top of page

中小企業の親族内承継に関する検討会、中間とりまとめを発表

バトンを渡す人と受け取る人の写真
事業承継が現在どのように議論されているか、知っておくことは大きな意味があります

検討会の中間とりまとめ


税務会計業界は、非常に高齢化が進んでい業界の一つです。そのため近年、徐々に再編が進められ、M&Aを行う事務所も増えてきました。ただ、最も多いのが承継です。子供に自分の税理士事務所を継がせる、というパターンが非常に多いですね。それまで信頼関係を築いてきたお客様を、自分の子供に託す。継ぐ方もゼロからの出発より断然有利であり、継がせる方も自分の子であれば心理的にも安心感があります。

同時に、税理士事務所はお客様の相続などにも関与しています。法人を経営していたら、その承継問題について深くかかわることも多いでしょう。事務所として事業承継の支援を行っているところも多いですね。

そのため税理士事務所は、事業承継が世の中でどのように議論されているか、知っておく必要があります。その一端を垣間見れるのが、政府での議論です。経済産業省では「中小企業の親族内承継に関する検討会」を設け、議論が行われていました。この検討会が12月12日、中間とりまとめを公表たのでその内容を紹介していこうと思います。



事業承継税制の効果と課題


親族承継に関する検討会の中間とりまとめでは、まず「経営者を取り巻く現状認識」から始まっています。

廃業等の傾向として、休廃業・解散数は増加傾向にあり、特に2024年は前年比で大きく増加したことを指摘。事業承継を選択せず、黒字であっても休廃業・解散した数の割合は引き続き50%以上になっているといいます。ここで特に注目していることが、廃業等の理由で「後継者不足による廃業」です。割合として1/3を占めており、このことを問題視していることがうかがえます。

ただ、承継だけ見ると、承継は親族承継が引き続き多いのですが、2024年は前年の36%から32.2%に低下。2017年が41.6%だったのと比較すると、10%近く低下していることがわかります。逆に伸びているのが内部昇格です。2017年が31.1%なのに対し年々徐々にではありますが増加を続け、2024年には36.4%と5%近く増加し、同族承継と逆転したことは注目したいポイントです。

もう一つ、傾向として挙げられるのがM&Aです。こちらも2017年から5%近い伸びを示しており、徐々にですが承継の形が変わってきていることがうかがえます。


こうした現状認識の元、事業承継税制についての検討を行っています。

法人版事業承継税制は、一定の要件はありますが非上場株式等に係る贈与税、相続税の猶予をする制度です。10年間限定の時限的な措置として、猶予対象株式数の上限を撤廃するとともに、猶予割合が贈与税・相続税ともに100%になっています。個人版事業承継税制も10年間限定で、多様な事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%猶予する措置です。

この二つの特例措置を活用するためには、2026年3月末までに特例承継計画の申請が必要です。


この特例税制は、ここ数年非常に活用されていると指摘。2022年度は2691件だったのに対し、2023年度は5357件と倍近い伸びを示しています。また、特例措置の特例承継計画は都市部に偏ることなく提出されており、地方における事業承継問題はこの税制を一つの解決手段として広く普及していると推察。今後もある程度の潜在利用者が存在しており、引き続き活用が見込まれるとしています。


ただ、この事業承継税制の贈与税における活用状況を見てみると、売上高1億円から50億円の企業を中心に活用されています。1億円未満の利用が少ない理由は、他の税制との比較で事業承継税制が選択されない可能性があると考察。事業を承継する後継者世代は金融資産が500万円~1000万円であることが一般的であるので、株式の承継に伴う贈与税額を負担することは困難なケースも多いと想定されるなか、この事業承継税制の特例措置が効果を発揮している、と推察しています。


このように事業承継税制の効果について評価する一方で、検討すべき課題も挙げられています。

まず課題としたのが「猶予株式」について、です。一般措置では猶予対象株式数について2/3を上限としており、同割合を保持していれば単独で会社法上の株主総会の特別決議を行うことはできるものの、 1/3は経営者以外に分散される可能性があります。これにより経営権が分散することで「株式買い取りを請求された」「訴訟リスクがある」などの事例が報告されているとし、経営の安定を実現する観点から株式を集約する方向が望ましいのではないか、という意見が添えられました。


また、現行の猶予制度は1納税が免除されるまでの期間が長すぎるため、経営者が将来の不確実性や長期にわたる手続きのコストを避ける傾向があり、制度が使われにくい実態があるのではないか、と指摘。猶予制度と評価減精度などについては、それぞれのメリットを踏まえ、10年事業を継続すれば猶予税額が免除されるような工夫ができないか、としています。

さらにこうした事業承継の負担は、経営者が本来投資や賃上げに活用されるべき資金を、相続税対策に充てている可能性がある、と指摘。検討を促しました。



後継者育成の取り組みを紹介


税制の特例により、事業承継の負担軽減を図る一方で、事業承継の障害となっている後継者不足について注目し、今後の後継者育成についての報告がなされています。

「後継者の育成については、事業承継の制度改善と併せて進めていくべき重要な課題である。後継者の育成に向けて、企業自身や地域で取り組むべき内容と国として支援すべき内容を意識しつつ、これまでの取り組みを継続・拡大していく形で取り組みを加速化していくことが期待されている」と述べました。

そのうえで検討の方向性として以下の5点を指摘。


①中小企業の後継者は、承継前に経営者目線で考え、実行する機会が少ないため、事業承継前に実践的かつ短期的なアウトプットの機会を提供することにより実行力・発信力を養う機会を提供することが有効ではないか。


②経営能力の育成として、企業経営に必要な基本的な財務・会計の知識に加え、事業計画の策定や新たな視点で組織経営を学ぶ実践的なプログラムが必要ではないか。


③後継者は、現経営者や従業員との関係性の構築、共通の組織課題があるため、業種を超えて同じ悩みを共有できる後継者同士の交流の場を創出すべきでないか。


④早期の後継者探しの重要性や、社長以外の中間管理職の人材不足についても課題として認識すべきではないか。


⑤地域での主体的な取り組みについて、地域の実態に合った形で好事例のモデルケースを示すことはできないか。


などを挙げています。

また、後継者の人材育成についてはこうした指摘を踏まえ、アトツギ甲子園などの施策について可能な限り前倒しして実施して九とともに、制度整備など時間を要するものについては、さらに具体的な検討を進めていくとしました。














コメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加
bottom of page