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税理士事務所の残業を生む「資料が集まらない問題」の正体

資料が集まらない問題をイメージするイラスト
資料が届かないと業務が遅れ、それがスタッフのストレス増加の原因になります

年末年始、そして2月からの確定申告。税理士事務所では、この時期どうしても残業が増えてしまいます。なぜ毎年同じように残業が発生するのか。その大きな要因のひとつが、「お客様から資料が集まらない問題」です。

いくら催促しても資料が届かない。その結果、提出期限ギリギリに集中し、残業してでも処理しなければならない。こうした状況に心当たりのある事務所は多いのではないでしょうか。


この問題を解決するだけで、実際に残業を大幅に減らした事務所があります。

以前取材した事務所は、繁忙期でも残業ゼロでした。その理由は、10月に入ったくらいから徐々に資料を集め始め、1月に入ったすぐの時点で前月の12月分までの資料のほとんどを集め終わっているそうです。そこから少しずつ作業を進めているので、残業ゼロにもかかわらず2月中には8割の確定申告が終わってしまうのだといいます。


そこで今回は、この”資料が集まらない問題”にスポットを当て、どうやってお客様に伝えればスムーズに資料が集まるのか、について考えてみました。



1.なぜ”資料が集まらない”のか


税理士事務所や士業、経理などのバックオフィスの現場では、「お願いしているのに資料が届かない」という悩みが常に付きまといます。毎月の月次、決算、年末調整、相続、融資サポート──どんな業務でも“資料が揃わない”ことがボトルネックになり、生産性を大きく下げてしまいます。


多くの事務所は、この問題を「仕組み」や「ツール」の不足だと考えがちです。チェックリストを作る、クラウドストレージを導入する、管理表を整える……、もちろんこれらも重要です。しかし、実際にはその前段階でつまずいているケースが非常に多いのです。

それは、“伝え方”が相手の行動を引き出す設計になっていないということ。

資料が集まらないのは、相手が怠けているからでも、協力的でないからでもありません。ほとんどの場合、依頼の伝え方が「分かりにくい」「動きにくい」「優先度が伝わらない」状態になっているだけなのです。


つまり、資料回収の問題は“相手の問題”ではなく、こちら側のコミュニケーション設計の問題。伝え方を少し変えるだけで、資料の集まり方は驚くほど改善します。



2.資料が集まらない3つの根本原因


資料が集まらない背景には、単なる“忘れ”や“怠慢”ではなく、コミュニケーション設計の問題が潜んでいます。多くの事務所が見落としているのが、相手が行動しづらい状態を自ら作ってしまっているという事実です。ここでは、資料が集まらない原因を3つの視点から整理します。


①相手にとって”負担が見えない”

お客様が「何を、どこまで、どの形式で出せばいいのか」をイメージできないと、動きは鈍くなります。よくある「とりあえず全部ください」という依頼は、実は最悪の伝え方です。“全部”の範囲が人によって違うため、相手は迷い、結果として後回しにしてしまいます。

必要な資料が具体的に示されていないと、相手は「これで合っているのか」という不安を抱えたまま作業することになります。不安があるタスクは、どうしても着手が遅れます。


② 相手にとって“優先度が低い”

こちらにとっては重要な資料でも、相手にとっては日々の業務の中の“ひとつの作業”に過ぎません。そのため、期限の意味や重要性が伝わっていないと、どうしても優先度が下がります。

「今週中にお願いします」「できれば早めに」

こうした曖昧な依頼では、相手の中で“緊急性ゼロ”として扱われてしまいます。さらに、資料を出さないことでどんな不都合が起きるのか(申告が遅れる、追加作業が増えるなど)が伝わっていないと、行動の必要性を感じてもらえません。


③ 相手が“行動しやすい状態”になっていない

資料を出す行為そのものが、相手にとって“面倒”になっているケースも多くあります。

  • 送付方法が複数あって迷う

  • どこに送ればいいか毎回探す

  • 写真でいいのか、PDFが必要なのか分からない

  • 今すぐやる理由が弱い


こうした状況では、相手は「後でやろう」と判断しがちです。行動のハードルが少しでも高いと、人は簡単に先延ばししてしまいます。



資料が集まらない3つの根本原因

資料が集まらないのは、相手の性格や姿勢の問題ではありません。“負担が見えない” “優先度が伝わらない” “行動しづらい”という3つの要因が重なることで、自然と資料が集まらなくなるのです。



3. 行動を引き出す“伝え方”


では、この”資料が集まらない”問題に対し、どのように対処すれば良いのでしょうか。それは、お客様に行動を促す伝え方に翻訳する必要があります。

この伝え方に、大きく分けて4つの原則があります。


原則1:具体化

  • 「必要な資料」→「この3点だけ」

  • 「早めに」→「◯月◯日(火)17時まで」


原則2:理由の提示

  • 「決算作業に入るため」

  • 「この資料が遅れると申告が間に合わない可能性があるため」


原則3:行動のハードルを下げる

  • 送付先リンクを1つに統一

  • 写真でOK、PDF不要など“最低限ライン”を明示

  • テンプレートを渡す


原則4:相手のメリットを添える

  • 「早く出すほど、還付が早くなります」

  • 「資料が揃えば、追加質問が減ります」


まず、いつまでに、何の資料が必要なのか、を明確に示す必要があります。そしてその資料が必要になる理由を挙げたうえで、どうやって送るのか、その手段を添えます。そして、資料がそろうことでのメリット、そして資料がそろわなかった場合のデメリットなどを提示することで、具体的な行動を促すのです。

具体的には、下記のようになります。


⭕良い伝え方の例

「◯月◯日(火)17時までに、以下の3点だけお送りください」

「スマホで領収書を撮影すればOKです。送付先はこのLINEにそのまま送ってください」

「この資料が揃うと、追加質問がほぼゼロになります」


❌悪い伝え方の例

「資料を早めに送ってください」

「必要な資料を全部ください」

「できるだけ今週中にお願いします」


ちょっとした言い方の問題と思うかもしれませんが、これだけでお客様の行動はかなり変わってくるでしょう。



4.“伝え方”を仕組みに変える方法


このように伝え方をちょっと変えるだけで、資料の集まり方は変わってきます。

ただ、重要なのはこれを属人化させないこと。担当者ごとに伝え方がばらついてしまうと、お客様の混乱を引き起こし、かえってそれが資料が集まらない要因になってしまうこともあります。

つまり、個人のスキルに依存している状態では、どれだけ改善しても再現性が生まれません。そこでここからは、伝え方を”属人技”から”仕組み”へと変えるための具体的な方法を紹介していきます。


■ 毎月の依頼文をテンプレート化する

毎回ゼロから文章を作ると、どうしても表現が曖昧になったり、抜け漏れが発生します。そこで、毎月の依頼文をテンプレート化しておくことで、誰が送っても一定の品質を保てるようになります。


  • 必要資料のリスト

  • 期限

  • 送付方法

  • 注意点

  • 相手のメリット


これらを“型”として固定しておくと、依頼の精度が一気に上がります。

(テンプレートの実例を記事の最後にお付けします、参考にしてみてください)


■ チェックリスト化して迷いをゼロにする

依頼文だけでは伝わりきらない部分を補うのがチェックリストです。「何を」「どこまで」「どの形式で」出せばいいかを明確にし、相手の迷いを完全に取り除きます。


  • 写真でOKか

  • 金額が必要か

  • 全ページ必要か

  • どの月の資料か


こうした“判断ポイント”を事前に示すことで、資料の質とスピードが大幅に改善します。


■ 送付方法を1つに統一する

送付方法が複数あると、相手は迷います。「メールでもLINEでもDropboxでもOKです」は、実は不親切な案内です。


  • 送付先は1つ

  • 迷わない導線

  • クリック1回で送れる状態


これだけで、資料提出のハードルが劇的に下がります。


■ 依頼文の「型」を事務所全体で共有する

担当者ごとに依頼文が違うと、相手は混乱します。また、事務所としての品質も安定しません。

そこで、依頼文の“型”を事務所全体で共有し、誰が担当しても同じ流れ・同じ品質で依頼できる状態を作ります。


  • 必要資料の伝え方

  • 期限の書き方

  • 理由の伝え方

  • 相手のメリットの添え方


これらを統一することで、事務所全体のコミュニケーション品質が底上げされます。


目標:新人でも同じ品質で依頼できる状態を作る

この仕組み化の目標は、新人でもベテランと同じ品質でお客様に資料の送付を依頼できる状態を作ることです。これは”伝え方の仕組み化”ができている事務所だけが実現できます。

テンプレート、チェックリスト、送付方法の統一、依頼文の型、これらがそろえば新人でも迷わず依頼ができ、資料の回収率が安定します。

属人化がなくなることで、事務所全体の生産性も大きく向上しますよ。



まとめ:資料が集まる事務所は“伝え方”がうまい


こうしたノウハウは、先に紹介した“確定申告時期でも残業ゼロ”を実現している事務所で実践されている方法を、私なりに整理・改良し、多くの事務所で活用できるようにしたものです。


ポイントは、伝え方を事務所として統一していること。その事務所では、お客様とのコミュニケーションがしっかり“型”として整備されており、メールのテンプレートも豊富に用意されています。その結果、入社したばかりの新人スタッフでも、お客様に“伝わる”コミュニケーションができる状態になっていました。


実際にテンプレートを見せてもらいましたが、どれも簡潔で明瞭。「伝え方がうまい」と素直に感じるものばかりでした。


ここから分かるのは、「伝え方」は個人のセンスではなく“設計”であるということです。

税理士事務所の求人では「コミュニケーションスキルの高い人」を歓迎要件に掲げることが多いですが、どれだけ厳選して採用しても、属人的なスキルに頼っている限り、お客様とのやり取りにはどうしてもバラつきが生まれます。それでは、事務所全体の生産性を高めることはできません。


お客様とのコミュニケーションは、設計し、改善し、仕組みに落とし込むことで初めて事務所の生産性を押し上げる力になるのです。

今回紹介した内容は、どれも難しいものではありません。今日から取り入れられる小さな工夫が、資料回収率を大きく改善し、スタッフの負担を減らし、事務所全体の生産性を高めていきます。


「資料が集まらない……」というストレスから解放され、スタッフが落ち着いて仕事に向き合える、そんな事務所を作りたい方。

まずは気軽に無料相談よりご連絡ください。

あなたの事務所の状況に合わせて、“明日から使える”伝え方の仕組みづくりを一緒に考えます。


(こちら↑より資料を依頼するメール文のテンプレートをダウンロードできます)



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