税理士事務所でのWeb研修・教育の活用
- 斉藤永幸
- 11月10日
- 読了時間: 6分

研修・教育制度を整えたのに、利用されない悩み
最近、ある税理士事務所からスタッフの教育について相談がありました。
「Webで自由に研修を受けることができるようにしたんですが、ほとんど利用されません。今の若い人は自分たちを成長させようという意欲が足りないのではないですかね」というのです。
近年、Webの研修サービスを各社が競争して開発しており、その結果個人事務所や小規模税理士事務所でも気軽に導入できるリーズナブルなものも増えてきました。
しかし税理士事務所でのWeb研修は、うまく活用できているところと、導入したはいいけど効果がほとんど上がっていないところとで、大きな差が生まれてしまっています。
上記の言葉のように、研修を導入したのだが、スタッフの利用率が低いというところも実は多いですね。
ただ、これはスタッフからしてみたら、ある意味当然のことだともいえるでしょう。
なぜなら優先順位が低いからです。
スタッフの置かれている状況を考えてみましょう。
まず、そこまで成長に意欲のない人は、そもそも新たに学習などをすることを嫌います。
そのため必要に迫られなければ、自由に受けることができる研修などは利用しないでしょう。
次に、成長意欲の高いスタッフは、学べる環境だったらどんどん学ぶだろうし、Web研修なども利用してくれる、と思うかもしれません。
しかしそれが間違いです。
こうしたスタッフは多くの場合、税理士資格取得のためにすでに勉強に取り組んでいます。
通勤の合間や終業後、土日などを使って勉強に取り組んでいる状況で、さらにWebで新たな知識を身に着けるための勉強をするでしょうか?
それだったらまずは少しでも資格取得の勉強を進めたい、と感じるでしょう。
そのため、税理士試験の勉強>事務所でのWeb研修、という優先順位となり、なかなか利用してくれないのです。
ただ、こうしたWeb研修は実務で求められる知識が身につくものも多く、事務所としてはしっかり活用し、スキルアップに取り組んでもらいたいのも事実。
これができればお客様へのサービスの質が向上し、ひいては事務所にも大きなプラスになります。
そこで求められるのは、研修などを活用する仕組みづくりです。
研修を受ける意味は何か
まず重要なのは、事務所ではなく、スタッフが研修を受けることによって得られるメリットについて考えてみましょう。
スタッフが研修を受け、スキルアップすると、次のような効果があると考えられます。
・業務の質が上がり、提供できるサービスの幅が広がってお客様に喜ばれる
・事務所の利益向上に貢献できる
・スタッフ個人の市場価値を高めることができる
などが挙げられます。
まずはこれをしっかりスタッフに周知することが重要です。
単に「研修の制度を導入したから、自由に受けてね」では利用されなくて当然です。
研修を受けることで、どんな効果が期待でき、自分たちのやりがいにつながるのか、待遇が向上するのか、そしてどんな可能性を得ることができるのか、などを認識してもらう必要があります。
それとともにマネジメントも重要です。
例えばスタッフから質問があった時、単に「ここはこうだよ」というのではなく、「この研修プログラムでそれについて振られ羅れているから一度見ておくといいよ」など、誘導していくのです。
そこで実際に役立つ知識を身に着けることができれば、次に何かあったら研修を受けてみよう、という動機づけになります。
そして何より、時間の確保です。
税理士試験の勉強をしている人は、そもそも勉強の時間は試験勉強でいっぱいです。
その時間を削って、研修を受けることは難しいでしょう。
かといって業務の量は変わらず、研修を受けるには自分たちで時間を調節し、どこかで研修を受ける時間をひねり出さなければいけません。
そのため研修を受ける時間を、事務所としてしっかり設定してあげると効果的です。
例えばある事務所では、毎日始業後30分間、Webで研修を受けるようにしているところもあります。
他にも、週に1時間はWeb研修を受けるよう義務化し、そのための時間をスタッフごとに割り振っているところも。
例えばAさんは月曜日、Bさんは火曜日…、というようにして終業前1時間、1人ずつ研修を受け、その穴を皆でフォローする体制を作っているのです。
他にも、研修を受ける時間を評価基準に盛り込み、昇給の条件にしたり、研修で得た知識を業務に生かすことで得た利益をインセンティブで還元する、というところもありますね。
このように研修がスタッフの利益に直接つながったり、活用するための制度・仕組みを導入することで利用率は高まります。
より効果的にするためには
そして研修は、ただ受けて終わり、というだけではあまり効果はありません。
それをどう活かすか、という視点が必要です。
問題はすぐに研修で得た知識が活かせるとか限らないことです。
例えば研修で相続についての知識を得たとしても、相続の案件がなければ活かせません。
鉄は熱いうちに、ではないですが、研修を受けてから数か月してから、相続が入ったから研修で学んだ知識を、といってもモチベーションは下がってしまいます。
そこでお勧めしたいのが、研修を活かして勉強会を定期的に開くことです。
社内で勉強会を週に1度~月に1度のペースで開催し、そこで研修で学んだことなどをスタッフ間で共有させるのです。
研修を受けたスタッフにとっては、他のメンバーに知識を伝えることで
ある事務所では、毎週金曜日、午前中を勉強会に充て、1人15分程度で発表、それについて皆で15分ほど質疑応答、これを毎回4人分行っているそうです。
ちょっとした効果として、これを行ってから、自然と興味が分散していったそうです。
例えばAさんは法人税の申告での細かいポイントの研修を受けることが多く、Bさんは事業承継について深く学ぶようになった…、といった具合です。
それぞれが得意分をを自然と身に着けるようになったのです。
すると研修を受けていないメンバーも、この問題なら○○さんに質問すれば、となり頼られることでさらに深く学ぶ意欲につながっているようです。
このように研修などは「導入しただけ」では、その価値はほとんどありません。
しかし、しっかり活用できればスタッフのスキルアップにつながり、事務所の利益が向上し、さらに所内でのコミュニケーションも活発になって離職率が低下する、などプラスの効果がかなり大きくなります。
このような研修の定着などについてもお手伝いをしておりますので、興味がございましたらこちらよりお気軽にお問い合わせください。



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