税理士事務所がやるべき、顧問先に合わせた資料づくりの基本
- 斉藤永幸
- 1月21日
- 読了時間: 8分

近年、税理士事務所はサービス業という意識が強まってきています。
そのため顧問先には「何を」「どうやって」伝えるのか、が求められるようになってきました。
「何を」伝えるのかは、専門家である税理士事務所のスタッフの得意分野でしょう。しかし問題になっているのが、「どうやって」伝えるのかの部分。以前であれば、それくらいは自分で調べて、ということも顧問先にかみ砕いて理解してもらう必要があるのです。税理士事務所は専門知識を持った人の集まりであり、所内で当たり前に使っている言葉が、顧問先には理解されない、といったこともよくあります。
だからこそ顧問先に”合わせた”言葉を使って、顧問先に”合わせた”資料を使って、説明をしなければなりません。言葉の使い方などは、直接研修・指導などでなければなかなか伝えられませんが、資料についてはITリテラシーに着目し、ちょっとしたコツがあれば顧問先に”伝わる”資料を作ることができます。
そこで今回は『顧問先に合わせた資料づくりのコツ』についてお伝えしたいと思います。
資料づくりの大前提:カテゴリー分けをして標準化
私が記事を書く際、注意していることが「読者はどんな人物なのか?」ということです。記事を書いても、読んだ方が理解をしてくれなければ意味はありません。
税理士事務所の資料も同じではないでしょうか。
実際、私が携わっている事務所でも、このような声をよく聞きます。
「説明したのに伝わらない…」
「資料を渡しても読んでもらえない…」
「ITが苦手な顧問先にどう説明すればいいかわからない…」
これは顧問先に合った資料になっていないことが原因ということが多いですね。どんな人に向けた資料なのか、によって資料の作り方を変えるのは当たり前なのです。ただ、税理士事務所のスタッフは15件や20件、多い事務所だと30件以上の担当を持つこともあります。そうした顧問先、一人ひとりに合わせて資料を調節するのは大変です。
そこでお勧めしたいのが、ある程度カテゴリー分けをしてしまう、ということです。
例えば、以下のようにカテゴリー分けを行います。
タイプ | 特徴 | 資料の方向性 |
A:IT強い層 | クラウド会計・チャット・共有フォルダを使いこなす | 情報量多め・データ中心 |
B:普通層 | スマホ・PCは使えるが専門用語は苦手 | 図解・例え話・ステップ形式 |
C:弱い層 | メール添付も不安、紙文化が強い | とにかくシンプル・1枚資料 |
注意したいのが、これをスタッフ一人ひとりが決めるのではなく、事務所で基準を作成し、それを共有することです。各々が作成し、好き勝手にカテゴリー分けを行うと属人化が進んでしまい、別の問題が発生します。
逆に、このカテゴリー分けを事務所で共有することで業務が標準化され、ノウハウとして蓄積でき、競争力につながります。
こうしてカテゴリー分けがあれば、資料を作る際の前提となり、説明のストレスが激減します。
ではこれを元に、どのように資料を作っていけばいいのか、具体的な”コツ”を見ていきましょう。
コツ①:専門用語を“翻訳”する
税理士事務所の中で話している言葉は、一般の人には理解できないものが非常に多くあります。それを”伝わる言葉”に変換する必要があります。
例えば、
「仕訳」→「お金の動きを記録する作業」
「月次」→「毎月の経営の成績表づくり」
「固定資産」→「長く使う大きな買い物」
専門用語を“日常語”に置き換えるだけで理解度が跳ね上がります。
コツ②:図解で“関係性”を見せる
人は文章よりも「関係性の図」のほうが圧倒的に理解しやすくなります。
例えば以下のようなものは言葉より図で表現したほうが良いでしょう。
月次の流れ(資料提出 → 記帳 → チェック → 報告)
決算の全体像
税金の仕組み(利益 → 税金 → キャッシュ)
特にB・C層には、図解1枚で説明できる資料が最強です。
ここでイラストなども使えると、さらにわかりやすくなります。

図で使いやすいイラスト、例えば上記のように商品=段ボール、お金=コインや札束、みたいなアイコンのイラストを所内で共有しておくと、図解は意外と簡単に作成できます。
コツ③:情報量を“3段階”に分ける
これは顧問先のリテラシーに関係なく、説明する際の3段階に分けると伝わりやすくなります。
例えば要点を伝える際は、
結論・数字・次のアクション
のように3つに分けて伝えます。
さらにこれを3段階にすると効果的ですね。
要点だけの1枚(結論・数字・次のアクション)
補足説明(理由・背景・注意点)
詳細資料(データ・計算根拠・スクショ)
このような構造にすることで、
C層は要点の1枚だけ見せればOK
B層は補足まで説明すれば理解してもらえる
A層は細部まで詳細資料で確認することができる
具体的にはこのようになります。
要点1枚: 今月の利益・キャッシュ・次のアクション
補足資料: 売上推移・粗利率・注意点
詳細資料: 会計データのスクショ・仕訳の根拠
このように”全方位対応”ができるのです。
コツ④:スクショは“余白多め”
税理士事務所の資料は、とかく情報量が過密になりがちです。
できるだけ多くの情報を伝えようという気持ちはわかります。しかし資料に数字がびっしり並んでいたりすれば、それだけで圧倒されてしまいます。
だからこそ資料をスクショする際は、余白を多くし、伝えるべき情報量を調節しましょう。
画面全体をそのまま載せない
必要な部分だけを赤枠で囲む
手順は1ステップ1画像
1ページに載せるスクショは最大2つまで
これだけで「わかりやすい!」と言われる確率が上がります。
コツ⑤:顧問先の“行動”に合わせて資料を作る
そもそも顧問先に渡す資料は何のために作るのでしょうか?
説明することは大前提として、その資料は「読むため」のものではなく「行動してもらうため」にあるのではないでしょうか。
だからこそ構成がシンプルで、次に何をすればいいか、が明確なものほど良い資料となります。
資料提出の締切を守ってほしい → カレンダー形式
クラウド会計を使ってほしい → 手順書+動画リンク
経営数字を見てほしい → グラフ+一言コメント
このように行動を促せるような資料だと、事務所からこんな行動をしてもらいたいんだな、という意図が伝わります。
コツ⑥:資料の“トーン”を顧問先に合わせる
顧問先に合わせてトーンを変えることができると、さらに好感を得ることができます。
例えば、
若い経営者 → カジュアル・図解多め
ベテラン経営者 → 落ち着いた色・文字大きめ
製造業 → 写真・現場イメージ
サービス業 → 事例・ストーリー
ちょっとした工夫かもしれませんが、これだけで顧問先の受ける印象は大きく変わりますよ。
コツ⑦:資料は“現場でテスト”して改善する
顧問先に向けて作った資料は、うまく伝わった・伝わらなかった、に関わらずノウハウの塊です。それはその価値は、改善への道しるべになるからです。
ここまで様々なコツを紹介してきましたが、いきなりすべてを網羅した資料を作るのは難しいでしょう。だからこそ、最初は改善していくことを前提にはじめてみることをお勧めします。

顧問先に説明してみる
つまずいたポイントをメモ
図解・言葉・順番を修正
次の顧問先で試す
改善点を盛り込んで資料を作成する
資料作成でもこうしたPDCAを回していくことによって、資料の質がどんどん上がっていきます。
まとめ:顧問先に合わせた資料作成は競争力そのもの
顧問先に合わせた資料づくりは、単なる“親切”ではありません。サービスの業務品質であり、税理士事務所にとっての 競争力そのもの です。専門知識を持つ側が「伝わる形」に変換できるかどうかで、顧問先の理解度も、行動のスピードも、満足度も大きく変わります。
そして、今回紹介したようなコツは、特別なスキルが必要なわけではありません。
カテゴリー分けで前提をそろえる
専門用語を翻訳する
図解で関係性を見せる
情報量を段階化する
行動を促す構成にする
トーンを合わせる
現場で改善する
こうした小さな工夫の積み重ねが、結果として「伝わる資料」を生み出します。
資料は“作って終わり”ではなく、顧問先とのコミュニケーションをより良くするためのツールです。ぜひ今日から、顧問先のITリテラシーを意識しながら、あなたの事務所らしい“伝わる資料”づくりに取り組んでみてください。
資料づくりは単なるデザインではなく、事務所の“業務品質”そのものです。顧問先の理解度が上がれば、問い合わせも減り、スタッフの負担も軽くなります。「資料の標準化」「説明の見える化」を進めたい事務所様は、ぜひ一度無料相談からご連絡ください。 事務所の状況に合わせて、最適な資料づくりの仕組みをご提案します。
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