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成長へのステップ、税理士事務所の組織化とは

組織のピラミッドが描かれた写真
組織化とは、単に部署やポジションを作ればいいというものではありません

組織化の意味するものとは


税理士事務所がある程度成長したのち、目指すものが組織化です。

個人事務所がお客様の増加に伴い、スタッフなどが増えていき、組織を作って成長していく。

これがあるべき成長の姿です。

ただこの、税理士事務所の組織化とはそもそもどんなものなんでしょうか?


以前のブログでも触れましたが、私の考える組織化とは単に所内に部署やポジションがあるだけでは意味がありません。

チーム分けして、それぞれにマネージャーなどを配置して、それで組織化ができた、と思うのは間違いなのです。

個人事務所がお客様に対し、『個人』で向き合っていたのに対し、組織化した事務所は『組織』としてお客様にサービスを提供する必要があるのです。

この組織としてお客様に向き合うことができなければ、たとえ20名以上の事務所であっても、それは組織化された事務所ではなく、単なる個人事務所の延長線でしかないのです。


この組織としてお客様に向き合うとは、属人化からの脱却です。

組織としてお客様に対し責任を持ち、組織としてサービスの質を担保し、組織としてスタッフをマネジメントしていく。

そのために何が必要でしょうか?

それが標準化です。



組織化に必要な標準化とは何か


標準化とはもともと、生産現場で使われていた言葉です。

製品の質を標準化で定め、ここまでは品質を保証する、というもの。

それに外れたものは不良品とする、という判断をするための基準を定める行為です。

これが様々な場面で使われるようになりました。

近年ではIT業界でも、よく用いられています。

これは製品に対してではなく、スタッフに対する言葉として用いられることもありますね。


ITの現場では、様々な立場、企業から人が集まり、一つのプロジェクトを進めていくことも珍しくありません。

そのためコストの適否を判断するのが難しくなっています。

そこでスタッフを標準化し、それに対してコストを算定するのです。


例えばあるプロジェクトで、30人のスタッフが50日使って仕上げるシステムがあったとします。

つまり30人×8時間×50日=1200労働時間が必要となります。

この時、単位の基礎となるのが標準化です。

標準的なスタッフが1人で1時間にこなせる労働量がどれくらいなのか、というものを算定する必要があるのです。


なぜこの単位を定める必要があるのでしょうか?

それは適正な労働力の投下をするためです。


スタッフは一人ひとり、能力が違います。

それを見定め、どの人にどの案件を任せるのか、といったことを決める際、多くの税理士事務所は適切に選択できているでしょうか?

多くの事務所では、所長や代表、もしくはマネージャーの感覚によって決められていたのではないでしょうか?

小さいな組織ではそれでも良いでしょう。

しかしスタッフの人数が増えてくると、相性や資質などをしっかり把握することができません。

そのため感覚で仕事を割り振ると、実際には思っていたより業務の量が多くてスタッフへの負担が増えサービスの質が低下したり、逆にスタッフの能力を無駄に遊ばせておく、ということにもなりかねないのです。


税理士事務所にとっての標準化とは、事務所としてサービスの質を維持できるものがどれくらいの時間でどれくらいの量生み出せるのか、を定めることです。

これを定めることで、適正な報酬なども決まってきます。

中小規模の税理士事務所では、月額顧問料の多くがお客様の売り上げや会社の規模などで決まってきます。

大きな会社は処理も複雑になり、それだけ事務所に対する負担も増えます。

だからこそ一定の合理性はあります。

しかし中には、会社の規模は小さいのに、特例措置などを活用しなければいけない企業や、特殊な取引をしている会社などは事務所に対する負担も変わってきます。

その結果、割の良い案件、割の悪い案件、などが生まれてしまいます。

標準化を行えば、どのような業務でどのくらいの負担が生じるのか、がわかり適正なコストを算出することができます。

それを元に顧問料などを決定することができ、労働力も適切に配分することができます。



標準化は脱俗人化の第一歩


組織化とは属人化からの脱却です。

そもそも属人的な業務が多いということは、それだけ組織にとってのリスクです。

その人が抜けたら仕事が回らない、という状態は避けなければなりません。


主観的なものではなく、客観的な数字に置き換えていく。

標準化とは属人化からの脱却に必要な第一歩です。

人の配置、業務の配分、給与・報酬、顧問料・・・、様々なものを所長や代表、マネージャーの『感覚』で決めるのではなく、数字から決定していくことになるのです。

このように標準化とは人を数字に置き換える作業でもあります。

標準化に心理的な抵抗が生まれるのはこのためです。

ただ事務所にとっての『標準』を定め、それに基づいて様々な決定を行っていく基礎となるため、組織化にとっては欠かすことができない要素なのです。


この標準化を行うためには、いくつか必要な作業があります。

一つは労務管理。

同じ業務に対し、人によってかかる時間などがバラバダでは、標準化の単位を決めることができません。

Aという業務に対しうちの事務所ではこれくらいの労働時間がかかる、というのを決めていく必要があるのです。

その基礎データを作るためには、労務管理は欠かせません。


同時にサービスの標準化、そしてクオリティの標準化です。

うちの事務所にとって、標準的なサービスは何か、これを追求していくことが必要になってきます。

これは同じ業務に対し、さまざまなやり方は許されなくなります。


中小税理士事務所では、経験者を採用し、即戦力として活躍してもらわなければなりません。

スタッフは、前職などで学んだやり方をそのまま踏襲してしまうことがよくあります。

その結果、同じ業務でも人によってやり方はバラバラに、という状況が生まれてしまいがちです。

それを一つずつ潰していく作業になります。

標準化、事務所にとってのいわゆるスタンダードを決めていく。

これはかなり大変な作業です。

しかしこれを避けて組織化はできません。


このように組織化のために標準化は欠かせない前提ですが、同時に事務所の体制やそれまでのやり方をひっくり返すことでもあります。

その分、標準化を進めることで、マニュアルの整備が進み、新卒入社や未経験の人材でも採用しやすくなります。

管理もしやすくなり、スタッフへの給与や労働時間などが適正なものになる、などプラスの影響も非常に大きいのです。


このように組織化とは痛みやリスクも伴うもの。

だからこそ事務所として、組織化を行い成長を目指すのか、それとも規模を抑えつつこれまでのやり方を守り続けていくのか、といった選択をしなければならないのです。


組織化を目指したい、でもどうやったらいいのかわからない。

そんな事務所は、まずはこの標準化から考えてみてはいかがでしょうか。

こちらからお問い合わせいただければ、より詳細なお話などもさせていただきます。



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