活用しなければ損
- 斉藤永幸
- 12月11日
- 読了時間: 9分

しっかり補助金・助成金の活用はできていますか?
事務所で何か新しい事業展開をしたり、人材を雇う際、何かと活用できる補助金・助成金。しかし税理士事務所で活用しているところと、ほとんど活用していないところ、両極端に分かれているようです。補助金などの活用ができているところは、そのノウハウをお客様に提供し、補助金・助成金の獲得支援を一つのサービスとして確立しているところもあります。一方、補助金などを利用していないところはまったくやっていない、というところも。
補助金・助成金というと、企業が対象と思いがちですが、税理士事務所でも活用できるものが多く、活用しないというのはもったいないのです。しかも、近年問題となっているものについての補助金・助成金が多いので、その獲得を目指すことで事務所の体制整備が進む、といった側面もあります。
そこで今回は税理士事務所の補助金・助成金の活用について考えてみたいと思います。
税理士事務所での補助金・助成金を利用しようとなると、思いつくのがほとんどが採用に関することだと思います。実際、採用に関する補助金・助成金は数多く、また使いやすいものが多いのも事実。もし新たに採用を検討しているのであれば、補助金・助成金を念頭に置いてやってみても良いかもしれません。
人に関する補助金助成金
先日、ある税理士事務所から「シングルマザーの採用をしたいんだけど」という相談がありました。
会計データ入力で人手が必要、ということは知っていたのですが、なぜわざわざシングルマザーに限定したのか、その理由を聞いたところ、助成金を申請したいから、というのです。調べてみると、確かに税理士事務所でも使いやすい助成金でした。この助成金は特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)というもので、就職が難しい人を雇用すれば助成金を受け取ることができる、というものです。
その対象となるのが、母子家庭の母親、高齢者(60歳以上)、ウクライナ避難民、身体・知的障碍者、などです。母子家庭の母親、つまりシングルマザーであれば、短時間の勤務でも40万円、フルタイムでの雇用であれば60万円にもなります。その事務所はフルタイムでのパート雇用なので、採用コストも安く、約2か月分の給与も助成金で充当できる、と考えたようでした。
また、税理士事務所でよく使われているのが、キャリアアップ助成金です。
これは有期雇用労働者を正社員化する際、助成されるもの。正社員化後の給与が3%以上増えている、などの要件がありますが、非常に使いやすいですね。注意が必要なのが、有期雇用契約を向きの正社員契約に切り替える、という点です。そのため入社時は契約社員として雇うことになります。その後、試用期間中は契約社員として、それが終わったら正社員として再契約という形ですね。ただ、その場合は契約社員で募集を行う必要があります。
求職者の多くは契約社員より正社員での雇用を希望しています。そのため採用に対するハードルが高くなってしまう可能性があります。
他にもトライアル雇用助成金というものもあります。
中高齢者、ひとり親家庭の親など、就職が困難な求職者をハローワークなどを経由して3か月間試用雇用する制度です。多くの税理士事務所が試用期間を3か月設けているので、制度などを変更せずともすぐに活用できるのがポイントです。
その分、こちらは助成額は少なく、対象者1人につき月最大4万円、合計12万円となります。そのため無理に狙う必要はないかもしれませんが、そうした対象の人を雇用する場合、申請するのを忘れた、とならないよう頭の片隅に止めておいても良いかもしれませんね。
また、採用時に直接というわけではありませんが、人材確保等支援助成金というものもあります。これは事務所などが人材確保やスタッフの定着支援事業を行った際に、助成金が支給されるというものです。「都道府県知事から改善計画の認定を受け、労働局長から実施系カウの認定を受け、労働環境向上事業を実施すること」が要件になります。
けっこう要件は厳しいのですが、うまく活用できれば助成額は大きいですね。また、その中には20万円と助成額は少ないのですが、テレワークコースというものもあります。コロナ禍などのタイミングですでにテレワークを導入している事務所も多いかと思いますが、これからテレワークを導入しようとする事務所は健闘してみても良いかもしれません。
また税理士事務所の多くが、研修などでスタッフのスキルアップなどに支援を行っています。それに対して助成金を支給するものもあります。それが人材開発支援助成金です。
これは訓練や研修などを実施した際に、訓練期間中の経費および賃金の一部を助成する制度です。この助成金の特徴は7つものコースがあり、中には定額サービスのいわゆるサブスクリプションによる研修などでも助成される、というものも。
小規模の税理士事務所の中には、研修を充実させたいけどコストの面でなかなか踏み切れない。そういったところもあるかもしれません。この助成金を利用できれば、コストを下げつつ研修内容を充実させる、といったことも可能かもしれません。
また、世の中の流れを感じるものとして、両立支援等助成金というものもあります。
これは男性の育児休暇を取得しやすい雇用環境整備や業務体系整備を行い、育児休業を取得した男性スタッフがいた場合、事務所に支給されるというもの。近年は女性だけでなく男性の育児休業に注目が集まっています。そのため男性でも育児休暇を取得した、という事務所も増えています。そうした際に利用できるのがこの助成金です。一人目の育休取得で20万円、二人目、三人目で10万円の助成金が支給されます。
子育てに対して理解のある事務所は、採用では有利に働きます。特に男性の育休取得実績がある事務所は、求職者にも評価が高いですね。
この助成金を活用し、育休まわりの制度を見直してみる、というのも効果的といえるでしょう。
他にも使えるかもしれない補助金・助成金が
税理士事務所でもっとも活用されているのがキャリアアップ助成金です。確かに使いやすいのですが、他の補助金・助成金については濃淡がはっきり分かれます。それでもまだ、「人」に関する助成金については関心を持つ事務所もありますが、それ以外についてはあまり知られていません。
そこで、税理士事務所でも状況によって活用できる補助金・助成金についてまとめました。
まず事務所を開業する前の税理士が、独立・開業をする際に考えたいのが『創業助成事業』です。東京都などで行われており、助成額は100万円~400万円、補助率は3分の2と非常に大きいです。事務所を開業する際は何かと資金が必要となりますので、開業を目指す税理士はぜひ覚えておいた方が良いでしょう。
次に考えたいのが小規模事業者持続化補助金です。商工会の伴走などを受けつつ、小規模事業者が販路開拓や生産性向上を目的として行う取り組みを支援する補助金制度です。例えば税理士事務所がホームページなどを作成し、新たな顧客を開拓したい、といった場合にも活用できます。他にもチラシの作成や設備導入などにも使えますし、ブランディングに使うことも可能な場合があります。
補助上限額は最大で250万円、補助率は3分の2です。
税理士事務所でぜひ活用したいのがIT導入補助金です。これは非常に使いやすい補助金ですね。特徴は助成額5万円~150万円で補助率が最大4分の3と高いこと。ITに関連することならば幅広い領域をカバーしています。例えばITツールの導入やPCやタブレットの購入などにも使うことができます。
近年では税理士事務所をターゲットとしたサイバー攻撃などのリスクも高まっているので、こうした補助金を使えばコストを大幅に下げることができます。他にも労務管理システムを導入し、残業時間を減らしたり、基幹システムを導入して事務所のDXを推進し業務の効率化を図ったりなど、様々な目的に使うことができます。
また、近年では税務会計業界ではM&Aが活発に行われています。例えば、所長が高齢化してお客様をどこかに引き継ぎたいとM&Aを行って事務所を売却したい、という相談を受けることもあります。こういった事務所を承継したり、M&Aを行う場合は、事業承継・M&A補助金、というものもあります。
この補助金は50万円~2000万円と補助額が大きく、補助率も3分の2、または2分の1と、うまく活用できれば大きなプラスとなりますね。
こうした補助金・助成金は申請が面倒で、苦労して申請したので補助金・助成金の支給が却下されることもあります。そのため中には補助金・助成金についてあまり良いイメージを持っていない事務所もあるかもしれません。
しかし、それだけの苦労を負ってもやるだけの価値がある補助金・助成金は多いのです。特にIT環境整備や労働環境整備は、いつかは手を付けなければいけません。本気で取り組むと、かなりコストがかかってしまうため、そこを補助金・助成金で補えるというのは非常に大きいのです。
また、補助金・助成金は税理士事務所で活用するという意味でも重要ですが、事務所のお客様である中小企業などにはさらに価値の高い情報です。直接、お客様の補助金・助成金の申請をサポートしない場合でも、こんな補助金・助成金がありますよ、と伝えるだけで喜ばれることが多いですね。
補助金・助成金は世の中の流れで新しいものが生まれ、利用されないものは廃止されていきます。この記事で取り上げた補助金・助成金でも、タイミングによってはすでに締め切られていた李、募集が終わっている、というものもあります。次年度で再募集する場合もありますし、今回で終わりというものもあります。実際に補助金・助成金を活用しようとした際には、必ず実施をしている機関のHPをチェックしたり、直接問い合わせるなどして、確認してから勧めるほうが良いでしょう。
また、新しい補助金・助成金の制度も生れてきます。定期的に情報をチェックするよう心掛けると良いでしょうね。
こうした情報も随時発信していきます。興味を持っていただけましたらブックマークしていただければ幸いです。もっと詳しく話を聞きたい、という方はこちらから直接お問い合わせください。
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