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値上げしてもお客様が離れない税理士事務所の料金表とは:構造化のポイントを解説

更新日:1月29日


価格競争に巻き込まれて争う税理士事務所のイラスト
価格競争に巻き込まれると、顧問料の引き上げは非常に困難です


先日、SNSを見ていてこんな投稿を目にしました。 「税理士業界は非常に厳しい。年々業務量は増えるし、問題があれば責任は重いのに顧問料は上がらない」そんな投稿に、思わずスクロールする手が止まりました。

以前は税理士の広告などが規制され、地域で限られたお客様を相手にしていた税理士業界も、ネットなどで集客が可能になったことで価格競争などもあり、一時は低価格の税理士事務所がブームのようになったこともありました。しかし近年では採用コストの増加から極端な低価格事務所は減ったものの、顧問料が低く抑えられ、経営が苦しい事務所も多いようです。


そこで今回は料金表を切り口に、顧問料の値上げについて考えてみたいと思います。



1.なぜ”値上げ”はこんなに難しいのか


顧問料と業務量の不均衡は、税理士事務所の生産性と持続性を大きく左右する問題です。

作業量が多く、スタッフへの負担も大きくなっているのに、顧問料が上がらない。そのしわ寄せがスタッフのストレスになり、経営を圧迫している事務所も多いのです。

そこで以前税理士事務所の顧問料値上げを成功させる“心理設計”完全ガイドという記事で、お客様の心理的ハードルを下げる伝え方、などを考えてみました。しかしそれだけでは顧問料の値上げには不十分なところがあります。


ではなぜ顧問料を上げるのは難しいのでしょうか。

その理由は税理士業界にはサービス内容と価格の標準化がほとんど存在していないからです。


ある事務所では5万円、別の事務所だと2万円、と値段に大きなばらつきがあります。中身をよく見てみると、料金の高い事務所は多くの業務がパッケージとなっており、安い事務所では基本的な業務以外は別料金になっているなど、統一された表記になっていないため、お客様にはその内容が伝わらず、単なる価格競争になりがちなのです。

価格競争が激しいと「値上げを切り出した瞬間に解約されるのではないか……」そんな不安が所長の判断を鈍らせてしまうのです。


しかし、値上げしても選ばれる事務所は存在します。

特に料金表を丁寧に作り込み、価値が伝わる形で提示できているところは値上げしても顧客離れを起こさないどころか、新規の契約が増えています。

そうした事務所ではどのような工夫をしているのでしょうか。



 2. 値上げしても選ばれる事務所の料金表は3つの共通点が


値上げをしても選ばれている事務所には、大きく分けて3つの共通点があります。これを順番に見ていきましょう。


① 料金の“理由”が明確に言語化されている

  • 「なぜこの価格なのか」が説明できる

  • 逆に、理由が曖昧だと値上げは通らない


② 付加価値が“見える化”されている

  • 顧客が理解できる形で提示されている

  • サービス内容が“パッと見で分かる”状態


③ 料金表が“比較されても負けない構造”になっている

  • 単純な金額比較ではなく、価値比較に誘導できている


値上げをしても選ばれている事務所は、言語化がうまいのが特徴です。

単に「最近人件費が上がってしまって……」などの理由での値上げはお客様は納得しません。しっかりと、なぜこの値段なのか、その根拠が明確な事務所は、お客様も値上げに納得感があります。同時に、その根拠の部分が”比較されても負けない構造”となっているため、価格競争ではなく価値で比較されるため、選ばれ続けているのです。


ではこうした根拠とともに価格をしっかり提示できるようになるにはどうすれば良いのでしょうか。

それは価格の見せ方から考えていくことをお勧めします。



 3. 価格の見せ方:値上げを成功させるデザインと構造


顧問料の値上げを成功させるためには、単に金額を引き上げるだけでは不十分です。「価格の構造をどう見せるか」が、顧客の納得度を大きく左右します。

ここでは、多くの税理士事務所で成果が出ている3つの方法を紹介します。


🔹 A. 「基本料金+オプション」で構造化する

まず重要なのは、顧問料を“全部込み”にしないことです。

伝統的に税務会計業界では、すべてひっくるめて「顧問料」というコミコミの料金設定をしています。これがお客様から頼まれたことはすべてやらなければいけない=膨大な契約外業務、という状況を生み、作業量と顧問料の不均衡を生む大きな要因になっています。

そこで効果的なのが、「基本料金+オプション+追加対応」という3層構造に分ける方法です。


  • 基本料金(必須)

    月次処理・決算など、全顧客に提供する最低限のサービス

  • オプション(選択)

    給与計算、年末調整、経営相談など、顧客が必要に応じて選べるサービス

  • 追加対応(都度)

    イレギュラー対応や突発的な作業


この構造にすることで、お客様は「必要なものだけを選んでいる」という感覚を持ち、納得度が高まります。


┌──────────────┐

│ 基本料金(必須)      │ = 月次処理・決算

└──────────────┘

┌──────────────┐

│ オプション(選択)     │ = 給与、年末調整、経営相談

└──────────────┘

┌──────────────┐

│ 追加対応(都度)      │ = イレギュラー対応

└──────────────┘


このように“構造化”して見せるだけで、価格の根拠が明確になり、値上げの説明がしやすくなります。



🔹 B. 「3つの料金プラン」で比較させる

次に効果的なのが、3つの料金プランを用意する方法です。


  • ベーシック

  • スタンダード

  • プレミアム


人は選択肢が3つあると、極端な安さ・高価格を避け、真ん中を選びやすいという心理があります。この“真ん中効果”を活用することで、事務所が提供したいプランに自然と誘導できます。


例:3プラン比較表

プラン

内容

月額

ベーシック

相談中心(メールや電話での相談対応)

11,000円~

スタンダード

月次+相談(年3回の訪問+相談対応)

33,000円~

プレミアム

経営相談+税務全般(財務分析まで含む)

55,000円~

これはあくまで例なので、数字や内容などは調整が必要です。

ここでポイントになるのは、次の3点。


  • 真ん中の「スタンダード」を少し強調

  • 含まれるサービスを明示し、比較

  • 「この価格でこれだけ入っているのか」という印象を与える

特に、スタンダードプランに「事務所として提供したい価値」を集約しておくと、顧客の選択が安定します。



🔹 C. “価格の理由”をセットで書く

値上げを成功させるうえで最も重要なのは、価格の理由を明確に伝えることです。

顧客は「高いか安いか」ではなく、“なぜその価格なのか”を知りたいのです。

たとえば、次のような一文を添えるだけで、価格の納得度は大きく変わります。


  • 「月次レビューを毎月実施し、経営判断をサポートするため」

  • 「チャット相談は24時間以内に返信する体制を整えているため」

  • 「税務調査時の対応をすべて代行し、負担を最小化するため」


このように、価格の裏側にある価値や体制を言語化することで、値上げは“理由のある改善”として受け止められます。



✨ まとめ:価格は「見せ方」で納得度が変わる

  • 料金を3層構造に分ける

  • 3つのプランで比較させる

  • 価格の理由をセットで伝える

この3つを押さえるだけで、顧問料の値上げは格段に成功しやすくなります。



4.付加価値の言語化:お客様が理解できる言葉に変換する


私も最近は慣れてきましたが、この業界に携わるようになって最初に感じたのが言葉の違いです。簿記や会計をやっている人には当たり前の言葉でも、それ以外の人には通じないものが多いのです。

そのため税理士事務所の業務に付加価値があるのか、を説明しても、お客様からすると”見えにくい”と感じてしまうのです。

だからこそ、言葉を具体的なものに変換する必要があります。


 抽象的な表現 → 具体的な価値の言い換え例


抽象表現

お客様が理解できる言い換え

月次監査

「毎月、数字の異常値をチェックし、早期に問題を発見します」

経営相談

「利益を増やすための具体的な改善案を毎月1つ提案します」

税務調査対応

「調査官とのやり取りをすべて代行し、負担を最小化します」

記帳代行

「領収書を渡すだけでOK。経理担当者を雇う必要がなくなります」

こういう”翻訳”ができると、料金の説得力が一気に上がります。

この説得力をさらに活かすには、どうすれば良いのでしょうか。



5. 図解で「料金の構造」を見せると強い


図解は、価格の根拠を“直感的に理解してもらう”ための最も強力な手段です

料金表を作るうえで、金額だけを並べるのは得策ではありません。お客様が本当に知りたいのは”なぜその価格になるのか”という理由と、”その価格に見合う価値はあるのか”ということです。

その理由を直感的に伝えられるのが、図解による料金の言語化です。

図解を使うことで、次の3つの効果が生まれます。


理由①:顧客は“構造”を見ると安心する

人は、情報が整理されていると「この事務所はしっかりしている」と感じます。料金の構造が図で示されているだけで、「何を頼んだら、どこまでやってくれるのか」が一目で分かり、顧客の不安が解消されます。

逆に、文字だけの料金表は「何が含まれているのか」が分かりにくく、顧客は無意識に不安を抱えたまま比較することになります。


理由②:価格の根拠が視覚的に伝わる

値上げをするときに最も重要なのは、“理由の説明”です。しかし、文章だけで説明するとどうしても伝わりにくいのです。

そこで図解を使うと、「価値が積み上がるほど、料金が上がるのは当然」というメッセージを視覚的に伝えられます。


(図解イメージ)


価値(Value)

│ ┌──────────────┐

│ │ 経営支援(高度)      │

│ └──────────────┘

│ ┌──────────────┐

│ │ 月次レビュー        │

│ └──────────────┘

│ ┌──────────────┐

│ │ 基本処理(必須)      │

│ └──────────────┘

└────────────────→ 料金(Price)


こうした図をイラストなどで作成し、お客様に示すことで「基本処理だけの顧問料」と「経営支援まで含む顧問料」が違うのは当然だ、とお客様自身が納得してくれます。


理由③:比較されても負けない

多くの税理士事務所は、料金表を“金額だけ”で提示しています。そのため、顧客はどうしても「安い方がいい」という判断をしがちです。

しかし、価値の構造を図解で見せている事務所は、金額ではなく“価値”で比較されるようになります。


  • 「この事務所は月次レビューまでやってくれる」

  • 「経営支援が含まれているなら、この価格は妥当」


こうした“価値基準での比較”に誘導できるため、単純な価格競争に巻き込まれにくくなります。


まとめ: 図解は「値上げの納得感」を作る最強のツール

図解で料金の構造を見せることで、

  • 顧客の不安が消える

  • 価格の理由が伝わる

  • 他事務所との比較で負けなくなる

という3つの効果が同時に得られます。つまり、図解は単なる“見やすさ”のためではなく、値上げを成功させるための戦略的な武器なのです。



 6. 結論:値上げしても選ばれる事務所は“説明できる事務所”


ここまでお読みいただけた方はご理解いただけると思うのですが、顧問料の値上げは単に金額を上げる作業ではありません。大切なのは「なぜその価格なのか」をお客様にきちんと説明できる状況を作ることです。

そのために必要なのは、次の4つです。


  • 価格の理由が言語化されている

    └ どんな体制・どんな価値に対して料金が発生しているのかを明確に伝えられる


  • 付加価値が見える化されている

    └ 月次レビュー、経営支援、相談体制など、目に見えにくい価値を“理解できる言葉”に変換する


  • 料金表が構造化されている

    └ 基本料金・オプション・追加対応を整理し、顧客が選びやすい形にする


  • 図解で“納得感”を作っている

    └ 価値の積み上げやサービス範囲を視覚的に示し、価格の根拠を直感的に理解してもらう


この4つが揃うと、値上げは“負担”ではなく、「この事務所はしっかりしている」という信頼の証になります。

実際、料金表を整備した事務所では、値上げ後も顧客離れが起きないどころか、むしろ新規契約が増えるケースも珍しくありません。


ただ、今回紹介した内容は、一般的な事務所に広く適用できる基本形にすぎません。料金表の作り方、値上げに向けた言語化・図解化は事務所ごとに最適な形が異なります。


  • どこまでを基本料金に含めるべきか

  • どんなオプションを設定すると選ばれやすいか

  • 事務所の強みをどう言語化すれば伝わるのか

  • 図解をどう作れば“価値”が伝わるのか


これらはノウハウや経験が必要になってくる部分でもあります。

もし、

「うちの料金表も見直したい」

「値上げしたいけど、どう伝えればいいか不安」

という場合は、気軽に無料相談からご連絡ください。

料金表は、一度整えるだけで数年先まで効果が続く“投資”です。

あなたの事務所の強みを引き出しながら、“選ばれる料金表”を一緒に作っていきましょう。



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