評価基準って必要ですか?
- 斉藤永幸
- 10月22日
- 読了時間: 6分
更新日:10月24日

私のところに相談を寄せられるもののうち、一番多いのは採用支援です。
人が足りないので経験者を採用したいけどどうしたらいいのか。
どんな媒体で募集をかけたら効果的か。
面接をする際に立ち会ってほしい。
そんな悩みが寄せられます。
次いで 1on1 についての相談です。
そして3番目に多いのが、実はこの評価基準について、です。
ただ、この評価基準についての相談は、作ってもうまく活用できないだろうな、という事務所が多いのも事実。
そこで評価基準を作る前に、評価基準はどういうものか、について考えていきましょう。
評価基準は安心材料?
評価基準の相談については、ここ1~2年の間に増加しています。
どうやら採用などについてコンサルタントや採用媒体の営業さんが、評価基準を作った方が応募が集まりますよ、などと勧めているそうです。
確かに評価基準が歩かないかによって、求職者の反応は違います。
税務会計事務所は近年、しっかりとした組織になっているところが増えています。
しかし以前は個人事務所やその延長線上にあるような事務所が多く、そうした事務所での評価は所長の胸先三寸で決まりました。
どんな良い働きをしても、お客様から高く評価されても、所長が認めなければ給与は上がりません。
時には自分より仕事量が少なく、ミスが多いスタッフでも、所長にさえ気に入られれば給与で上に行かれる、なんてこともあったのです。
もちろんそうした事務所は減ってきてはいますが、まだまだ残っているのも事実です。
このような環境で働いていて不満が募った結果、転職活動をスタートさせた、という人も多いですね。
評価に対して不満を持ち、転職活動をしている人にとっては、評価基準が定められているということは、客観的に自分の働きを見てくれる、として大きな「安心材料」であり、必然的に応募も集まりやすいのも事実です。
ただ、それだけを理由に、評価基準を策定してしまっても良いものなのでしょうか?
評価基準を考えるにはステップが必要
そもそも良い評価基準を作るには、もっと根本的なことから考えていかなければなりません。
それは経営計画です。
それこそが出発点でなければなりません。
憲法に則って法律がつくられているように、経営計画に則って評価基準が作られるべきなのです。
経営計画では、どのような目標を立て、どのように事業を展開していくのか。
その目標を達成するためには、どんな組織でなければいけないか、を決めていきます。
例えば現在、5名規模のスタッフが在籍している税務会計事務所あったとします。
この事務所が3年でスタッフ15名規模、5年で40名規模の事務所に拡大をしようと目標を定めたとします。
するとこの人数を養っていくためには、どれくらいの売り上げが必要になるか、その売り上げを達成するためにはお客様がどれくらい必要か、が決まります。
さらにこの売り上げを上げるにはどのように事業展開をする必要があり、そのためにはどんな事業計画や営業戦略が求められるのか、などが次々に決まっていくのです。
法人税務だけでいくのか、それとも資産税にも力を入れるのか。
どこかの業界・業種などに特化するのか。
スタートアップ企業を中心に新規顧客を獲得するのか。
セカンドオピニオンを充実させ、税理士変更を中心に顧客を獲得していくのか。
IPOやSPCなどの分野にも対応できるようにするのか。
様々な選択肢があります。
これを1年スパン、3年スパン、5年スパン、10年スパンで考え、経営計画を立てていきます。
これが決まると、次にこれらの事業を実現するためにはどんな組織が求められるか、が決まってきます。
5名程度であれば、所長がいてスタッフが並列でいてもそこまで問題ではないでしょう。
しかし15名、40名となれば組織でなければまとまりません。
どのような組織を作っていくか、を考えていく必要があります。
先ほどの例にあった15名の場合、仮に1チーム4名体制、15名の時点で3チーム+所内のとりまとめ役(番頭)1名、全体のサポート&アシスタント1名、予備人員(教育途中の新人)1名、とします。
長くなりましたが、ここまできてようやく評価基準を考えていくことができます。
どんな人材が必要かで評価基準は決まる
どんな組織を作っていくか、が決まることで評価基準が決まります。
3チームが必要であれば3名のマネージャーが必要です。
社内のとりまとめの番頭役が必要です。
営業目標を達成するためには、Web戦略も練らなければいけないので、ITに強い人材も求められます。
つまり営業戦略や将来目標にする組織、事業展開などが決まればどんな人材が必要かが「逆算」することができるのです。
そうした人材を評価する、ということが評価基準に盛り込まれる内容となるのです。
いわば評価基準とは、目標を達成するために、どんな人材になってほしいのか、という事務所からのメッセージなのです。
リーズナブルな料金で多くの顧客の獲得を目指すのであれば、新規顧客獲得などは評価が高くなります。
サービスの質を高め競争力のある事務所を目指すのであれば、所外の研修などに積極的に参加しノウハウを所内で共有するような行動が評価が高くなります。
スタッフにこうあって欲しい、という姿が明確であればあるほど、評価基準はしっかりとした内容になります。
逆に、経営計画も、事業計画も、組織作りの計画も、営業戦略もなしに評価基準を定めることは、単に事務所の所長・代表の価値観を明文化しただけにすぎません。
それでもないよりはあった方が良いのですが、目標などが流動的であれば、評価基準もそのたびに変動してしまいます。
これでは「基準」足りえず、結局はスタッフもその時々で評価が変わる、と感じてしまうのです。
評価基準を定めたら次もある
ここまでやって評価基準を定めて、これで終わりではありません。
評価基準を元に、スタッフの教育やサポート体制について考えていかなければいけないのです。
基準だけ示し、達成できるかどうかは自己責任で、としては組織として成長できません。
それを達成できるために、バックアップし、評価される人材、つまり事務所の目標達成に貢献できる人材になってもらわなければ意味がないのです。
同時に、採用計画も考えていく必要があるでしょう。
どんな人材を何人、どのタイミングで採用するのか。
それをどうやって育て、評価し、事務所の目標に近づけていくのか。
評価基準を定める=ゴールではなく、そこが出発地点なのです。
このように評価基準を作るには、いろいろなことを考える必要があり、手間も、時間も、そして費用もかかってしまいます。
実際、自分がしっかりとした評価基準を作るお手伝いをさせていただく場合でも、何度も打ち合わせを重ね、その分費用も高くなってしまいますね。
それでも採用などのために評価基準を作りたい、という方はまずは所長・代表の評価のポイントなどの明文化からスタートすることをお勧めします。
目指すべきものが明確でない場合は、将来変動することも念頭に置きつつ、目安をスタッフに提示できるようにしておくのです。
そのうえで給与規定などと連動させ、評価は売り上げの何パーセントで、残りはこうした評価を目安に決めていく、などと定め客観性を取り入れることが組織化への第一歩です。
もし評価基準についてお悩みの方は、こちらよりまずはメールなどでご相談ください。



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