なぜ税理士事務所は新卒採用で失敗するのか
- 斉藤永幸
- 5 日前
- 読了時間: 21分

なぜ税理士事務所の新卒採用はうまくいかないのか。
なぜ税理士事務所の新卒採用はうまくいかないのか**
先日、100名規模の大手税理士法人から新卒採用について相談を受けました。 中途採用では安定して成果を出している事務所ですが、新卒だけはうまくいかないというのです。
毎年数名は採用できているものの、 「ミスマッチが起きる」 「すぐ辞めてしまう」 「思ったように育たない」 といった問題が繰り返されている。
採用担当者が漏らした 「新卒採用はわからないんです」 という一言は、この業界全体の本音でしょう。
大手でさえ苦戦しているのですから、中小規模の事務所ではなおさらです。 実際、新卒採用がうまくいっている事務所は10〜20%程度。 「若手を育てよう」と挑戦したものの、数年で断念した例も珍しくありません。
一方で、深刻な人手不足から新卒採用に踏み切る事務所は増えています。 しかし現実は、
応募が来ない
採用できても続かない
育たない
という“採れない・続かない・育たない”の三重苦。ではなぜ、税理士事務所の新卒採用はここまで難しいのか。それは、 業界の構造的な問題と 事務所内部の仕組み不足 が複雑に絡み合っているからです。
業界として若者にアプローチする仕組みが弱く、 事務所内部には新卒を受け入れる体制が整っていない。 さらに、中途採用中心でやってきた歴史が、新卒採用の判断基準を曖昧にしている。
こうした背景が、新卒採用の難易度を他業界以上に高めています。
今回の記事では、税理士事務所が新卒採用でつまずく理由を整理し、 事務所として整えるべき点、 業界として取り組むべきアクションを考えていきます。
新卒採用は単なる人手確保ではなく、 業界の未来をつくる“変革の起点”です。
失敗原因1:繁忙期が採用期間に重なってしまう
税理士事務所の新卒採用がつまずく最大の理由のひとつが、繁忙期の長さです。 12〜3月の年末から確定申告期は、どの事務所も業務がピークに達し、採用どころではなくなります。
本来、新卒採用は「早期準備が9割」。 夏前から動き出し、秋には説明会やインターンを行い、冬には選考を進める―― これが他業界では当たり前のスケジュールです。
しかし税理士事務所では、この時期がちょうど繁忙期と重なります。
説明会の準備ができない
面接のスケジュールが確保できない
じっくりと選考している余裕がない
結果として、採用が“付け焼き刃”になりやすいのです。
さらに問題なのは、繁忙期が終わる3月には、すでに多くの学生が就職先を決めてしまっていること。 税理士事務所が動き出す頃には、母集団が大きく減っているという現実があります。
つまり、税理士事務所は構造的に 「採用で最も重要な時期に動けない」 というハンデを背負っているのです。
採用は業務の合間にやるものではなく、仕組みとして回すもの。
しかし税理士事務所の年間サイクルは、その仕組みを阻害しているのです。
これが、新卒採用がうまくいかない最初の大きな理由です。
失敗原因2:教育体制が弱く、受け入れ準備が整っていない
税理士事務所の新卒採用がうまくいかない理由の二つ目は、 教育体制の弱さと、受け入れ準備の不足です。
多くの税理士事務所では、長年「経験者採用」が中心でした。 そのため、業務の進め方や知識の習得は、先輩の背中を見て覚える“OJT頼み”になりがちです。 マニュアルや研修カリキュラムが整っていない事務所も少なくありません。
これは、中途採用であれば大きな問題になりません。 経験者なら、ある程度の知識や実務感覚を持っているため、 「教えなくてもできる」前提で仕事が回ります。
しかし、新卒はまったく違います。
会計・税務の基礎知識がない
社会人経験もゼロ
仕事の全体像がつかめない
何を質問していいかも分からない
つまり、新卒は“育てる前提”で受け入れなければならないのです。
ところが、税理士事務所の多くはこの前提が抜け落ちています。
● 受け入れ準備が整わないまま4月を迎えてしまう
さらに問題を深刻にしているのが、税理士事務所特有の年間サイクルです。
2〜3月は確定申告で手一杯。 4月入社に向けた研修計画や教育体制の整備をする余裕がありません。
そして4月、新卒が入社してくる。 しかし準備は不十分のまま。
研修内容が曖昧
教える担当者が決まっていない
仕事の説明が場当たり的
新卒が何をすればいいか分からない
こうした状態でスタートしてしまうのです。
● 追い打ちをかける「5月の3月決算」
4月に受け入れ準備が整わないまま始まり、 ようやく落ち着くかと思えば、5月は3月決算のピーク。現場は再び多忙になり、 新卒に構っていられない状況が続きます。
結果として、新卒は放置されやすくなり、
仕事の全体像がつかめない
相談しづらい
自信を失う
早期離職につながる
という悪循環が起きてしまうのです。
● 本質:新卒採用は“受け入れと育成”が本番
新卒採用は、採用できた瞬間がゴールではありません。受け入れと育成が本番なのです。
しかし、税理士事務所の年間サイクルと教育体制の弱さが、 この“本番”を成立させにくくしています。
これが、新卒採用がうまくいかない二つ目の大きな理由です。
失敗原因3:中途採用の経験が、新卒採用を難しくしている
税理士事務所の新卒採用が難しい理由の三つ目は、 中途採用中心でやってきた“成功体験”が、新卒採用の判断を狂わせていることです。
税理士事務所は長年、即戦力となる中途採用で人材を確保してきました。 そのため、面接や選考の基準は自然と
実務経験があるか
どれだけの担当件数を持っていたか
税理士試験の科目合格があるか
どんな業務をどれだけ任せることができるか
といった“経験ベース”に最適化されています。
これは中途採用では非常に合理的です。 経験者なら、入社後すぐに戦力として活躍できますし、事務所側も教育コストを抑えられます。しかし、この基準をそのまま新卒に当てはめると、途端に判断ができなくなります。
● 新卒には「経験」がないため、評価軸が機能しない
新卒には実務経験も担当件数もありません。 科目合格を持っている人も非常に少なく、将来の活躍を決める要素ではありません。
にもかかわらず、面接ではつい中途採用と同じように
「どれくらい会計を勉強してきた?」
「税理士試験は科目持っている?」
「どんな業務ができる?」
といった“経験前提”の質問をしてしまう。
当然、新卒は答えられません。 すると面接官は判断に迷い、結果として
話が上手い学生が高評価になる
伸びしろのある学生を見逃す
面接官ごとに評価がバラバラになる
という事態が起きます。
● 「どんな新卒を採ればいいのか」が分からない
中途採用では“できる人”を採れれば成功でした、しかし新卒採用は“伸びる人”を採らなければいけません。
この違いが、事務所にとって大きな壁になります。
伸びる学生の特徴が分からない
どんな質問をすれば見極められるのか分からない
そもそも「良い新卒」の定義が事務所内で共有されていない
結果として、採用基準が曖昧なまま面接が行われ、 “なんとなく良さそう”という印象で採用が決まってしまうケースも少なくありません。
● 本質:中途採用の基準を新卒に当てはめると必ず失敗する
新卒採用は「ポテンシャル採用」であり、 中途採用とはまったく別の評価軸が必要である。
にもかかわらず、税理士事務所は長年の中途採用の成功体験に引きずられ、 評価軸を作り直すことができていない。
これが、新卒採用がうまくいかない三つ目の大きな理由です。
失敗原因4:業界全体に“新卒を育てる文化”がない
税理士事務所の新卒採用が難しい理由の四つ目は、 業界全体として“新卒を育てる文化”がほとんど存在しないことです。
税理士業界は長年、中途採用が中心でした。 税理士試験制度の特性もあり、実務経験を積みながら資格取得を目指す人が多く、 「経験者を採る」「科目合格者を採る」という採用スタイルが当たり前だったのです。
その結果、業界全体に以下のような文化が根付いてしまいました。
未経験者を育てる前提がない
若手が少なく、ロールモデルがいない
教育ノウハウが蓄積されていない
“できる人を採る”ことが前提になっている
これは、他業界とは大きく異なる点です。
● 歴史的背景:かつては「税理士事務所=独立予備校」だった
税理士業界が新卒育成に消極的だった背景には、 “独立前提の時代”がありました。
かつて税理士事務所に就職する人の多くは、 「数年働いて経験を積み、様々な事務所を転々と転職しスキルを身につけ、将来は独立する」 というキャリアを積む人が多かったのです。
そのため所長側には、
門戸を広げると将来の競合を増やす
若手を育てても数年で辞めてしまう
育成に投資しても回収できない
という心理が働き、 外に開かない“閉鎖的な文化”が形成されていったのです。
● しかし今は状況がまったく違う
現代の若者は、 独立よりも 安定・働きやすさ・組織でのキャリア形成 を重視します。独立開業を目指す人の割合は少なくなり、税理士事務所のスタッフとして働き続けることを希望している人が大半を占めるようになりました。
また事務所側も、「長く働いてくれる人」「組織を支えてくれる人」 を求めるようになりました。
つまり、 “競合を増やすから門戸を閉じる”という発想は、今の時代には合わないのです。
にもかかわらず、業界文化だけが昔のまま残ってしまっている。 これが、新卒採用が根付かない大きな理由です。
● 若手が少ない → ロールモデルがいない → 新卒が育たない
業界全体で若手が少ないため、 新卒が入っても「目指す先輩」がいません。
20代の先輩がいない
30代の中堅も少ない
気軽に相談できる相手がいない
小規模な事務所ではそのような環境も珍しくありません。そうした環境では、新卒が仕事のイメージを持ちにくく、 不安や孤独感を抱えやすくなります。
結果として、 早期離職につながりやすい構造が生まれてしまうのです。
● 本質:業界全体が“育成前提”に変わらなければ、新卒採用は根付かない
税理士業界は、未経験者を育てる文化が弱すぎる。 この構造が変わらない限り、新卒採用は定着しません。
事務所単体の努力だけでは限界があります。 業界全体が「若手を育てる」方向に舵を切らなければ、 新卒採用は一部の事務所しか成功しないままです。
これが、新卒採用がうまくいかない四つ目の大きな理由です。
失敗原因5:事務所の魅力が言語化されていない
税理士事務所の新卒採用がうまくいかない理由の五つ目は、 事務所の魅力が言語化されていないことです。
多くの税理士事務所は、採用活動において条件面は詳細に検討していても、「何を伝えるべきか」が整理されていません。 そのため、学生に向けた情報発信が弱く、他の事務所との差別化ができないまま採用活動に臨んでしまいます。
● 学生は“税理士事務所の違い”が分からない
学生にとって、税理士事務所の違いは非常に分かりにくいものです。
どの事務所も同じように見える
仕事内容のイメージが湧かない
キャリアパスが見えない
どんな人が働いているのか分からない
つまり、比較材料がないのです。
その結果、学生は「大手」「知名度」「勤務地」など、分かりやすい基準で選んでしまい、中小規模の事務所は候補にすら入らないことが多くなります。
● 事務所側は“普通だから伝えることがない”と思い込んでいる
一方で、事務所側はこう考えがちです。
「うちは普通の事務所だから…」
「特別な強みなんてない」
「大手みたいにアピールできるポイントがない」
しかし実際には、学生が知りたいのは派手な実績ではありません。
どんな働き方ができるのか
どんな人が教えてくれるのか
どんな成長ができるのか
どんな雰囲気の職場なのか
どんなキャリアが描けるのか
こうした“リアルな情報”こそ、学生にとって最も重要な判断材料です。
ところが、これらが言語化されていないため、 学生から見える「選ぶ理由」がない状態になってしまうのです。
● 魅力が言語化されていないと、採用活動はすべて後手に回る
魅力が整理されていないと、採用活動のあらゆる場面で不利になります。
採用サイトに何を書けばいいか分からない
説明会で何を話せばいいか分からない
面接で事務所の強みを伝えられない
インターンの設計ができない
結果として、学生の心に刺さらず、 「なんとなく印象が薄い事務所」になってしまうのです。
● 本質:魅力の言語化は“採用の生命線”である
魅力が言語化されていない事務所は、採用市場で戦えません。 逆に、魅力を言語化できる事務所は、規模に関係なく学生に選ばれます。
新卒採用は、事務所の魅力を“言葉にして伝える力”が問われます。 これは大手・中小に関係なく、すべての事務所が取り組むべき最重要ポイントです。
これが、新卒採用がうまくいかない五つ目の大きな理由です。
失敗原因6:面接で“良い人材”を選べない
税理士事務所の新卒採用がうまくいかない理由の六つ目は、 面接で“良い人材”を見極められないことです。
これは前述した失敗原因3の「中途採用の経験が、新卒採用を難しくしている」と似たようなテーマですが、ここでは面接に限定して深堀したいと思います。
多くの税理士事務所では、面接が中途採用の延長線上にあります。 長年、中途採用中心で人材を確保してきたため、 面接の質問や評価基準が“経験者向け”のままなのです。
● 中途採用の面接基準をそのまま新卒に当てはめてしまう
中途採用では、以下のような質問が有効でした。
どんな業務を経験してきたか
どれくらい担当を持てるか
税理士試験の科目合格はあるか
どの程度の即戦力か
しかし、新卒にはこれらを聞いても意味がありません。 経験がないのですから、答えられるはずがない。
にもかかわらず、面接官はつい“経験前提”の質問をしてしまう。
するとどうなるか。
回答内容で差がつかない
判断材料が不足する
面接官が「何を見ればいいのか」分からなくなる
結果として、“話が上手い学生”が高評価になりやすいという歪みが生まれます。
● 「良い新卒」の定義が事務所内で共有されていない
新卒採用で本当に見るべきなのは、
素直さ
吸収力
コミュニケーションの誠実さ
仕事への向き合い方
伸びしろ
チームとの相性
といった“ポテンシャル”です。
しかし、これらは中途採用の評価軸とはまったく異なります。
その結果、多くの事務所では、 「どんな新卒を採ればいいのか」 という定義が曖昧なまま面接が行われています。
そのため、
面接官ごとに評価がバラバラ
印象で採用が決まる
採用後に「思っていた人物像と違う」と感じる
ミスマッチが起きやすい
という問題が発生します。
● 面接官自身が“新卒を見極める経験”を持っていない
税理士事務所では、面接官の多くが所長やベテラン職員です。 彼らは優秀な実務家であっても、 「新卒を見極めるプロ」ではありません。実務家だからこそ、中途採用では求職者のキャリアやスキルを正確に見極めることができても、新卒ではそれが当てはまらないのです。
新卒の価値観
学生のキャリア観
今の就活の常識
若者が重視するポイント
こうした知識が不足しているため、 面接が“昔の常識”で行われてしまうことも多いのです。
● 本質:評価基準が曖昧なまま面接をすると、良い人材は絶対に選べない
新卒採用は「ポテンシャル採用」であり、 中途採用とはまったく別の面接設計が必要である。
にもかかわらず、税理士事務所の多くは “中途採用の延長”で面接を行ってしまう。
これが、新卒採用がうまくいかない六つ目の大きな理由です。
失敗原因7:採用できても受け入れ準備が間に合わず、新卒が放置される
新卒採用がうまくいかない理由の七つ目は、 採用できても“受け入れ準備”が間に合わず、新卒が放置されてしまう構造があることです。
税理士事務所の年間サイクルは、新卒受け入れと相性が悪すぎます。
● 2〜3月の繁忙期で、受け入れ準備が完全に止まる
新卒が入社する4月は、税理士事務所にとって最悪のタイミングです。
2〜3月は確定申告で全員がフル稼働。 本来であればこの時期に、
研修計画の作成
教育担当者の決定
新卒向けの業務マニュアル整備
初日のオリエンテーション準備
などを進めるべきですが、現実には手が回りません。
結果として、準備ゼロのまま4月を迎える事務所が多いのです。
● 4月、新卒が入社するが“何をさせるか”が決まっていない
そして迎える4月1日。
研修内容が曖昧
誰が教えるのか決まっていない
仕事の説明が場当たり的
新卒が何をすればいいか分からない
このような状態、もしくは付焼刃的な状態でスタートしてしまいます。
結果として「まずは会計データの入力でもさせておけばいいや」となりがちです。中途ならある程度の事情は分かっていて、それで十分かもしれません。しかし新卒は社会人経験もゼロ。 右も左も分からないまま、曖昧な指示だけで過ごす日々が続きます。
当然、不安が募り、 「自分はここでやっていけるのだろうか…」 という気持ちが強くなっていきます。
● 追い打ちをかける“5月の3月決算”
4月に受け入れ準備不足のままスタートし、 ようやく落ち着くかと思えば、5月は3月決算のピーク。
現場は再び多忙になり、 新卒に構っていられない状況が続きます。
その結果、新卒は事実上“放置”されてしまうのです。
質問しづらい
仕事の全体像がつかめない
何が正解か分からない
自信を失う
一般企業が5月病などで退職が増える中、税理士事務所ではそれに輪をかけて早期離職につながってしまうリスクが高まるのです。
● 本質:新卒採用は“受け入れ準備”が9割
新卒採用は、採用できた瞬間がゴールではなく、 入社後の“受け入れと育成”が本番です。
しかし、税理士事務所の年間サイクルは、 この“本番”を成立させる余裕を奪ってしまう。
これが、新卒採用がうまくいかない七つ目の大きな理由です。
失敗原因8:業界全体で母集団形成ができていない(業界への提言)
ここまではそれぞれの事務所が抱える問題点を列挙してきました。その中には対応が難しいもの、簡単なもの、事務所が置かれている状況により様々ですがここから先はもっと根本的な原因について考えてみたいと思います。
そもそも税理士事務所の新卒採用が上手くいかない最大の理由は、業界全体として”若者を増やす仕組み”が存在しないことです。
どれだけ個々の事務所が努力しても、そもそも業界に興味を持つ若者が少なければ採用の難易度は跳ね上がります。つまり、税理士業界は”母集団形成”の段階で大きく遅れているのです。
● 他業界は「業界ぐるみ」で若者を増やしている
現在、多くの業界で人手不足が深刻な問題となっています。そうした業界では、各企業が新卒採用にしのぎを削る一方で、業界全体として新卒の志望者を増やす働きかけを行っています。例えば、建設業界、介護業界、IT業界など、多くの業界で 業界団体が中心となって若者へのアプローチを行っています。
高校・大学との連携
業界説明会や職場体験
若手ロールモデルの発信
業界全体の広報活動
これらを“業界ぐるみ”で行うことで、 若者がその業界に触れる機会を増やし、母集団を広げています。
例えば建設業界では、20年近く前にはすでに、業界団体が新卒志望者増大の試みをスタートさせていました。
それまで大学の建築学部などにアプローチをし、新卒志望者を確保しようとしていましたが、それを推し進めそもそも「建設・建築・土木」に興味を持ってもらおうと高校生の職場見学会などを開催しようとしていました。
また、業界団体として新卒者向けのパンフレットなどを作成。業界主導の就職説明会などを開催するなど、新卒志望者増加に向けた大きな役割を果たしていたのです。
その結果として、「業界として若者を育てる文化」が根付いているのです。
● 一方、税理士業界には業界横断の取り組みがほぼない
税理士業界はどうでしょうか。
税理士会
大手税理士法人
TKCやfreee会計、MF、弥生会計といった会計ソフト会社
これらが連携して若者にアプローチする仕組みは、ほとんど存在しません。
そのため、
高校・大学との接点が極端に少ない
職場体験やインターンの普及率が低い
業界の魅力を伝える広報活動が弱い
若者が業界を知る機会がほぼない
その結果、学生から見れば 「税理士業界」という選択肢がそもそも視界に入っていないのです。
● 業界の閉鎖性には“歴史的背景”がある
税理士業界がここまで閉じているのには理由があります。
かつては、 「税理士事務所に就職=将来独立」 というキャリアが一般的でした。
そのため所長側には、
門戸を広げると将来の競合を増やす
若手を育てても数年で辞めてしまう
育成に投資しても回収できない
という心理が働き、 外に開かない文化が形成されていったのです。
しかし、この価値観はすでに時代遅れです。
今の若者は独立前提で就職活動を行いません。
それよりは、
安定
働きやすさ
職場でのキャリア形成
を重視します。
つまり、“競合を増やすから門戸を閉じる”という発想は、現代では意味を持たないどころか、マイナスの影響しか与えません。にも拘わらず、業界文化だけが昔のまま残ってしまっているのです。
● 若者が入らなければ、業界は確実に縮小する
問題は若者が今後減少する一方だということです。今後は各企業・事務所が若者を取り合う、そんな時代になっていくのです。
しかし、他では業界を挙げて若者確保に動く中、税理士業界だけがそれぞれの事務所で動くしかない、となればどうしても不利な状況に追い込まれます。
このまま業界全体で母集団形成をしなければ、
若手が入らない
中堅層が育たない
高齢化が進む
事業承継が進まない
採用難が加速する
業界全体の競争力が低下する
という未来が待っています。
これは、個々の事務所の努力ではどうにもならない問題です。
● 今こそ業界は“門戸を開く”必要がある
業界の存続のためには、若者を増やす仕組みを業界全体で作るしかありません。
ちょっと前までは、AIが発展すると税理士が必要なくなり、業界全体が沈没する、として多くの人が危機感を持ちました。しかしAIがどのようなものかわかるにつれ、そうした危機感は立ち消えとなっています。
しかし、この若者不足は「今、そこにある危機」なのです。
必要なのは、以下のような“業界横断の取り組み”です。
高校・大学との連携強化
職場体験・インターンの標準化
若手ロールモデルの可視化
業界全体の広報プロジェクト
“資格前提”から“育成前提”への転換
これらを業界全体で進めることで、 初めて税理士業界は若者にとって魅力的な選択肢となります。
● 本質:事務所単体の努力では限界がある
採用は「事務所の努力 × 業界の努力」で決まります。しかし今の税理士業界は“業界の努力”がほぼゼロに近いのです。
どれだけ個々の事務所が頑張っても、 母集団が増えなければ採用市場は縮小し続けます。
これが、新卒採用がうまくいかない八つ目の、そして最も根本的な理由です。
まとめ:危機感をどこまで共有できるか
実をいうと、この新卒入社がほとんどない、という業界特有の事情について、私はかなり大きな危機感を持っています。
現在の転職市場は、ほとんど人がグルグル回っているだけ、という状況になりつつあります。つまり、ある事務所で人が足りなくなると、他の事務所にいた人が転職して入社する。するとその人がいた事務所で人が足りなくなるので募集をすると、さらに他の事務所が人手不足になる。このサイクルで転職市場が動いているのです。
そして、求人での競争力のない事務所が縮小していく。
つまり若い人材の流入がない状況では、ひたすら求人のサイクルが回るだけです。
2000年代までは、税理士事務所の多くが一般の企業に比べると給与水準はかなり低い状況でした。しかし2010年代の後半になると一般企業と給与が同水準となり、現在では少し給与水準は高くなっています。
もちろんそれだけの能力や働きがあれば、給与水準の上がるのは当然でしょう。しかし今のまま放置していると、給与水準はどんどん高くなっていきます。以前のような低い給与水準は論外としても、人手不足からの給与高騰は事務所の体力を削ります。
結果として、体力のない事務所は淘汰されてしまうのです。
つまり、これまでのように「経験者を採ればなんとかなる」というのは、将来の自分たちの首を絞める考え方ともいうことができます。
これからは若手を無買い入れ、育て、未来を託す業界へと変わることが求められています。
その第一歩が、新卒採用の仕組みづくりです。
もちろんこれは簡単ではありません。
業界特有の事情として、繁忙期の問題があります。
ここで新卒採用や入社後の準備が止まってしまうのは大きな問題です。ただ、ここをクリアできれば、事務所として大きく前進することができます。
自分たちの事務所では対応が難しい、というのでしたらTaxOffice-Supportでも新卒採用向けの繁忙期対策などでサポートすることが可能です。
「若い世代を入社させ、事務所を活気づけたい」
「次の世代につながる仕組みを作りたい」
そうした危機感を共有していただける方は、お気軽にお問い合わせください。
また、大手税理士法人、税理士会、各ソフト会社など業界団体の方で新卒採用に協力していただけるところがございましたら、こちらも「一緒に何ができるのか」を考えていきましょう。
まずは無料問い合わせよりご連絡いただけると幸いです。
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