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税理士事務所のタイプ別戦略について

縦線グラフで成長を表現している写真
目標とする事務所のタイプ・規模によって正解は一つではありません

事務所によって取るべき戦略は異なる


以前のブログにも書きましたが、私の提案する人事・採用戦略が必ずしもすべての事務所にとって正解であるとは考えていません。

なぜなら事務所によって目指す理想の形がまったく違うからです。

だからこそ一つひとつの事務所によって、人事・採用戦略をアレンジしていく必要があります。


例えば税理士一人、もしくはそのアシスタント一人くらいの個人事業主のようなパターンで、そのやり方がフィットしている事務所では、そもそも採用などはほとんど関係ないでしょう。


また、低価格を『売り』にしている事務所では、一人当たりに多額のコストをかけることはできません。

必然的に組織の維持などにコストをかけることができないため、スタッフの定着率が低下します。

そのため常に人材は流動的になり、教育や定着のためにコストをかけるのではなく、より効率的な採用戦略が求められます。


逆に、高付加価値型や専門性の高いサービスを提供する事務所の場合は、採用人数は絞りつつ、限られた人数に対しいかに質の高いサービスを提供できる人材に育てることができるか、が重要になってきます。

必然的に教育のコストは増加し、同時に育てるためには時間がかかるので定着を意識した社内体制を構築していかなければならないのです。


まず自分の事務所はどういったタイプの事務所なのか、それを認識する必要があるでしょう。

以前、少し出版のお手伝いをさせてもらった書籍税理士事務所 7つの経営戦略』(www.amazon.co.jp/dp/4433641464)を参考にすると、税理士事務所を7つのタイプに分類しています。

これがわかりやすいので、ここから引用させてもらいます。


・付加価値型事務所

・低価格型事務所

・一人所長型事務所

・二代目引継ぎ型事務所

・業務特化型事務所

・業種特化型事務所

・地域密着型事務所


となっています。

これを元に、事務所のタイプ別戦略について考えていきたいと思います。



タイプに合わせた戦略を比較


付加価値型事務所

特徴:事業計画の策定支援や未来会計など、決算・申告といった税理士事務所の基本業務だけでなく、より付加価値のあるサービスを提供していくタイプの事務所です。


求められる人材:税務に関する知識だけでなく、よりビジネスに関する知識や資質が求められます。常に世の中のニーズにこたえていく必要があり、経済のトレンドなども把握していなければなりません。簿記や税理士試験の科目だけで機械的に判断するのではなく、ビジネスセンスのようなものも見極めて採用を行わなければならないのです。そのため業界経験者だけでなく、業界の知識がなくても他業界・他業種の社会人経験者、特に営業職を経験した人材などは大きく成長する可能性もありますね。


社内体制:とるべき戦略としては、評価基準の策定やキャリアパスの明示などで、モチベーションを高める方策が重要になってきます。また、常に付加価値を生み出せるよう、教育・研修体制の充実も求められます。専門知識だけでなく、コミュニケーションや社会で話題になっているトレンドについても広く学べる環境を用意してあげることが重要です。



低価格型事務所

特徴:無駄をいかに省き、お客様にリーズナブルな価格でサービスを提供できるか、で競争力を高めている事務所です。デフレ経済下で非常に人気の高かったタイプの事務所ですが、人材採用難に伴うコストの増大などで経営を悪化させている事務所が多くなっています。


求められる人材:ある程度定型化された業務が多くなるため、ルーティンワークを厭わないタイプの人材が求められます。業務は比較的難易度が低いため、知識より作業のスピードなどや正確性が重視されます。コストを人材にかけることが難しく、経験を持った人材には人気が低いため、新卒や未経験、時にはアルバイトからスタートし正社員化、なども検討していくのが良いでしょう。


社内体制:ほかのタイプに比べると、スタッフにはそこまで知識や経験を問うことはできません。そのため一人ひとりの判断によるサービスの質のばらつきをおさえ、作業の効率性を向上させるためにも、マニュアルの整備などは必須。件数=報酬、のようなわかりやすい給与形態などが好まれる傾向にあります。



二代目引継ぎ型事務所

特徴:これは業務内容や事務所の形態ではなく、先代から事務所を引き継いだタイプです。引き継いだことで事務所がどう変わったか、何を変えてはいけないのか、が問われます。


求められる人材:先代からスタッフを引き継ぐことになるので、基本的な人材戦略はそうした人材をいかに活かすことができるか、が重要です。その足りない部分をどのように補えばいいのか、といった視点で採用戦略がとられることが多いですね。ただ、先代から引き続き雇用する人材なので、比較的年齢が高くなるため、事務所の世代交代なども見据え長期的な戦略をとる必要があります。その場合でも、これまで在籍していた人材と先鋭的にぶつかるのは問題です。性格・資質重視の採用で、事務所の方針などと調和できる人材が求められます(引き継いでショック療法的に変革を進めたい場合はその限りではありません)。


社内体制:事務所の体制などが現代の情勢に合っているかどうか、が重要です。ここ10年だけ見ても、税理士事務所を取り巻く環境は大きく変わりました。気づかぬうちに時代遅れになっている部分があれば、体制なども見直す必要があります。ただ、急激な変化は昔から在籍しているスタッフからの反発も予想されるため、改革などは丁寧に進めていく必要があります。


業務・業種特化型事務所

特徴:相続専門の事務所や非営利法人専門の事務所、医療特化型の事務所など、特定の業界や業務に特化したタイプの事務所です。専門性の高さが競争力に直結しています。


求められる人材:以前は一つの分野を追求していくタイプの人材、いわゆるスペシャリスト志向の強い人材がフィットしていましたが、近年ではそれだけでは務まらない、というパターンも増えています。業界・業務の知識はもちろん、周辺知識やお客様を取り巻く環境などより広範な知識・経験が求められるようになってきています。例えば飲食特化の事務所では、単に税務ができるというだけではなく、出店はどういった規制があってどういう手続きが必要なのか、お金の流れなどはどうなっているのか、など業界特有の知識が必要でしょう。ただ、特化することで得られるスキル・キャリアも限定されてしまうため、求職者からはあまり人気がありません。そのため採用広告だけでなく、スカウトメールや人材紹介なども併用していく必要もあるでしょう。コスト面では不利な部分がありますが、定着率はそこそこ高いので、トータルで見ると他のタイプと比べてそこまで差は生まれないかもしれません。


社内体制:専門性が事務所の競争力に直結するため。専門分野の教育は欠かせません。また、研修などで学べることは限られます。そのため所内でノウハウを蓄積できるナレッジマネジメントが重要になってきます。どうしてもスペシャリスト志向が強い人材が多く集まるため、仕事の進め方などが属人化しやすいのも注意が必要です。それぞれが持つ専門性を社内に集約し、次の世代などにうまく伝えていくことで成長を目指すことができます。



地域密着型事務所

特徴:地域にフォーカスをあてたタイプの事務所です。比較的狭いエリアが多いのですが、地方では県をまたぐこともあり、一概には言い切れないでしょう。従来型の事務所が多く、日本の税理士事務所では、大半がこのタイプになるといえます。何かで競争力をつけて、というよりは地道にしっかり信頼関係を構築し、地域で徐々に浸透していくことが基本戦略となるでしょう。


求められる人材:地域の小・中規模の企業が主な顧客となるため、そこまでの専門知識は求められません。税務会計の基本的な知識があれば、お客様と信頼関係を築くことが重要になってくるので、コミュニケーション力などが重視されます。事務所の規模が小さいうちは、どうしても経験者採用を行い即戦力になってくれる人を求めがちですが、ある程度の規模になったあとは経験・知識より地域の出身者かどうか、やコミュニケーション力を重視した採用をするのが効果的より。従来型のビジネスモデルなので、税理士事務所というとこのタイプを思い浮かべる求職者も多いのですが、近年の採用では難しい状況が続いています。


社内体制:何かに特化しているわけではないので、全般的な整備が求められます。ただ、地域特化型は担当制が多く、お客様先を飛び回ることがどうしても多くなります。信頼関係が求められるので、お客様にかける時間も長くなりがちです。そのためコミュニケーションツールの導入などが効果的です。アルバイトに会計データ入力などを集中させ、社員スタッフはお客様に集中できる関係を構築する、いわゆる製販分離なども進めたいところです。また、業務がどうしても属人化しやすいので、マネジメントをしっかり行える体制旁などが求められます。



正解は一つではありません


ざっくりとそれぞれのタイプの特徴と、人事・採用戦略などについて書いてみました。

(一人所長タイプは人事戦略や社内体制などが求められないため割愛しています)

ただ、事務所によっては、はっきりと分けることはできない場合もあります。例えば地域で法人税務をメインで扱いつつも、相続専門のチームを持っていたり、業務の半分程度が医療法人に特化している場合などです。

そのため単純にこの事務所はこう、とは断言しきれないのですが、ざっくりとこんな傾向がある、と認識していただけると幸いです。


このようにタイプによって、事務所のとるべき戦略は大きく違います。

単純に採用、という側面だけ見ても、フィットする人材は異なります。

それに合わせてWeb広告、ハローワーク、人材紹介、リファラル、など様々な方策・手法を検討していかなければいけません。

そして採用した人材がしっかり活躍できる体制を整えるためにも、優先すべき順番が変わってくるのです。


自分たちの事務所はどんな特徴があっても、スタッフはどういう人材で、課題は何か。そのために何が必要か、などを一つひとつ解きほぐしながら、採るべき戦略を検討してみてください。

そのためのサポートは随時行っております。

自分たちにはどんな戦略が合うのかわからない、という方はこちらよりお気軽にお問い合わせください。











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