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問題社員にどう対処するか

問題社員が法律を持ち出し主張する図
感情ではなく、法的に正しい対処方法を知っておきましょう

ある日突然問題が


今回は私が以前、目にしたあるトラブルについてお話しさせていただきます。

その事務所は都内にある10名くらいの規模で、開業から5年ほど問題なく成長してきました。

ただ悩みは採用が年々難しくなっていること。

開業してからお客様は増加を続けていたので、定期的に採用をしようとしたのですが、うまくいかず私に声をかけてくれたのです。

そこで話し合い、採用広告などを出して募集をする、という段になってハローワークからの採用が決まったというのです。

そのため私はそこで採用サポートを終了し、いったんはここで話が終わりだと思ったのですが・・・。

後日、その所長から呼び出しがありました。


「新しく入社した人がとんでもなかった」。


詳しく話を聞くと、その採用した人は都内有名私大出身で、税理士試験2科目合格、さらに大手税理士法人での勤務経験もある、というので即採用となったというのです。

他にとられないようにと給与も他のスタッフより高い水準に設定し、まずは所内で仕事などを教えていたというのですが、最初は何の問題もなかったそうです。


トラブルが起き始めたのは入社してから2週間ちょっとが経過したタイミング。

徒歩5分くらいの郵便局に、手紙を出すようにお願いしたそうです。

その事務所はお客様と郵便でやり取りすることも多かったので、郵便局の場所を覚えてもらおう、くらいの簡単な気持ちだったそうなのです。

そのスタッフは郵便局に行ったまま、1時間も帰ってきませんでした。


心配した他のスタッフと探しに行こうか、と話していたところそのスタッフがしれっと帰ってきて席に戻ろうとしたのです。

慌てて呼び止め、何か問題でもあったのか、と聞いたところ怒り始めたらしいのです。


「そんな一分、一秒まで時間の使い方に文句を言われるのか」と。


出かけたまま戻りが遅いと心配するから、遅れるなら連絡をするように、と伝えてその場は収まったのですが。

そこから徐々に、問題行動をするようになっていったのです。


特に問題となったのが、女性スタッフへの付きまといでした。

その事務所は女性スタッフの割合も多く、20~30代の女性スタッフが複数名在籍していました。

仕事中も何かと話しかけ、必要以上にベタベタしてくる、と最初は軽い感じで女性スタッフから相談があったのです。

そして決定的になったのが、帰宅時の待ち伏せです。

女性スタッフが帰宅しようと事務所を出て、駅まで向かっていた時、先に出たはずのその問題スタッフが道に現れ、一緒に帰ろうと声をかけてきました。

一度や二度でしたら偶然、ということもあるでしょう。

しかしそれが数日続くと、問題スタッフ避けるために他の男性スタッフに駅まで一緒についてきてもらって帰るしかなくなったのです。

そうなるとターゲットが別の女性スタッフに移り、同じようなことが繰り返されました。

その結果、女性スタッフたちは身の危険を感じ「一緒に働けない」と所長に訴えたことで問題が発覚。

事務所全体を巻き込んで、大騒ぎになったのです。


そこで所長はその問題スタッフを呼び出し、このままだと退職してもらわないといけない、と告げました。

すると「そんなんで退職させるのは法律違反だ、訴える」と言い始めたのだそうです。

その段階では、所長は警告を与え、態度を改めたら女性スタッフとの間を取り持ち、雇用は継続していくつもりでした。

しかし激高するその姿に、このままでは雇用の継続は難しいとして、退職させることにしたのです。


入社してからまだ1か月くらいの段階で、まだ試用期間も終わっていません。

しかし、この事務所に入社するために前の職場をやめてきたんだ、と主張し辞めさせるなら半年分の給与を払え、と要求してきました。

裁判などに持ち込めば事務所の主張は認められるでしょう。

しかし訴えを起こすとなると、所長の時間は拘束され、話し合いを重ねようとしても事務所に呼び出すと大声で女性スタッフに暴言を吐く。

これでは通常の業務に差し支える、として3か月分の給与を払って退職してもらったというのです。


後日、声を掛けられ事務所を訪問した私に、そんな話を聞かせてくれました。

採用のサポートを受け、面接に入ってもらっていたら防げたのかな、と言われましたが、絶対防げるとは言い切れません。

私もこれまで、多くの採用のお手伝いをさせていただき、面接に立ち会い、意見を求められることも多いです。

そのため、あまり採用を行わない事務所の所長などに比べれば、面接の精度は高いと思います。

ただ、それでも100%確実に見抜けるとは言えません。

特に、今回のようなケースでは、面接ではあらかじめ答えを用意し、猫をかぶっています。

そして学歴、職歴、資格などが高スペックなため、面接で少々怪しくても採用に踏み切った可能性は高いでしょう。

どの事務所であっても、同じような事態に陥る可能性があるのです。


近年、問題社員(モンスター社員などとも言う)は、企業の経営にとって大きなリスクとして認識されるようになりました。

税理士事務所も他人事ではないのです。

しかしこうした問題社員が入社するのを100%予防するのは非常に難しいでしょう。

だからこそ、入社した後問題がある場合、どう対応していくか。

事後対応のやり方を知っておく必要があります。



問題社員の放置が一番の問題


問題社員がやっかいなことは、周囲にトラブルが拡散してしまうことです。

そのため放置するのは一番やってはいけないこと。

速やかに対処する必要があります。

放置してしまうと、次のようなトラブルが発生してしまいます。


・生産性の低下

周囲のモチベーションが低下し、生産性が低下する可能性があります。


・人材流出

問題社員によって精神的ダメージを受けたり、フォローで疲弊することで、離職するスタッフが出てしまう可能性があります。上記のケースでは、女性スタッフからも退職の声が出ていたそうです。


・法的なリスク

問題社員を放置したことで、他のスタッフにダメージが行ってしまうと、それは「放置した組織の問題」とみなされ、事務所に法的責任があると判断されることもあります。


・所内の雰囲気の悪化

問題社員がいることで、コミュニケーションが低下し、チームでの作業などが難しくなります。一度悪化した雰囲気などを回復させるには時間がかかるため、コストなども増大してしまいます。


・信頼性の低下

問題社員がお客様と接すると、事務所全体の評価が悪化する危険性があります。上記のケースでは担当を持たせる前の段階で発覚したので防げましたが、場合によっては契約解除などになってしまうこともありますね。


ただ、重要になってくるのが、何をもって問題社員とするか、です。

単に所長や上司が「気に入らない」というのは、問題社員ではありません。

問題社員によって、職場などに被害が発生するか否か、です。

問題社員は次の3つのタイプに分けることができます。


能力不足者

意欲などの問題ではなく、能力の不足によって職場に被害をもたらすタイプの問題社員です。

例えば、ミスが頻発する、作業の速度が極端に遅い、などです。

教育などで補える範囲を超えて、能力が明らかに欠如していると、やはり問題社員ということになってしまいますね。

ただ、本人には悪気などがないため、扱いには慎重さが求められるでしょう。


勤務態度不良者

問題社員というと、まっさきに頭に浮かぶのがこのタイプです。

仕事の能力などではなく、勤務の仕方、態度に問題があるパターンです。

遅刻や欠勤を繰り返したり、勤務時間中にスマホに集中したり、喫煙所に入り浸って仕事が進まない、などですね。

このタイプの問題社員は、周囲に大きなストレスを与えるので、早急な対処が必要になります。


私生活不安定者

プライベートに問題を抱えているスタッフは、状況によっては問題社員になりえます。

私生活が仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えたり、事務所の信頼失墜につながる行為などが起きる可能性があります。

例えば、SNSで事務所や同僚スタッフ、時にはお客様への誹謗中傷を繰り返す、などです。



問題社員にどう対処するか


問題社員への対応は、「人事措置」を取るのが基本です。

この「人事措置」の基本的なフローは次の通りです。


①現状把握

実際に発生している問題や原因の把握。

問題社員、本人に原因のある事を、客観的に判断できるかが重要です。


②注意

具体的な注意や指導を行い、改善の有無について経過を観察します。


③配置転換

配置転換で改善の機会を与えるのも一つの手です。

例えば、チームの移動や担当先の変更、補助スタッフの組み換えなどですね。


④懲戒処分

改善が見られない場合は懲戒処分に進みます。

状況によって、戒告、減給、出勤停止などを検討します。

処分理由を明確にしておくことが大切です。


⑤解雇

懲戒を行っても改善されない場合は、解雇の検討を行います。

不当解雇とされないためにも、改善する機会を十分に与えたうえで判断することが求められます。


重要なのは、このプロセスをしっかり踏む、ということです。

感情に任せて段階を飛ばしてしまえば、不当処罰やパワハラとなってしまいます。

同時に、できるだけ記録に残しておくことです。

トラブルの原因が問題社員にあったと明らかでも、後日訴訟などに発展する可能性もあります。

不当な措置だと判断されないためにも、フローはすべて記録に残し、客観的事実を元に措置をとったと明示できるように準備しておくことが重要です。

同時に、張華インドを行う際は弁護士に相談しておくのも良いでしょう。

懲戒処分や解雇は、難易度の高い手続きです。


同時に、周囲のスタッフへのケアを行っていく必要があります。

被害を被ってきた同僚スタッフなどは、ストレスや不公平感を感じていることも多いですね。

これが原因でメンタルに不調が出てしまっている、ということもあります。

状況に応じて面談を繰り返し、休養期間を設けてあげたり、環境を変えてあげるなどの対処が必要となることもあります。


ポイントとなるのが、所長や代表、マネージャーなどの管理者です。

この対応の中で感情的になると、大きな禍根が残ることがあります。

特に、現状把握はしっかり行う必要があります。

場合によっては制度や仕組み、本人ではなく首位の状況に問題や欠陥がある場合もあります。

客観的に判断するためには、冷静さが必要です。

ただ、現状把握をするために、そしてその後の対応をするために、何度もその問題社員と向き合わなければいけません。

時には問題社員から不快な態度を取られたり、暴言を吐かれることもあるかもしれません。

そんな時に、暴言に暴言を返したりしてしまえば、相手に漬け込む隙を与えてしまいます。

毅然とした態度で向き合い、冷静に対応することを心がける必要があります。


このように問題社員に対しては、事後対応が中心になりますが、それでも入社させない、というのが一番です。

そのためにも、選考のプロセスに適性診断などを取り入れたり、面接の手法などを学んだり、状況によっては面接に第三者に加わってもらうなどして複数の目で判断をする、などのリスクマネジメントを行う必要はあるでしょう。

100%防ぐことはできないのですが、できるだけ採用のミスマッチを減らしていく。

それが問題社員に対する最大の対策ではないでしょうか。

そのためのサポートなども行っておりますので、興味がございましたらこちらよりご連絡ください。




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