MAS×AIで事務所の収益と価値を最大化する完全ロードマップ
- 斉藤永幸
- 23 時間前
- 読了時間: 12分
更新日:14 時間前

「税務顧問だけでは、もう戦えない」
最近、ほとんど同じ悩みの相談が、多くの税理士事務所の所長から寄せられるようになってきました。その内容が「このままでいいのだろうか?」というものです。
実際、多くの事務所が以下のような悩みを抱えています。
「このままの業務モデルで大丈夫なのだろうか」
「顧問料が上がらない。差別化が難しい」
「経営者は意思決定支援を求めているのに、担当者が動けない」
「生成AIを使いたいが、何から始めればいいかわからない」
こうした不安は、実はすべて”つながっている課題”です。その解決策こそが税務顧問✖MAS ✖AI の組み合わせです。
本記事を読むことで、
・あなたの事務所が今どこにいるのか
・どの順番で進化すべきか
・AIをどう組み込めば成果が出るか
が明確になります。
税務顧問・MAS会計・AI は適切に組み合わせてこそ効果を発揮する
そもそも税理士事務所の主たる業務は?と聞かれるとほとんどの人は税務顧問と答えるでしょう。それは確かに正解です。決算を組み、申告書を作成する。これは税理士にとっての”基礎”となる業務と言って差し支えないでしょう。
しかし近年では、会計ソフトの進化によって記帳が非常に楽になりました。これまではいわゆる帳簿付けのニーズが非常に高かったのですが、それがちょっとした知識があればソフトを活用し、誰でも簡単にできるようになってしまったのです。
では税理士の価値はどこにあるのか?その答えの一つがMAS会計(経営助言業務)です。
MAS会計とは、経営者の意思決定を支援するための行う経営コンサルティング業務、いわば経営者の意思決定を支える”未来志向のサービス”です。
経営に関する数値を熟知し、それを元に経営者に助言を行うことができるのは、会計士や税理士。しかしこのMAS会計、担当者の力量に依存しやすく、「やりたいけど導入できない」という事務所が非常に多いのが現実です。
そこで登場するのが AI です。
AIはOCRによる自動仕訳などで担当者や補助スタッフの負担を大幅に軽減。さらにレポートの自動作成や異常値の検知などを得意としており、税務顧問とMAS、両方を効率化するツールです。特にMAS領域では、経営者への質問生成や会議の深堀支援、分析の自動化など非常に相性が良いのです。
税務顧問、MAS会計、AIの違いを比較できるよう、以下のような表にまとめて見ました。
税務顧問・MAS会計・AIの違い(比較表)
税務顧問 | MAS会計 | AI | |
主目的 | 適正な申告・法令遵守 | 経営者の意思決定支援 | 作業効率化・分析支援 |
時間軸 | 過去 | 未来 | 過去〜未来どちらも処理可能 |
提供価値 | 正確性・安心 | 業績改善・行動変革 | 自動化・高速化・補助 |
主な業務 | 記帳、申告、税務相談 | 経営計画、予実管理、会議支援 | 自動仕訳、分析、質問生成 |
関与スタイル | 受動的(相談があれば対応) | 伴走型(毎月の経営会議) | 補助的(人の判断を支援) |
必要スキル | 税法・会計知識 | 経営分析・対話力・課題抽出 | プロンプト設計・業務理解 |
代替可能性 | 一部AIで代替されつつある | 人間の対話・意思決定支援は代替困難 | 人間の判断が必要 |
この比較表を見ると、3つの役割がまったく違うことが一目でわかります。
税務顧問をMASが補い、税務顧問とMASをAI がサポートする、という構造が最も強いのがわかります。つまり、それぞれが独自に存在するのではなく、これらを組み合わせることで、あなたの事務所でしか提供できないサービスを作り出していくことができるのです。
では実際にどのようにMAS会計やAI を導入していけばいいのでしょうか?
税務顧問からMAS・AI 活用へ
進化のロードマップ
多くの事務所がMAS会計を導入することによって、付加価値の高い業務への移行を目指しています。しかしそれが進まない理由はいくつもあります。多くの事務所が抱えている課題として、以下のようなものが共通してあります。
月次業務の属人化
担当者による品質のバラつき
顧問料の下落と差別化の難しさ
MASをやりたいが、担当者が動けない
AIを使いたいが、どこから始めればよいかわからない
TaxOffice-Supportでは、これらの課題を一つひとつ解決しながら、「税務顧問→MAS→AI 活用」へと進化するための実現可能な独自のメソッド、ロードマップを提案しています。
【STEP1】税務顧問の標準化・高度化
↓
【STEP2】MAS会計の仕組み化・商品化
↓
【STEP3】AI活用による自動化・高度化
これらを順を追って、少し詳しく見ていきましょう。
STEP1:税務顧問の標準化・高度化
付加価値業務に携わる方の中には、ここを軽視する方もおられるのですが、税理士事務所のベースとなる業務はやはりここです。MASもAIも、この土台がなければ機能しません。中小企業庁の出しているレポート『中小企業の会計に関する指針』(2025年9月19日修正版)でも、「会計情報に期待される役割として経営管理に資する意義も大きいことから、会計 情報を適時・正確に作成することが重要である」と述べています。
つまり、この税務顧問業務がしっかり提供できる体制づくりこそ、非常に重要といえるのです。
■ 目的
月次の品質を安定させる
属人化を解消し、誰でも同じ品質を出せる状態にする
MASに必要な「信頼できる数字」を作る
■ 実施内容
月次業務フローの可視化
チェックリスト・レビュー基準の統一
月次資料フォーマットの統一
担当者教育(レビュー観点・質問力)
AIによる軽度の自動化(仕訳チェック・資料作成補助)
■ 成果
月次が安定して出る
担当者による品質差がなくなる
MASにスムーズに移行できる
特に重要なのが、属人化の解消です(属人化の解消については、過去の記事も参照ください)。
担当者によって判断がばらついてしまうと、数値の信頼度が低下します。その数値をベースにMASを行うと誤った判断を生じてしまうこともあります。だからこそ属人化を防ぐために標準化を進め、月次の品質を高めることは欠かすことのできない絶対条件といえるのです。
STEP2:MAS会計の仕組み化・商品化
ここでのMASは、税務顧問の延長ではなく、独立した価値提供モデルとして設計します。税務顧問業務の付加価値ではなく、また別の業務として設計することで、事務所の収益性の安定化、お客様単価UP、などを目指していきます。
■ 目的
経営者の意思決定を支援する
未来の数字をつくる
顧問料以外の収益源を確立する
■ 実施内容
中期経営計画(将軍の日)
単年度計画・KPI設定
予実管理の仕組み化
経営会議(業績検討会)の運営
MAS資料テンプレートの整備
MASメニュー・料金表の作成
担当者向け「深掘り質問リスト」の整備
■ 成果
経営者が数字で意思決定できる
毎月の経営会議が回る
顧問料+MASで収益が安定する
ここまでくれば、他の事務所では提供できない価値をお客様に提供することができ、事務所の経営は非常に安定します。同時にブランディングなどを進め、競争力を高めていくことも可能です。
そのためにも担当者のスキルに依存するのではなく、確実に質の高いサービスを提供できる”仕組みづくり”が求められます。
テンプレートの整備や質問リストの作成などを進めることで、事務所にノウハウを蓄積していきます。これが事務所の競争力=将来性に直結します。
また、この段階でAI が最も効果を発揮する土台が整います。
STEP 3:AI活用による“MASの自動化・高度化”
AIを活用することで、MASの価値を最大化し、担当者の負担を最小化します。
■ 目的
担当者のMAS抵抗感を大幅に下げる
会議の質を劇的に向上させる
分析・資料作成を自動化する
■ 実施内容
① AIによる分析の自動化
予実差異の自動分析
KPIの異常値検知
キャッシュフロー改善ポイントの抽出
② AIによる深掘り質問生成
経営者に聞くべき質問をAIが自動生成
会議の質が上がり、担当者のスキル差を吸収
③ AIによる資料作成の自動化
月次レポートのドラフト生成
経営会議資料の構成案作成
経営計画の文章化
④ AIによる業務改善支援
属人化の可視化
業務フロー改善案の生成
チェックリストの自動作成
■ 成果
担当者がAIを使ってMASを提供できる
会議の質が劇的に向上
事務所の差別化が明確になる
税理士事務所でAI の導入というと、AI-OCRによる自動仕訳が注目され、会計データ入力の負担軽減ばかりがクローズアップされがちです。しかし私は、税理士事務所がAIを導入する真の価値は、このMASとの相乗効果だと考えています。
実際、MASと組み合わせることで、実務レベルで大きな変化を起こします。
例えば、
予実分析の自動化
AIが月次データを読み取り、以下を自動で抽出できます。
予算との差異
差異の原因候補
重点的に見るべき勘定科目
異常値の検知
→ 担当者の分析時間が激減し、会議の質が上がる。
経営者の”深堀質問”をAIが生成
MASで最も難しいのは「質問力」。AIは以下を自動生成できます。
経営者に聞くべき質問
課題を深掘りする質問
行動計画につながる質問
業界別の質問テンプレート
→ 担当者の負担を軽減し、MASへの抵抗感が一気に下がる。
経営会議資料の自動作成
AIは月次データから以下を自動で作れます。
月次レポートのドラフト
KPIのグラフ
経営課題の要約
次月のアクション案
→ 会議資料作成の時間が“1/10”になる。
経営計画(中期・単年度)の文章化
AIは以下を自動生成できます。
経営理念の文章化
SWOTの文章化
中期計画のストーリー化
行動計画の文章化
→ 経営計画の“文章部分”をAIが補完し、担当者は数値に集中できる。
キャッシュフロー改善ポイントの抽出
AIは財務データから以下を示せます。
資金繰りのリスク
改善すべき勘定科目
回収・支払の改善案
資金ショートの予兆
→ 経営者が最も喜ぶ“お金の話”が強化される。
業務改善・属人化の可視化
AIは業務フローを標準化し、サービスの質を確保できます。
属人化ポイント
ボトルネック
標準化すべき業務
チェックリスト案
→ MASの「組織改善」領域が強化される。
経営者との対話ログをAIが蓄積し、次回会議に活用
AIは会議内容を記録し、次回に活かせます。
前回の課題
実行状況
次のアクション案
経営者の価値観・優先順位
→ “伴走型MAS”が本当の意味で実現する。
担当者教育の自動化
AIは新人担当者に対して、
月次レビューの観点
経営者への質問例
KPIの見方
会議の進め方
を教えることができます。
→ MASが“属人スキル”ではなく“仕組み”になる。
いかがでしょうか?MASとAI を組み合わせることで、劇的に業務が変化するのです。
ある事務所で導入後、実際に起こったBefore→Afterを見てみましょう。
■ Before
月次が遅い
担当者による品質差
MASができない
顧問料が上がらない
■ After
月次が安定し、品質が統一
経営会議が毎月回る
MASが商品として成立
顧問料+MASで収益が安定
特に収益性の向上は顕著でした。AI 導入で顧問料UPに加え、MASを別サービスとして設定したことでさらなる収益を確保したのです。また、以前に比べるとお客様の経営状態を詳細に把握することができ、他にはできない提案などができるようになったので顧問契約の維持(解約防止)にも貢献してくるだろう、という感想をいただいております。
このように税務顧問 → MAS → AI活用の進化は、事務所の未来を決める最重要テーマです。
MASは「未来の数字をつくる」仕事。AIは「分析・質問・資料作成」を自動化する技術。
この2つが組み合わさると、
“担当者のスキル差をAIが吸収し、誰でもMASができる事務所”
が実現します。
「MASをやりたいけど、担当者が動けない」という課題の“決定的な解決策”といえるでしょう。また、付加価値の高い業務に携わることで自らのスキルを高めたい、といったキャリア志向の求職者に強くアピールすることができ、人手不足の解消にも貢献します。
ただ、これは導入してすぐに使えるようになる、というものではありません。
実際はもっと複雑な作業を伴いますが(上記ロードマップを参照ください)、簡単に導入スケジュールも示しておきます。
1か月目:現状分析・過大抽出
2か月目:業務フロー可視化・標準化設計
3~5か月目:月次業務の標準化、チェックリストの導入、属人化されている領域のチェック
6か月目;MASメニュー設計、経営会議の仕組み化
7か月目:担当者教育、AI活用の導入、分析・質問生成
8~9か月目:経営計画支援スタート
10か月目:MAS・AIの運用定着、改善
どんな優れた仕組み、システムでも、しっかり時間をかけて導入しなければ、結局は使い勝手の悪いものになってしまいます。だからこそ計画的に、そして着実に一歩ずつ導入を進めていかなければいけません。
この記事のまとめ
記事が長くなったので、最後にQ&Aでよくある質問をまとめておきます。
Q: 税理士がMAS業務にAIを活用するメリットは?
A: 最大のメリットは「属人化の解消」です。分析や質問作成をAI(生成AI)が補助することで、担当者のスキルに依存せず、高付加価値な経営支援サービスを標準化できます。
Q: 経験の浅い担当者でも、AIを使ってMAS業務はできますか?
A: はい、可能です。MASを導入したくても、ただでさえ負担の大きな経験豊富なスタッフが協力してくれない、ということはよくあります。しかしAIが「経営者に聞くべき質問」や「分析レポート」の素案を自動作成してくれるため、担当者の経験やスキルに依存せず、経験の浅い担当者でも、一定レベル以上の経営支援サービスを提供できるようになります。
Q: 生成AIは、MAS業務のどの部分を自動化できますか?
A: 主に「予実分析のコメント作成」「経営会議の議事録と要約」「経営計画書のドラフト作成」「経営者へのヒアリング質問の生成」などで活用でき、事務作業時間を大幅に削減します。
Q: 税務顧問にMASとAIを組み合わせると、どのような効果がありますか?
A: 記帳代行などの「過去会計」だけでなく、未来の意思決定を支援する「未来会計」を提供できるため、競合他社との明確な差別化になり、顧問契約の継続率や顧問料単価の向上が期待できます。
いかがでしたでしょうか。
こうしてみると、市長仕訳や税務顧問だけにAI を限定してしまうのはもったいないですし、MASと組み合わせるとさらに価値が高まるということがお分かりいただけるでしょう。
自分たちの事務所に漠然と不安がある
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