税理士事務所の繁忙期の負担を“半減”させるAI活用術
- 斉藤永幸
- 1月4日
- 読了時間: 8分

この記事を書いているのが1月頭。この頃になると、税理士事務所は繁忙期である確定申告時期に備え、準備に動いているところがほとんどでしょう。毎年のこととはいえ、頭が下がる思いです。
ほとんどの事務所が確定申告時期は残業が激増し、それに備えて採用、育成を進めてきました。しかし、去年から今年にかけて「え?うちは繁忙期でも残業は増えないよ」という事務所が徐々に出始めてきました。 なぜ繁忙期でも残業が増えないのか。話を聞いてみると、前段階の準備を”仕組み化”することで、繁忙期に突入した後は単なる処理で終わるため、スタッフへの負担がそこまで増加しないのだといいます。
この”仕組み化”によって繁忙期の負担を軽減する。 これはAI 導入によって大きく変わる部分でもあります。そこで今回の記事では、AI の活用によってどこまで繁忙期の負担を抑えることができるのか、その可能性について考えてみました。
なぜ税理士事務所の繁忙期は“毎年つらい”のか
税理士事務所は年間スケジュールが決まっており、この時期にはこの業務が発生する、というものがあります。そのため閑散期と繁忙期の差が激しい業界だといわれてきました。年末年始、3月決算が集中する5月、そしてほとんどの税理士事務所で最大の繁忙期が確定申告の時期である2月から3月です。
この年末から上半期に集中する繁忙期は、毎年のように同じ問題が繰り返されます。
「資料が揃わない」「仕訳が終わらない」「質問が止まらない」「残業が増える」。事務所の規模に関係なく、構造的な負担が積み重なり、職員の疲弊や離職にもつながります。
その背景には、
人手不足
属人化した業務
顧問先のデジタル化の遅れ
判断不要の作業が多すぎる
といった“業界特有の構造”があります。
ただ、こうした課題を効率的に解消してくれるものが近年表れてきました。それがAI です。徐々にAI-OCRなどを導入し、業務を効率化している事務所は増えてきましたが、本来のAI は業務の効率化こそが特性を大きく発揮できる場所。単なる効率化ツールではなく、業務フローそのものを変える力を持っています。
では実際に、AI は繁忙期の負担を軽減することはできるのでしょうか?
結論:AIは繁忙期の負担を“構造的に”軽減できる
実際、AI を導入し、活用できている事務所では、繁忙期の負担を大幅に軽減することに成功しています。なぜなら繁忙期の負担の多くは、実は専門的な判断が必要ではない、いわゆる”下処理”のところに集中しているからです。資料催促、仕訳の一次処理、不備チェック、などで追われるという思いは、税理士事務所のスタッフならほぼすべての人が思い当たるのではないでしょうか。
そしてAI が得意とするのは「判断を必要としない作業」の自動化なのです。
つまり繁忙期の負担軽減とAI は非常に相性が良いといえるでしょう。
つまり、AIを正しく導入すれば、「人がやるべき仕事」と「AIがやるべき仕事」の境界線を引き直すことができます。その結果、繁忙期の負担は“構造的に”軽減できます。
繁忙期の負担を生む5つの原因と、AIができること
繁忙期の負担が増える主な原因は、大きく分けると次の5つということがほとんどです。
① 資料が揃わない・遅れる
② 仕訳の一次処理に時間がかかる
③ コミュニケーション量が爆発する
④ 決算・申告の作業が属人化している
⑤ “詰まりポイント”が予測できない
これを構造的に見ると、次のようになります。
資料収集 →①資料遅延
↓
仕訳処理 →②一次処理の遅れ
↓
コミュニケーション →③連絡が爆増
↓
決算・申告 →④属人化
↓
全体管理 →⑤詰まりが読めない
確定申告時期の業務の各段階それぞれに、負担が増加する原因があり、それが絡み合って確定申告時期の負担が大きくなっていることがわかります。

これらを一度に解決するのは非常に困難です。
そこで、一つひとつの原因に対し、AIでどのように負担を軽減できるのかを見ていきましょう
① 資料が揃わない・遅れる
繁忙期の遅延の8割は「資料が来ない」ことが原因です。
AIができること
顧問先ごとに最適化された催促メールの自動生成
提出状況の自動管理
チャットボットによる資料提出ガイド
遅延リスクの高い顧問先の予測
職員が催促メールに追われる時間が大幅に減ります。
② 仕訳の一次処理に時間がかかる
AI-OCRと推論モデルにより、仕訳候補を自動生成できます。
AIができること
レシート・通帳・請求書の自動読み取り
過去データからの仕訳パターン学習
異常値の自動検知
仕訳の一次判定
職員は“判断が必要な仕訳”だけに集中できるようになります。
③ コミュニケーション量が爆発する
繁忙期は顧問先からの質問が増え、メール対応だけで1日が終わることも。
AIができること
よくある質問の自動回答
メール文面の自動生成
顧問先の質問傾向の分析
回答テンプレートの自動作成
職員の「メール地獄」が大幅に軽減されます。
④ 決算・申告の作業が属人化している
決算整理や申告書作成は、職員ごとにやり方が違うことが多いです。
AIができること
決算手順書の理解と標準化
過去の決算書からパターン抽出
事務所独自の判断基準の学習
新人の即戦力化
属人化が減り、繁忙期の“詰まり”が解消されます。
⑤ “詰まりポイント”が予測できない
繁忙期は「どこが詰まるか」が読めないため、対策が後手に回りがちです。
AIができること
顧問先ごとの遅延リスク予測
職員ごとの負荷状況の可視化
業務ボトルネックの事前把握
作業量の平準化
繁忙期が始まる前に“詰まりポイント”を潰せるようになります。
いかがでしょうか?
AI をうまく活用することで、負担を増大させているかなりの原因を緩和・解決することができるです。
AI をどのように導入するのが良いのか
このように、繁忙期の負担軽減という意味でも、AI の導入は非常に効果があります。しかし、それには”しっかり活用ができれば”というのが前提です。特に、一部の業務を単純にAI に置き換える、といったツール的な導入ではあまり効果は発揮できません。
では、AI 導入で成功する事務所、失敗する事務所はどこに差があるのでしょうか?
AI導入で失敗する事務所の共通点
AIを“便利ツール”としてしか見ていない
業務フローを変えずにAIだけ入れる
職員教育を後回しにする
顧問先のデジタル化を進めない
AI導入に成功する事務所の共通点
小さく始めて、早く回す
AIを“人の代わり”ではなく“人の前処理”に使う
標準化 → 自動化 → 最適化の順で進める
顧問先とのコミュニケーション設計を重視する
AI は単なる”技術”の導入ではなく”運用設計”が9割です。だからこそ成功する事務所は”一部の業務効率化”のためでなく”業務設計の中心”に据えることで、効果を上げています。
特に導入の仕方は重要で、しっかりとフローを組んでステップを踏みながら導入をしていく必要があるでしょう。また規模なども重要で、小規模な事務所であれば機能を絞って始めてみるのも一つの手です。
● 小規模事務所(〜6名)
資料催促の自動化
メール文面の自動生成
AIチャットボットの導入
→ AIがスタッフ一人ひとりのアシスタントとして下処理を担うイメージ。
● 中規模事務所(5〜20名)
仕訳一次処理のAI化
決算手順の標準化
顧問先コミュニケーションの自動化
→ AI 導入と並行して属人化の解消が最も効く。
●さらなる活用をした事務所
AI×RPA×ワークフローの統合
データ活用による繁忙期予測
全体最適の業務設計
→ “組織としての生産性”が跳ね上がる。
こうしてみると、AI の導入によって繁忙期の負担を大きく減らせるかどうかは、どんなAI を導入するか、といった技術的な面よりも、「現場理解」と「運用設計」で決まることがほとんどです。だからこそ、ベンダーやソフト会社などの言われるまま導入すると失敗してしまうことが多いですね。
事務所の文化
職員のスキル
顧問先の特性
使用している会計ソフト
業務フローの癖
これらを理解した上でAIを組み込むと、効果は劇的に変わります。
AI導入は“業務改善の延長”ではなく、事務所の未来を再設計するプロジェクトなのです
まとめ:AI は繁忙期を”乗り越える”ものではなく繁忙期を”なくす”ための武器
AI は繁忙期の負担を確実に軽減することができます。
しかし、それは正しく活用できればの話。AI の導入は導入フローと設計がすべてのカギを担っています。ここをしっかり整えることで、繁忙期は単に乗り越えるものではなく、そもそも繁忙期というものが存在しなくなる、という段階まで負担を軽減することもできるのです。
だからこそ”どのように”AI を導入するか、が重要になってきます。
所長やマネージャー、IT の担当スタッフがしっかりイニシアティブをとりながら、業務の設計と並行して導入を進めていかなければなりません。もし、それが難しい場合はTaxOffice-Supportがサポートを提供することも可能です。
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