事例紹介:税理士事務所の新入社員研修2026
- 斉藤永幸
- 5月23日
- 読了時間: 9分

「教育しているのに新人が育たない」
これは多くの税理士事務所で起きている問題です。
「税理士事務所は人が財産」という言葉をよく聞きます。
そのため多くの税理士事務所で教育に力を入れていますが、実際にどのような研修を行ったらいいのか迷われているところも多いようです。特にこの時期「他の事務所では入社してくる新卒にはどのような研修を行っているのか」といった問い合わせをいただくことも多いですね。
そんな中、TaxOffice-Supportでは、協力会社とタッグを組み毎年新卒研修を行っているところがあります。この研修はかなり好評で、すでに3年目に突入。今後は入社3年目研修や5年目研修などもお願いできないか、という打診を受けています。
ただ、この研修はいわゆる”研修会社”が提供するものとは特徴や狙いなどが異なっています。しかし税理士事務所のスタッフが必要となるビジネススキルを身につけるための、最初の一歩としてはかなり有効であると自負しています。
ぜひ参考にしていただけると幸いです。
1.研修の枠組み
まず、新卒が入社して必要となる研修は、大きく分けて3種類あります。
・理念研修
・実務研修
・ビジネス研修
理念研修は、自分たちが働く事務所がどういう場所か、を知り帰属意識を身につけることが目的となります。そのため事務所の設立経緯や沿革、そして理念などを学ぶことになります。これは事務所によって異なるため、自分たちでやらなければならない初期教育となります。
次に実務研修です。多くの事務所で、入社後まずは仕訳入力などから実務がスタートします。そのために必要な会計ソフトの使い方や、基礎的な簿記の知識、さらにコピー機やスキャナーといった機器の操作方法などを学ぶことになります。
同時並行で基礎的な税法の教育を行うこともありますが、これは各事務所の教育方針によって少しずつ異なっています。
そして、TaxOffice-Supportが提供している新卒研修は、最後のビジネス研修にあたるものです。
名刺の受け渡しや電話のかけ方、受け方、といったビジネスマナーから、ビジネスパーソンなら最低限知っておかなければいけない基礎知識や心構えなどを学ぶのがこのビジネス研修です。必要なビジネスマナーなどについては外部の研修講師を招いて実施するところもありますが、ほとんどはそれにとどまっています。
実は多くの税理士事務所で非常に弱いのが、このビジネスパーソンとして必要な知識を学ぶ研修です。その結果、専門知識はあってもコミュニケーションスキルが低い人材や、精神的な問題で退職する人材が多い、そうした課題を抱えている事務所も少なくありません。
それを補い、リスクを減らすのが新人研修の役割の一つです。
では今年、私たちが提供した研修はどのようなものなのか、について見ていきましょう。
2.TaxOffice-Supportの新入社員研修プログラム2026
今年、実施した新入社員研修は以下のような内容になっています。
Aパート
1、研修の目的とGOAL
2、私の自己紹介
3、社会人としての基本
4、挨拶の基本
5、自己紹介は武器になる
6、身だしなみ
7、名刺交換のマナー
8、電話応対
9、訪問マナー
10、商談の進め方
11、ビジネススキルを学ぼう
12、ツキを呼ぶ魔法の言葉(言葉遣いや姿勢が人間関係に与える影響)
13、研修の締め
Bパート
1、コミュニケーションの重要性について
2、スケジュール管理とタスク管理
3、手帳・メモの有効活用(PDCA)
4、報連相の実践
5、手紙、FAX、メールの書き方
6、Web上でのコミュニケーション
7、健康管理は仕事の基礎
8、コンプライアンスとリテラシー
9、AIの活用(基礎編)
10、マーケティングの基礎
・SWOT分析
・4P戦略
11、マンダラチャートを作ってみよう
12、アイデアの出し方、考えのまとめ方
実は私が新入社員研修に携わるようになったのは、多くの税理士事務所や企業で行われている”外部”の新入社員研修を見たことがきっかけでした。
採用のサポートでお手伝いしたところから、入社するスタッフの研修について相談を受けたのです。そこでいくつかの研修会社に実施プログラムの内容と見積もりをお願いしたところ、一般企業には有効でも税理士事務所には不足がある、という結論になりました。
まず費用面で半日(3~4時間)で10~20万円。1日研修で15~20万円かかります。それだけの短時間なので、名刺の受け渡し方や電話のとり方、上座・下座の考え方や敬語の使い方……。いわゆる”ビジネスマナー”の基礎的な研修で終わってしまいます。
しかし、税理士事務所の新入社員に必要なのは、ビジネスマナーだけなのでしょうか?
もちろんビジネスマナーも必要です。しかしそれ以外にも必要なものはたくさんある、と考え自分たちで作り上げてきたのがこの新入社員研修です。
特徴的なのがAパート、Bパートの2部構成となっており、実施期間は2日間。
それぞれのパートを1日ずつというのではなく、Aパートを半日、Bパートを半日。翌日、残りをまたそれぞれ半日ずつ行っていきます。Aパートはより実践的な内容で、すぐに使える内容になっています。それに対し、Bパートは理念的な部分も多く、より広範な内容を含んでいます。
3.なぜこの研修が必要なのか
この研修の肝となる部分は、自走できる人材になるための基礎固めです。
実際、この研修プログラムの内容を紹介すると「なんで新入社員にマーケティングの知識などが必要なのか?」という質問が寄せられます。
確かに税理士事務所のスタッフに、マーケティングの知識などは必要ない、と考える人は多いでしょう。しかし税理士事務所のスタッフは、経営者と話をする機会も多いにもかかわらず、そもそも経営者がどのような思考をするのか、といったことがわからないのです。だからこそ”お客さまである企業がどのような考え方で、どんな事業を行っているのか”について興味を持って取り組めるような基礎を作ることが重要だと考えました。
以前、日本の多くで存在していた体育会系的な組織では、上意下達で言われたことは意味を考えずに実行することが美徳とされてきました。しかしそこには大きなリスクがあります。それが一定割合で精神的なダメージを与えてしまう、ということです。
人は意味がないことをやり続けるのは大きな苦痛です。
「この作業にどんな意味があるのだろう」
それが見えない状態が続くと、人は急激にモチベーションを失います。
新入社員は社会の仕組みをあまり知りません。そんな中で「自分のやっていることはどんな意味があるのだろう?」という疑問がよぎると、一気に精神的に追い込まれてしまうのです。特に数字と向き合い、作業の割合が多い環境だからこそ、自分のやっている”仕事の意味”を知る、その基礎を作ることが重要だと考えています。
4.目標と日々やるべきこと
そしてこのプログラムを見ただけだとわかりにくいのですが、随所にもう一つの意図が隠されています。それが”目標を定め、タスク化に落とし込む”ことです。そのうえでPDCAを回し、自ら成長できる環境を作っていける道しるべとしたいのです。
若い人材はそれぞれに目標を持って新しい職場に飛び込んできます。
しかし、しばらく経つとこの目標は日々の現実の中に埋もれ、流されてしまいがちです。そうなると仕事は”惰性”となってしまいます。
どうすればこれを防ぐことができるのでしょうか。
その答えがタスク化だと考えています。
人は大きな目標のために前進し続けることは難しいものです。しかし日々、小さな”やること”を明示すれば、意外と続けることができます。
だからこそ目標→自己分析→タスク化→実行、といった工程が必要となります。そのうえで、状況を見ながらPDCAを回していく。これにより日々の仕事に意味が生まれます。
この目標設定や自己分析、タスク化に有効なのが、マーケティングで使われるフレームワークです。
同時に、この考え方自体はMAS会計とも同じであり、早い段階で身につけておけば、将来より高度な会計サービスを展開する際の下地にすることができます。
まとめ:
新入社員研修にはいくつかの目的があります。
しかし税理士事務所の多くが「業務に必要な知識を身につける」というところだけに注目してしまい、その結果他の業界では当たり前に行われている部分を研修で補えていないのではないでしょうか。
先日、研修が非常に充実している事務所を訪問したのですが、研修内容を見ると確かにかなりの充実度でした。Webでの研修プログラムがいつでも受講できるようになっており、週に1度は各部内での勉強会。月に1度は全体研修。さらに外部研修も積極的に活用しており、スタッフは必要だと思うスキルを身につけるために様々な講座を事務所負担で受講できるようになっていました。
ただしそれで成長できるのは、ある程度の基礎が備わった人にとっては、です。
実はこの事務所、入社後1~3か月での離職が非常に多いのです。
その多くが「先輩たちのようになることはできない」と感じて退職するというのです。
研修で様々なスキルを身につけ、勉強会に意欲的に取り組む先輩たちを見て、萎縮してしまった結果退職につながってしまう。これらは「成長したい」という気持ちはあっても、自分自身の将来像を具体的に描けていないことから起きてしまっています。
税理士事務所の仕事は、単なる作業ではありません。
お客さまの経営や人生に関わる、非常に責任の大きな仕事です。だからこそ、専門知識だけでなく、「なぜこの仕事をするのか」「どんな価値を提供しているのか」を理解し、自ら考えて動ける人材を育てていくことが重要なのではないでしょうか。
もちろん、教育に絶対的な正解はありません。事務所の規模や方針、スタッフ構成によって必要な研修も変わってきます。
ただ、もし今、
・新人がなかなか定着しない
・指示待ちになってしまう
・顧客対応力が育たない
・教育を頑張っているのに成果につながらない
そんな悩みを感じているのであれば、一度「何を教えるか」だけでなく、「なぜそれを学ぶのか」という部分から見直してみる価値はあるかもしれません。
TaxOffice-Supportでは、税理士事務所向けの新入社員研修や教育体制づくりについてのご相談も承っています。
「自分たちの事務所にはどんな教育が必要なのか」「今の若手にどう向き合えばいいのか」
そんな段階からでも構いません。
現場を見てきた立場だからこそ、お手伝いできることがあると考えています。
「今の教育方法で本当にいいのだろうか」
そんな疑問を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。
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