残業は当たり前、からの脱却
- 斉藤永幸
- 11月7日
- 読了時間: 5分

残業は当たり前、はもう古い!?
先日、ある事務所の採用のお手伝いをさせていただいたときに「残業はどれくらいありますか?」と質問しました。
それに対しその事務所の所長は「税理士事務所だからね、繁忙期の残業は当たり前だよ」と言い、2~3月は毎日22:00くらいまでは皆残って仕事をしていると答えました。
定時が18時までなので、毎日4時間の残業。
しかも繁忙期は土曜出社だといいます。
近年、中規模以上の税理士事務所は、合理化・効率化が進み、業界全体の残業時間はかなり減ってきてはいます。
しかし小規模な事務所では、今でも「税理士事務所なんだから残業は当たり前」という感覚を持っているところが多いのも事実です。
逆に言えばそれが原因で、事務所をなかなか成長させることができない、とも言えます。
先日のブログで、残業は大きなリスク要因になりえることを開設しました。
(そちらのブログはこちらからご覧いただけます)
普段から残業が発生する状態は、事務所の対応力がないことを意味します。
対応の早さによって、利益や損失が変わってくる。
そんなことも多くあるのです。
例えば新しいITシステムが発表され、それが評判になったとしたら、それを事務所に導入するかすぐに検討したいところです。
しかし残業が多い職場は、対応力が低いため、導入する・しない、を検討する余裕がありません。
普段、残業がなければ、1日1~2時間残って新しいことを試してみようか、とも思えます。
突発的に利益の大きな新たな依頼があっても、残業がなければ一人は新しい依頼に、その人が抱えていた案件を他のスタッフに割り振りしつつ新しい人材を募集する、という手も取れます。
しかし残業が常態化していれば、他のスタッフに新たな業務を割り振ることができず、みすみす良い案件を逃してしまうのです。
残業は当たり前、というのはそのような潜在的なリスクを抱え続けることに他なりません。
全力は続かない
実際に、大きく成長する事務所ほど人材に余裕を持たせています。
人材に余裕を持たせると、当然利益は減少します。
そうした人材に余裕を持たせることは無駄なんじゃないか、という意見も多いですね。
しかしこれは無駄なのではなく、余裕なのです。
よく知られた話で、働きアリの話があります。
忙しく飛び動き回る働きアリですが、2割は怠けているそうです。
この2割を取り除くと、残って働き者だったはずのアリの中から、また2割程度のアリが怠けるようになるといわれています。
果たしてこの怠けているアリは、無駄な存在なのでしょうか?
アリは過酷な自然環境の中、常に生存競争を繰り返しています。
その中で怠けているように見えるアリにも、しっかりとした意味があります。
それが「余裕」です。
過酷な自然環境課では、常に何が起きるかわかりません。
そうした中、すべてのアリが常に全力で働いていたらどうなるでしょうか?
つまり怠けているアリは、突発的な事態に備えた余剰人員なのです。
税理士事務所も同じこと。
安定した経済環境下では、余剰人員を作らないことは重要です。
だからこそ皆が全力で働くことで、利益を最大化することが求められました。
しかしそのような環境ではなくなりつつあります。
全力で働き続ければ疲弊しますし、長く続けることはできません。
それが業界全体としての離職率の高さにもつながっていたのではないでしょうか?
まずはこの余裕=無駄、という認識を改める必要があるのです。
残業をなくすことからはじめてみる
だがある程度の規模のある事務所なら、この余裕を作り出すことは比較的容易です。
10人以上の事務所であれば、売り上げにそこまで貢献しない人材がいても、そこまで大きな影響はありません。
しかしそれ以下の事務所では、事務所に対する一人当たりの分担が大きくなり、遊ばせておく人材を確保しておくのは難しいのです。
だからこそ小規模な事務所ほど残業をなくすことが重要です。
残業が常態化している事務所にこのことを提案すると「そんなことは無理」と即却下されることが多いですね。
しかし一つひとつ話を聞いてみると、実は小規模な事務所ほど無駄が発生していることが多いですね。
労務管理で日々の業務の進め方などを再確認し、業務負担が増大しているボトルネック部分を解消することで、残業時間を大幅に減らすことができる場合もあります。
また、作業負担が大きい案件を適正価格より安く請けていた場合などもあります。
それを労務管理で適切に把握するのです。
(労務管理についての考え方などはこちらよりご覧いただけます)
近年、多くの税理士事務所が取り組んでいる業務の効率化。
しかし、効率化をすることによって一件あたりの負担を減らすことができた事務所の中には、その分一人当たりの担当件数などを増やしスタッフ一人ひとりにかかる負担はかえって増大した、というケースもあります。
ただ、これはある程度の規模があって、普段からそれなりに余裕を持っているからこそ負担を吸収できるのです。
すでに残業がある程度発生しているような事務所や、小規模な事務所では、効率化によって生まれたリソースは、残業を減らし、なくすことにこそ使うべきでしょう。
それが実現できれば、その後の可能性も大きく開けるかもしれません。
単なる効率化ではなく、いわば事務所の最適化。
これを目指すべきではないでしょうか。
そのためのサポートなども行っておりますので、興味のある方はこちらよりご連絡ください。



コメント