所長が休むと事務所が強くなる。繁忙期後の戦略的休暇のすすめ
- 斉藤永幸
- 5 日前
- 読了時間: 8分

確定申告が終わったら、スタッフはそれまでの激務から解放されます。
しかし、所長はそうも言っていられません。その次にやらなければいけないことは山積みです。例えば、
・請求業務や未回収確認
・今シーズンの振り返りと業務改善
・3月決算法人へのシフトチェンジ
・顧客ポートフォリオの見直し
・スタッフへのねぎらいとリフレッシュの演出
そのため税理士事務所の所長は、繁忙期後も常に忙しくしている人が多いです。
しかしそれでは問題があります。
先日の記事でも触れたように、繁忙期後はスタッフがしっかり休暇を取って、回復できるようにしなければなりません。そのためにも所長が率先して休暇を取るようでなければ、スタッフは遠慮をして休むことができないのです。
つまり、確定申告が終わった後に、所長がリフレッシュのために休暇を取るのは、事務所の健全な運営(と所長自身のメンタル維持)にとって必要不可欠なのです。
しかし事務所にとって所長は、最後の責任者であるため、ただフラッと消えるわけにはいきません。スタッフに「あの人はいいよね、自分たちだけ残して……」と思われず、かつトラブルを防ぐための「スマートな休暇術」を考えていきましょう。
1.まずは「休暇の目的」を決める
まずはっきりさせておきたいことは、休暇=悪、ではありません。
特に所長の休暇は、事務所の健全的な運営に必要不可欠なものであり、戦略的リセットの重要な機会です。
だからこそ、所長が安心して休暇を取るために必要なステップを考えなければなりません。
そして”所長が休暇を取るためのステップは大きく6つあります”。
また、まじめで責任感の強い所長ほど、自身の休暇の取得に後ろ向きで、休暇を取っても事務所が心配で心が休まらない、ということもよくあります。そこでお勧めなのが、まずは「休暇の目的」を決めることです。
目的が曖昧だと、結局スマホでメールをチェックしてしまいがちです。
お勧めなのが、以下の3つのタイプから休暇の目的を選ぶこと。
これだけで休暇の質が高まります。
・完全デジタルデトックス型
PC・メール・チャットを完全遮断し、脳疲労の回復を図る。
・インプット充電型
本・美術館・旅行で普段と違う刺激を得て、企画力を高める
・身体メンテナンス型
温泉・整体・睡眠改善などで体調を整える
普段の仕事は座りっぱなし・思考しっぱなしなことが多い人は、体を動かす系の休暇が特にお勧めです。
温泉+ハイキングや、美術館巡り、車で行ける距離の小旅行、人によっては朝から夕方までの「完全ノープランデー」などを設けても良いでしょう。
遠くに行かない休暇でも、十分リフレッシュできます。
2. 休暇前に“所長不在でも回る仕組み”を作る
所長が休みをとれない最大の理由は「自分がいないと回らない」からです。
実はこれは、かなりリスクのある状態。どんなに健康な所長でも、事故や急病で数日出勤できなくなる、ということはいつ起きてもおかしくありません。事前に準備ができる状態で休暇を取ることができないということは、突発的な事態が起きたらそこで事務所はパンクしてしまいます。
そのため所長が休暇を取るためだけでなく、いざという時のために数日所長が事務所を明けても、適切に業務が回る状態を作っておく必要があります。
休暇前にやるべきことは、以下の3つ。
緊急対応の基準を明文化
例:売上に直結する案件/期限が48時間以内の案件のみ連絡可
代理担当者を明確化
スタッフに「この期間はあなたが所長代理」と任せる
所長の“判断ライン”を共有
「このレベルは現場判断でOK」「ここから先は所長判断」など
これら3つを整えることで、所長不在でも事務所が安定して回る“最低限の土台”ができます。
重要なのは「ここまでなら決めていい」という線引き。
副所長や主任、ベテランスタッフだったらどこまで判断していいのか。これらを線引きし、所長の決済が必要なものは何かを明確にしておきます。
そのうえで、このような事態が起きたら連絡をするように、という基準を定めておけば、お互い安心です。
3.スタッフの休暇もセットで設計する
確定申告後に所長だけが休むと、スタッフの不満が爆発するリスクがあります。しかし、スタッフの休暇も並行して設計することで、スタッフも気兼ねなく休暇を取ることができますし、事務所全体のリズムが整います。
●「全員で休む」か「交代で休む」か
事務所全体を数日間クローズして一斉に休暇にするのが最も効率的です。
しかし、確定申告後はお客様からの連絡などもあるため、難しい場合も多いでしょう。
そのためスタッフにも「所長が戻ったら次は君の番だよ」と具体的な休暇予定を組ませることが重要です。
【スタッフ休暇の設計パターン】
A:全員で一斉休暇
メリット:公平・効率的
デメリット:顧客対応が難しい
B:交代で休む
メリット:顧客対応が継続できる
デメリット:調整が必要
C:所長→スタッフの順で休む
メリット:スタッフが遠慮せず休める
4.3月決算の初動を邪魔しない
確定申告が終わると、次は3月決算が待っています。
日本の法人の3割が「3月決算」と言われており、5月末期限への布陣を決める必要があります。ただこれは休暇そのものにはそこまで影響しません。
それより、実地棚卸の立ち合い・指導や、節税策の最終確認といった業務が必要なお客様がいないかをチェックする必要があります。
休暇の前にしっかりとチェックや指示を出し切っておくか、確定申告が終わったらすぐに休暇を取りそのあとに対応するか、を選択しなければいけません。
お勧めは決算業務の準備は休暇前に完了させること。
ある程度めどをつけて、3月の下旬の数日を休暇に設定するのが良いでしょう。
5.デジタルデトックスを宣言する
中途半端にスマホでチャットで対応したり、メールのやり取りをすると、休まらない上に現場を混乱させます。
そのため休暇中は「通知オフ」を公言すると良いでしょう。
例えば「この3日間はSlackも見ないし、返信もしない。何かあれば(所長代理・不在時の責任者)に連絡して」と宣言し、自分を追い込みます。
他にも、
・メール署名に「〇月〇日~〇日までは休暇中です」とする
・チャットステータスを「不在」に設定する
・緊急連絡ルールをスタッフと共有する
・自動返信メールを設定し、「〇月〇日までは不在です。お急ぎの方は事務所××まで」といった返信が送られるようにする
6.お土産の心理効果を活用する
これはテクニカルな部分になりますが、休暇明けの立ち振る舞いが重要です。
お土産などをスタッフに渡すことで、所長の休暇をポジティブに受け止められます。
旅行などに行かなかった場合は、ちょっと良いお菓子などを購入して渡したり、あるいは「休ませてくれてありがとう」という言葉とともにリフレッシュした姿を見せることが、リーダーとしての信頼につながります。
【ポイント】
休暇後にやってはいけないことが、休暇中に思いついた新しいアイデアを、戻った瞬間にスタッフに投げまくることです。
リフレッシュした所長は、気分も頭もさえていますが、残っていたスタッフはまだ疲労が抜けていないかもしれません。その状態で新しいアイデアを投げてしまうと、余計なストレスとなってスタッフの精神を圧迫します。
新しい指示は、数日置いてから、もしくはスタッフが休暇を取得した後にしましょう。
【休暇後のNG行動】
× 思いついたアイデアを即スタッフに投げる
× 休暇中の仕事を持ち帰って叱責する
【休暇後のOK行動】
○ お土産・感謝の言葉でポジティブに共有
○ 新しい指示は数日置いてから
○ スタッフの休暇取得を後押しする
まとめ:
税理士事務所の所長が休むことは、事務所の持続力を高める重要な戦略のひとつです。
休暇の目的を明確にし、仕組みを整え、スタッフとの連携を図ることで、安心してリフレッシュできます。
次の繁忙期に向けて、ぜひ”戦略的休暇”を取り入れてみてはいかがでしょうか。
ただ、
「頭では休暇の重要性はわかっているけど、実際にどう設計すればいいのかわからない」
「うちの事務所の規模だとどこから手を付ければいいのか迷う」
「スタッフの不満を生まない休暇の取得の仕方を知りたい」
これらは、多くの所長が共通して抱える悩みです。
もしあなたの事務所でも同じ悩みがあるなら、一度プロ視点で”休暇のとれる事務所づくり”を一緒に整理してみませんか。
所長が安心して休めるための「不在時の業務設計」
スタッフの休暇設計と不満を生まない伝え方
所長の休暇を“組織の強化”につなげる方法
あなたの事務所に合わせた「休暇前チェックリスト」作成
事務所の規模やスタッフ構成に合わせて、その場で実務レベルのアドバイスをお渡しします。
あなたの事務所が“所長もスタッフも休める組織”になるよう、全力でサポートします。
関連記事



コメント