税理士事務所のFAQは専門家視点では刺さらない|問い合わせが増える“価値ベース設計”とは
- 斉藤永幸
- 4 日前
- 読了時間: 8分

なぜ専門家視点のFAQはお客様に”刺さらない”のか?
先日、税理士事務所のHPをどうやって改善していくべきか、ということをお伝えしました。その中で効果的なものの一つとして挙げたのがFAQページを作る、ということです。このFAQページとは、お客様からよく寄せられる質問とその回答をまとめたもののことです。ソフトウェアや電化製品を買っててくるとついてくる説明書で「故障かな?と思ったときはここをチェック」みたいなものがありますよね。あれを税理士事務所のHPでやると、効果が高いのです。
もちろん実際にFAQページを作って運用している税理士事務所もあります。しかし多くが活用できていません。なぜでしょうか。それはFAQが専門家視点で作られているため、読者にとって共感を得られず、不安の解消につながらないからです。結果としてぱっとみられるだけで、その後のアクションにつながりません。
しかしFAQページをしっかり活用できれば、税理士事務所のメリットとなる様々なメリットがあります。まずはそこから見ていきましょう。
1.お客様の不安を先回りして解消できる
はじめて税理士に相談する人は「契約の流れは?」「どこまで対応してくれるの?」「どんな準備をしたらいいの?」といった漠然とした不安を抱えています。FAQでそれらを明示することで、安心感と信頼感を提供し、問い合わせや契約への心理的なハードルを下げることができます。
2.問い合わせ対応の効率化と質の向上
よくある質問を事前に提供することで、基本的な質問に対する電話やメール対応の手間を削減。担当者が本質的な相談や業務に集中することができるようになります。
3.SEO効果による集客強化
「税理士事務所 顧問契約 流れ」や「確定申告 スポット依頼」など、検索されやすいキーワードを含むFAQは、検索流入を増やすチャンスになります。特に地域名や業種名を絡めた質問はローカルSEOにも有効です。
4.事務所の対応力・柔軟性をアピールできる
FAQで他事務所との違いを打ち出すことも可能です。例えば単に「クラウド会計に対応」など言葉で打ち出すのではなく、「クラウド会計にするメリットは何ですか?」という質問を載せ、そこに答えを書くなどFAQにからめることで、よりアピールすることができます。
さらにお客様にとって「この事務所なら自分に合いそう」と思わせる材料となります。
5.信頼性、誠実さの演出
FAQは「隠さず、正直に情報を開示する姿勢」の象徴ともいえるものです。特に契約条件や料金などを明記することで、誠実な事務所という印象を与えられます。
このように様々な効果のあるFAQページですが、うまく活用すれば単なる補足情報ではなく、見込み客の背中を押す営業コンテンツにもなります。例えば、
・初回相談はどれくらい費用は掛かりますか?
→「初回相談は30分までは無料です。お気軽にご相談ください」
・契約までの流れは?
「1無料相談→2お見積り→③契約書締結→④業務開始」
このように行動喚起につながる質問・回答設計を意識すると、問い合わせ率が上がります。
では実際にFAQページを作る際は、どのようなことを気を付けていけばよいのでしょうか。
目的から質問の選定を考えていく
税理士事務所がFAQページを作るときに必要なのは、思いつきで質問を並べるのではなく、戦略的に設計することが大切です。まずはここを押さえるだけで、成約率アップを狙っていくことができます。
以下、実際にFAQを作るときに必要なステップとして6つをまとめました。
STEP1:目的を明確にする
FAQは事務所ごとに役割が違います。
まず何のために作るのかを決めると、質問の選定がブレませんし、FAQのトーンも決まります。
目的の例)
・契約前の不安解消
・サービス理解の促進
・SEOの強化
・事務所の強みを可視化
STEP2:質問を分類する(カテゴリ設計)
FAQは「探しやすさ」が命。
だからこそカテゴリを整理すると、ユーザーの離脱が減ります。
カテゴリ例)
・料金、契約
・サービス内容
・対応範囲
・相談、問い合わせ
・スポット業務
・開業支援
・決算、申告
他にも事務所の対応業務の範囲に合わせ、カテゴリを作っていきましょう。
STEP3:質問を収集する(現場の声を集める)
FAQを作るうえで最も重要なステップです。
普段、現場でお客様と接するスタッフの声などを集め、事務所全員で作っていけるとベストです。
どんな質問を載せるかについては、気を付けたいポイントが多いので、下で別途解説いたします。
STEP4:回答を作成する(専門性✖わかりやすさ)
税理士事務所のFAQは回答の書き方で信頼度が変わります。
ここもちょっと細かい説明が必要になるため、下で別途解説します。
STEP5:ページ構成・デザインを整える
FAQは”読みやすさ”が成果を左右します。
ユーザーが直感的に自分の疑問に思っているところに行けるような構成を心がけましょう。
・カテゴリごとにまとめる
・検索窓をつけることができればベスト
・スマホで見やすい構成にする
・関連ページへの導線をつける
・アコーディオン形式で開閉できるようにすると見やすくなる
STEP6:公開後の改善(運用方法を決める)
FAQは作って終わりではありません。
・法改正に合わせて更新
・新しい質問を随時追加していく
・アクセス解析で読まれていない質問を改善
こうした運用ができる事務所は、問い合わせの質が劇的に上がります。
質問の選定は「お客様の不安」視点で
このような順番でFAQを作っていくのですが、肝心の質問や回答の設定をあえて飛ばしています。その理由は注意しなければいけないポイントが多いからです。ここではこの質問と回答の設定についてみていきましょう。
税理士事務所のHPでも、いくつかはFAQを作っていますが、あまり効果的に働いていないことは見ていてもわかります。その理由は、質問が読者に”刺さっていない”のです。その理由は質問が実務ベース(業務名)で作られているからです。それを価値ベースにしなければ、お客様のニーズにかなったFAQにはなりません。
どういうことか見ていきましょう。
作業ベースの質問
・この経費って落ちますか?
・節税ってできますか?
価値ベースの質問
・無駄な税金を払わないために、どこまで経費にできますか?
・今の事業規模で最適な節税方法はありますか?
ここでのポイントは「経費」ではなく「無駄な税金を払いたくない」という、お客様の価値に寄せるのです。するとFAQの読み手は「この事務所はわかってくれている」と感じ、不安を解消することができます。お客様の不安・目的・得たい未来に寄せた質問を作っていく必要があるのです。
また、回答を作成する際も注意が必要です。
ここでも書き方にポイントがあります。まずは「最初に”結論”を書く」ということです。FAQでは多くのユーザーは長文を読みません。まずは最短距離で答えを提示します。
例えば「はい、スポットでの確定申告のみでの依頼も可能です」といった書き方になります。
文章の冒頭で、はい/いいえ、可能です/できません、目安は〇〇円です、などを示してあげるのです。
また、専門用語を避けつつ、必要であれば補足をつけていきましょう。
税務の専門用語は一般の方には難しいと感じるものも多いのです。専門用語はできるだけ使わず、使う場合は短い補足を添えましょう。例えば「青色申告(一定の条件を満たすと控除が受けられる制度)にも対応しています」といった感じでしょうか。
回答は短いほどユーザーに読まれやすいのですが、結論だけだと冷たい印象になりがちです。税理士事務所では安心感を与える一言が大きな差となります。
例えば、
初回の相談はいくらですか?
→初回相談は無料です。無料にしているのは事前にお悩みを丁寧にうかがい、最適なサポートを提案するためです。
このように書くと、安心感と親しみやすさを伝えることができます。
また、料金などについてはお客様が最も不安に感じるポイントです。単に「お問い合わせください」だけだと離脱されます。目安でもいいので、料金をあいまいにすることは避けましょう。「顧問料は月額〇〇円~が目安です。業種・規模により変動します」といった書き方になります。
おまけ
今回はこの記事の特典として、
FAQにもサービス説明にも、営業トークにも使える「税理士事務所向け価値ベース100選」をダウンロードできます。
こちらのリンクからPDFファイルをダウンロードしてください。
いかがでしたでしょうか?
従来のFAQとしっかり設計した上でのものとでは、まったく別物になると思います。FAQページは非常に活用しがいのあるコンテンツです。ぜひ多くの税理士事務所で取り入れていただきたいですね。
TaxOffice-Supportでは、こうした税理士事務所のHP運営の作成・運営のお手伝いもさせていただいております。興味を持っていただけた方は、まずは無料相談からお問い合わせください。
関連記事



コメント